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舞踏会の裏側
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それとも、やはり口にしにくい事情なのだろうか。
どうしたら、こちらの目的を伝えずに、探り出せるだろう。
「いや、君ほど目を惹く美貌の持ち主なら、男性陣が放っておかないと思ってね。でなければ、よほどフィアンセが優秀かどちらかなんだが。今、君は一人だし」
「彼は、私を自由にしてくれるんです。せっかくこんなに大きなお屋敷の舞踏会に出席してるんですもの。お互い、沢山の方と知り合って、見識を広めたほうが有意義だからって……。私、色んなことに興味があるんです」
「へえ、それは感心だね。若い内に沢山体験するに越したことはないよ」
ハワードは、感心したように声を上げた。
「それなら尚更、君の力になれるかもしれない」
自信のこもった、ゆったりとした笑顔を向けられ、オリヴィエは、笑顔の意味を解析しようと努めた。
何となく、このハワードの人となりが掴めない。
(どうして、私の力になれる、と表現するのかしら。私の目的に勘付いている?)
親切そうな口調と笑顔の割には、妙な違和感もある。
しかし、今回の潜入は、セルゲイを筆頭にかなり綿密な準備の下で実行されている。
オリヴィエの目論見がそう、すぐに知れるはずはない。
ただ、もしもオリヴィエに疑いを持って接近しているなら、逆にハワードが誘拐事件と何らかの関りを持っている根拠となる。
オリヴィエは、この状況に便乗を決めた。
「ありがとうございます。では、教えてくださいな」
「君になら、喜んで」
ハワードは、またもオリヴィエをエスコートするように庭園へ導いた。
庭園に入って数歩歩くと、噴水が見えてくる。
「ああ、あちらは先客だ。こっちへ行こう」
立ち昇る水の向こうに、二人分の人影を見つけて、ハワードは迂回した。
方向を変える際、ぐっと肩を抱かれる。
その時、一瞬ハワードの眼光が鋭くなった気がした。
こちらの警戒を悟られてはならないが、やはり、怪しい人物だ。
きっと何かを知っている。
「お待ちになって。どなたがいらっしゃるか、確かめるなら、もう少し近くに行かないと」
「あそこにいるのはサングスト伯とトリニーチェ子爵夫人だよ。近づかなくてもそのくらい、わかる」
「どうしてわかるのですか?」
「常連の方だからね。それぞれお気に入りの場所があるのさ。伯爵か夫人、どちらかが相当なロマンチストなんだろう」
伯爵と子爵夫人、正式なパートナーではない。
それなのに、こんなに情緒ある庭園で堂々と二人きりになって良いものなのか。
いや、人目を忍んでいるから、堂々というわけでもないのか。
どうしたら、こちらの目的を伝えずに、探り出せるだろう。
「いや、君ほど目を惹く美貌の持ち主なら、男性陣が放っておかないと思ってね。でなければ、よほどフィアンセが優秀かどちらかなんだが。今、君は一人だし」
「彼は、私を自由にしてくれるんです。せっかくこんなに大きなお屋敷の舞踏会に出席してるんですもの。お互い、沢山の方と知り合って、見識を広めたほうが有意義だからって……。私、色んなことに興味があるんです」
「へえ、それは感心だね。若い内に沢山体験するに越したことはないよ」
ハワードは、感心したように声を上げた。
「それなら尚更、君の力になれるかもしれない」
自信のこもった、ゆったりとした笑顔を向けられ、オリヴィエは、笑顔の意味を解析しようと努めた。
何となく、このハワードの人となりが掴めない。
(どうして、私の力になれる、と表現するのかしら。私の目的に勘付いている?)
親切そうな口調と笑顔の割には、妙な違和感もある。
しかし、今回の潜入は、セルゲイを筆頭にかなり綿密な準備の下で実行されている。
オリヴィエの目論見がそう、すぐに知れるはずはない。
ただ、もしもオリヴィエに疑いを持って接近しているなら、逆にハワードが誘拐事件と何らかの関りを持っている根拠となる。
オリヴィエは、この状況に便乗を決めた。
「ありがとうございます。では、教えてくださいな」
「君になら、喜んで」
ハワードは、またもオリヴィエをエスコートするように庭園へ導いた。
庭園に入って数歩歩くと、噴水が見えてくる。
「ああ、あちらは先客だ。こっちへ行こう」
立ち昇る水の向こうに、二人分の人影を見つけて、ハワードは迂回した。
方向を変える際、ぐっと肩を抱かれる。
その時、一瞬ハワードの眼光が鋭くなった気がした。
こちらの警戒を悟られてはならないが、やはり、怪しい人物だ。
きっと何かを知っている。
「お待ちになって。どなたがいらっしゃるか、確かめるなら、もう少し近くに行かないと」
「あそこにいるのはサングスト伯とトリニーチェ子爵夫人だよ。近づかなくてもそのくらい、わかる」
「どうしてわかるのですか?」
「常連の方だからね。それぞれお気に入りの場所があるのさ。伯爵か夫人、どちらかが相当なロマンチストなんだろう」
伯爵と子爵夫人、正式なパートナーではない。
それなのに、こんなに情緒ある庭園で堂々と二人きりになって良いものなのか。
いや、人目を忍んでいるから、堂々というわけでもないのか。
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