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舞踏会への招待状

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 セルゲイの提案で、オリヴィエは帰宅後、すぐにダンスのレッスンに取り掛かった。

「しばらくやっていなかったので」

 との、オリヴィエの心配は杞憂に終わった。

 三つ子の魂百までも、ではないが、一度覚えたダンスのステップはしっかりと身についていた。

 それに、舞踏会で浮かない程度に披露するダンスだから、基本のステップと決まりきったターンを繰り返すだけだ。

「なんだ、充分踊れるね。これなら心配いらないな」

 教師でもない男性に、ダンスの指導を受けるのは緊張したが、セルゲイはオリヴィエが思っていたよりもずっと親切で、優しかった。

「じゃあレッスンはこれでお終いにしよう。ただ、靴は午前の基礎訓練以外は常時履いて慣らすように」

「はい」

 オリヴィエは素直に頷いた。

 そんなに徹底するほどの理由はわからないが、ヒールと無縁の生活を送っていたのは確かだ。




 ***




「おい、あれは何の真似だ。お前の性癖か?」

 オリヴィエとセルゲイが舞踏会の衣装を用意しに街へ出かけた翌日、ルーカスは廊下ですれ違ったセルゲイを会議室に引き込んだ。

「団長、開口一番その言い草はあんまりです」

 セルゲイが傷ついたように眉根を寄せる。

「何がだ? じゃあ何の目的であいつにあんな格好をさせてるんだ?」

「舞踏会の衣装については、私に一任してくださると聞いてましたが」

「舞踏会の衣装、はな。俺が聞きたいのは、今の勤務姿についてだ」

 ルーカスは組んだ指を苛々と動かす。

 基本的な1日のスケジュールは、朝礼に基礎訓練、昼食を経て午後は各役割の役務をこなす。

 オリヴィエは第1隊隊長補佐だから、食後にはルーカスの執務室へやって来た。

「なぜ騎士服にヒール姿で職務に当たっているんだ?」

 ルーカスは混乱していた。

 オリヴィエはスタイルがいい。

 男性団員にはない膨らみに、くびれた腰。

 見慣れた隊服なのに足元には踵がきゅっと上がったヒールを身に着けているだけで、アンバランスさに心を揺さぶられる。

「本人に聞かなかったのですか? ヒールは慣れないと当日の怪我に繋がるかもしれませんから」

「それは聞いた。だが、お前の指示だろう? どうかしている」

 ただでさえ、紅一点で目立つのに、更に目を引くような恰好をさせるなど。

 しかも……下手をすれば変に興奮を煽るような。

「捕り物騒ぎになった際は、彼女にも奮闘して貰わないといけませんし……というのは建前で、平たく申し上げれば、団長に焦って頂くための手段です」

 ルーカスはムッとして、腕を組んだ。
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