ヤンキー上がりの浜崎君は眼鏡ちゃんを溺愛してます

きぬがやあきら

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京都へ

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 思い悩んだところで、手放してやる気には到底なれない。




 ぴりりりり……




 アドレスを呼び出すより早く、スマホの着信音が無機質に鳴った。

 発信者の名前に胸がざわめく。

「もしもし……」

「浜崎!? 今どこ??」

 耳をつんざく大声量に、和貴は顔をしかめた。

 しかし声の主か無駄に大声を出す人物でないことを彼は知っている。

「まだ八坂神社らへんだけど、どうした?」

「どうしたもこうしたもないわよ! 深雪がいなくなったって! なんであんたと一緒じゃないの!?」

 受話器の向こうで叫んでいるのは高岡友香だ。

 そりゃ怒るだろう。

 親友をいきなりいかがわしい場所に連れ込もうとしたと聞かされれば。

 しかも別の男に連れられて突然現れたのなら、余計に……

「……え? いなくなった?」

 和貴は耳を疑った。

「藤原と一緒じゃないのか!?」

「だからなんで藤原と一緒なのよ? いきなり電話がきて……。あんたとデートしてたんじゃないの? どうなってんのあんた達!?」

 友香がいろいろまくし立てたが、後半はほとんど聞こえていなかった。

 深雪が藤原の前からいなくなった? 何かされたとか、不測の事態が起きたのか?

 いや、違う。深雪がいなくなった、とは……?

「どうなってるのか、高岡も知らないのか? 電話は」

「電話して来たのは、藤原のほうよ! 肝心の深雪に、繋がらないの! 電源、切ってるのか、もしそうじゃなかったら……」

 だから、高岡は慌てていたのか。

 前後の成り行きを把握して、和貴は納得した。

 自主的に電源を落としているのならまだいい。

 だが、もしも紛失していたら。

 万が一、意図的に外部に連絡が取れないよう仕向けられているとしたら。

「……高岡。俺が探しに行くから、お前は宿に戻ってくれ」

「えっ、嫌よ。私も深雪を探す。人数は多いほうが」

「頼む。宿に戻るかもしれないし、時間内で済めば騒ぎにしない方がいいだろう」

 それもそうかと、友香は喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。

「……じゃあ、宿で深雪が戻ったら連絡する。でももし21時までに戻らなかったら・・」

「その時は先生に言って、指示に従って。見つけたらすぐに連絡入れるから」

 そばで光一の声がして、早々と電話が切れた。

 スマホの液晶は20時23分を示している。

 なんとか間に合えば……、いいや見つかりさえすればいい。

 焦る気持ちを抑えるように、手の甲で眉間を打つ。

 一体どこへ行ったのだろう。藤原と何かあったにせよ、ことの発端は自分だ。

 ただ当てもなく探すよりはと、和貴はしばし思案した。






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