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舞踏会の裏側
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オリヴィエは、クローネ婦人の消えた暗がりを指し示す。
「婚約者と、ね」
男性はじっとそちらを見たまま呟いた。
「その婚約者は、今はどこに?」
「彼は、多分奥の方でどなたかとお話を」
やがて思いついたようにオリヴィエに目を向ける。
「では、良ければ僕と一緒に様子を見にいかないか?」
「貴方が、ご一緒してくださるんですか」
「皆男女のペアだろう? 僕と君の二人なら自然だ。おっと、失礼、ご挨拶が遅れたね。僕はハワード・ベルモール。君は?」
「私はレティー・リュートと申します」
ハワード・ベルモールは、よくよく見るとルーカスよりも大分年上の男性だった。
声の印象と大分違う。
物腰は柔らかで、男性にしては華やかな雰囲気の持ち主だ。
着ているものも派手だが上質そうだ。そもそも、この会場に正体を受けているならそれなりの身分なのだろう。
「レティーか……いい名前だね」
ハワードは、さり気なくオリヴィエの手を取った。
「オズワルド家の庭園は、夜に趣が出るように整備されているんだよ。僕は何度かご招待を受けているからね、案内を兼ねて散歩しよう」
ハワードは手慣れた様子で、オリヴィエを導き始める。
オリヴィエは、内心の戸惑いを表情に出さないように神経を使った。
(このまま話に乗るべきかしら。この人のことは良く分からないけど、庭に消えて行く人たちは気になるし……)
それに庭園に出て行く男女は、どこか人目を忍ぶかのように、移動している節がある。
それはあくまでも感覚であって、確たるものではない。
しかし、もしも、人気のない場所を選んで、秘密の共有が行われているとしたら――?
例えば、例の、聖女候補の女児を養女としたい貴族同士の内談など。
そう考えると辻褄が合う。
「どうしたのかな、レティー。何か心配事でも?」
「いいえ、何でもありません」
オリヴィエは気を取り直して、ハワードに導かれるまま歩を進めた。
「ベルモール様はオズワルド様と親しいと仰っていましたけど、お客様がそうっとお庭へ出て行く理由をご存じですの?」
テラスの出口を潜る前に、オリヴィエは切り出した。
庭園に声が響かないための配慮だ。
「まあ……ね、知っているよ。レティーは、社交場自体が初めてなのかな?」
「ええ。ホームパーティくらいには、出席した経験があるのですが。外見でお判りになりますか?」
ハワードは、質問には答えてくれない。
初心だと指摘されたし、そんなに不慣れな気配が出ているのだろうか。
「婚約者と、ね」
男性はじっとそちらを見たまま呟いた。
「その婚約者は、今はどこに?」
「彼は、多分奥の方でどなたかとお話を」
やがて思いついたようにオリヴィエに目を向ける。
「では、良ければ僕と一緒に様子を見にいかないか?」
「貴方が、ご一緒してくださるんですか」
「皆男女のペアだろう? 僕と君の二人なら自然だ。おっと、失礼、ご挨拶が遅れたね。僕はハワード・ベルモール。君は?」
「私はレティー・リュートと申します」
ハワード・ベルモールは、よくよく見るとルーカスよりも大分年上の男性だった。
声の印象と大分違う。
物腰は柔らかで、男性にしては華やかな雰囲気の持ち主だ。
着ているものも派手だが上質そうだ。そもそも、この会場に正体を受けているならそれなりの身分なのだろう。
「レティーか……いい名前だね」
ハワードは、さり気なくオリヴィエの手を取った。
「オズワルド家の庭園は、夜に趣が出るように整備されているんだよ。僕は何度かご招待を受けているからね、案内を兼ねて散歩しよう」
ハワードは手慣れた様子で、オリヴィエを導き始める。
オリヴィエは、内心の戸惑いを表情に出さないように神経を使った。
(このまま話に乗るべきかしら。この人のことは良く分からないけど、庭に消えて行く人たちは気になるし……)
それに庭園に出て行く男女は、どこか人目を忍ぶかのように、移動している節がある。
それはあくまでも感覚であって、確たるものではない。
しかし、もしも、人気のない場所を選んで、秘密の共有が行われているとしたら――?
例えば、例の、聖女候補の女児を養女としたい貴族同士の内談など。
そう考えると辻褄が合う。
「どうしたのかな、レティー。何か心配事でも?」
「いいえ、何でもありません」
オリヴィエは気を取り直して、ハワードに導かれるまま歩を進めた。
「ベルモール様はオズワルド様と親しいと仰っていましたけど、お客様がそうっとお庭へ出て行く理由をご存じですの?」
テラスの出口を潜る前に、オリヴィエは切り出した。
庭園に声が響かないための配慮だ。
「まあ……ね、知っているよ。レティーは、社交場自体が初めてなのかな?」
「ええ。ホームパーティくらいには、出席した経験があるのですが。外見でお判りになりますか?」
ハワードは、質問には答えてくれない。
初心だと指摘されたし、そんなに不慣れな気配が出ているのだろうか。
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