15 / 140
再会
1
しおりを挟む
聖騎士を志してから早3年、オリヴィエは16歳の可憐な乙女へと成長した。
3日かけて行われる、過酷な入団試験に合格したとは思えないほどに、しなやかな肢体。
銀色の髪は艶やかに長く、緩くウェーブを描き波打つ。
瞳は瑞々しく潤んでおり、唇は花弁のように可憐で清楚な桃色。肌は白くきめ細かく、頬にはバラ色の血色感がある。
容姿だけ見れば、誰が見ても愛くるしさに目を奪われる美少女だ。
試験の時も、周囲の受験者からは、好奇の目を注がれた。
中にはちらりちらりと熱い視線を送る者もあった。
ただ、オリヴィエが可憐な容姿に見合わず、非常に好戦的な性格をしていたことが幸いした。
試験官である聖騎士相手に見事な剣戟を披露した為に、周囲はようやく一目置くようになっていた。
(いよいよ、私の第二の人生が始まる。これでようやく、ルーカスに会える……!)
オリヴィエが聖騎士の道へ向けて鍛錬に明け暮れるうちに、ルーカスは騎士団長へと昇格していた。
この後入団式のを経て、騎士団長から直々に配属の辞令を授かる予定だ。
ルーカスはオリヴィエの顔を、覚えているだろうか? それとも、もう忘れてしまっただろうか。
(いや、覚えていなくても構わない……、私が、憶えていればいいんだから)
記憶の中にいるルーカスを思い浮かべると、胸がきゅうっと締め付けられる心地がした。
あの、陽の光を宿したような琥珀色の瞳。
涼やかな目元。亜麻色の髪……。その全てがオリヴィエの心を鷲掴みにして離さない。
「おい、そこの新入り。列を乱すな」
「はいっ、申し訳ございません」
訓練場での入団式が終わって寮へ移動する際中だった。
ルーカスの妄想で一杯だった頭を、ぺしっと小さな棒で叩かれて、オリヴィエは反射的に声を上げた。
「なんだ、そのバンビちゃんみたいにふざけた声は。……うぉっ!?」
頭を叩いたのはペン先で、叩いた人物は無精髭面の大男だった。
「お前、女か? どうしてこんなところに??」
「静かにしろ。ヴィクター、お前、聞いていなかったのか? 今年度アルディア王国初の女騎士が合格を果たしたと報告があったばかりなのに」
「あー、そういやアルディアの国王夫妻も大喜びしてるって風の噂で聞いたなぁ。そうか、それがこいつか」
無精髭の男がじろじろと不躾にオリヴィエを眺める。
(な、何この人……)
オリヴィエは思わずたじろいだ。しかも妙に馴れ馴れしい。
「オリヴィエ・シルバーモント、だっけ? 何不自由ない伯爵令嬢が入団したって、俺はてっきり嫁の引き取り手がない熊のような女かと思ってたよ。こんな、とびきりのべっぴんだとは」
(べ、べっぴん? 私が??)
オリヴィエは耳を疑った。一体全体これは何の冗談か……と。
3日かけて行われる、過酷な入団試験に合格したとは思えないほどに、しなやかな肢体。
銀色の髪は艶やかに長く、緩くウェーブを描き波打つ。
瞳は瑞々しく潤んでおり、唇は花弁のように可憐で清楚な桃色。肌は白くきめ細かく、頬にはバラ色の血色感がある。
容姿だけ見れば、誰が見ても愛くるしさに目を奪われる美少女だ。
試験の時も、周囲の受験者からは、好奇の目を注がれた。
中にはちらりちらりと熱い視線を送る者もあった。
ただ、オリヴィエが可憐な容姿に見合わず、非常に好戦的な性格をしていたことが幸いした。
試験官である聖騎士相手に見事な剣戟を披露した為に、周囲はようやく一目置くようになっていた。
(いよいよ、私の第二の人生が始まる。これでようやく、ルーカスに会える……!)
オリヴィエが聖騎士の道へ向けて鍛錬に明け暮れるうちに、ルーカスは騎士団長へと昇格していた。
この後入団式のを経て、騎士団長から直々に配属の辞令を授かる予定だ。
ルーカスはオリヴィエの顔を、覚えているだろうか? それとも、もう忘れてしまっただろうか。
(いや、覚えていなくても構わない……、私が、憶えていればいいんだから)
記憶の中にいるルーカスを思い浮かべると、胸がきゅうっと締め付けられる心地がした。
あの、陽の光を宿したような琥珀色の瞳。
涼やかな目元。亜麻色の髪……。その全てがオリヴィエの心を鷲掴みにして離さない。
「おい、そこの新入り。列を乱すな」
「はいっ、申し訳ございません」
訓練場での入団式が終わって寮へ移動する際中だった。
ルーカスの妄想で一杯だった頭を、ぺしっと小さな棒で叩かれて、オリヴィエは反射的に声を上げた。
「なんだ、そのバンビちゃんみたいにふざけた声は。……うぉっ!?」
頭を叩いたのはペン先で、叩いた人物は無精髭面の大男だった。
「お前、女か? どうしてこんなところに??」
「静かにしろ。ヴィクター、お前、聞いていなかったのか? 今年度アルディア王国初の女騎士が合格を果たしたと報告があったばかりなのに」
「あー、そういやアルディアの国王夫妻も大喜びしてるって風の噂で聞いたなぁ。そうか、それがこいつか」
無精髭の男がじろじろと不躾にオリヴィエを眺める。
(な、何この人……)
オリヴィエは思わずたじろいだ。しかも妙に馴れ馴れしい。
「オリヴィエ・シルバーモント、だっけ? 何不自由ない伯爵令嬢が入団したって、俺はてっきり嫁の引き取り手がない熊のような女かと思ってたよ。こんな、とびきりのべっぴんだとは」
(べ、べっぴん? 私が??)
オリヴィエは耳を疑った。一体全体これは何の冗談か……と。
84
お気に入りに追加
812
あなたにおすすめの小説
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー
私のことはお気になさらず
みおな
恋愛
侯爵令嬢のティアは、婚約者である公爵家の嫡男ケレスが幼馴染である伯爵令嬢と今日も仲睦まじくしているのを見て決意した。
そんなに彼女が好きなのなら、お二人が婚約すればよろしいのよ。
私のことはお気になさらず。

婚約破棄はまだですか?─豊穣をもたらす伝説の公爵令嬢に転生したけど、王太子がなかなか婚約破棄してこない
nanahi
恋愛
火事のあと、私は王太子の婚約者:シンシア・ウォーレンに転生した。王国に豊穣をもたらすという伝説の黒髪黒眼の公爵令嬢だ。王太子は婚約者の私がいながら、男爵令嬢ケリーを愛していた。「王太子から婚約破棄されるパターンね」…私はつらい前世から解放された喜びから、破棄を進んで受け入れようと自由に振る舞っていた。ところが王太子はなかなか破棄を告げてこなくて…?
婚約破棄を、あなたのために
月山 歩
恋愛
私はあなたが好きだけど、あなたは彼女が好きなのね。だから、婚約破棄してあげる。そうして、別れたはずが、彼は騎士となり、領主になると、褒章は私を妻にと望んだ。どうして私?彼女のことはもういいの?それともこれは、あなたの人生を台無しにした私への復讐なの?

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

純白の牢獄
ゆる
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
悪役令嬢に仕立て上げたいのならば、悪役令嬢になってあげましょう。ただし。
三谷朱花
恋愛
私、クリスティアーヌは、ゼビア王国の皇太子の婚約者だ。だけど、学院の卒業を祝うべきパーティーで、婚約者であるファビアンに悪事を突き付けられることになった。その横にはおびえた様子でファビアンに縋り付き私を見る男爵令嬢ノエリアがいる。うつむきわなわな震える私は、顔を二人に向けた。悪役令嬢になるために。
君のためだと言われても、少しも嬉しくありません
みみぢあん
恋愛
子爵家の令嬢マリオンの婚約者、アルフレッド卿が王族の護衛で隣国へ行くが、任期がながびき帰国できなくなり婚約を解消することになった。 すぐにノエル卿と2度目の婚約が決まったが、結婚を目前にして家庭の事情で2人は…… 暗い流れがつづきます。 ざまぁでスカッ… とされたい方には不向きのお話です。ご注意を😓
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる