20 / 43
京都へ
1
しおりを挟む
「じゃあ、何かあったら、いつでも連絡して」
「ウン。でも良かった。和貴君が林君と同じクラスで」
そうだね。と和貴は少しためらいがちに微笑った。
友香の彼氏、佐竹光一とのやりとりを思い出したからだ。
和貴は今まで意識的に他者とつるんだり、誰かを誘うという行為をしたことがなかった。
深雪の親友――友香の紹介があったとはいえ、光一とは接点がまるでなかった。
今まで一言も口をきいたことがなかった相手と班を組み、行動の予定をたてるのは容易な努力ではなかった。
それを成し得ることができたのはひとえに深雪の存在があったからこそだ。
主導は高杉美波たち、深雪のクラスメイトだった。
光一とだけは意思の疎通を要したが、その他の班のセッティングなどは、半自動的に行われた。
D組は和貴と光一の他に男子が二名、女子四名。
深雪たちB組は例の女子を含め五名と男子が二名。
行動予定も意見を聞き取りつつ、きっちり決めていた。
深雪や主要メンバーはともかく、他のからも不満を出さないのだから、よくできた手腕に和貴は感心していた。
三つ編みを揺らしながら、深雪はB組の集合場所へと小さく駆けて行く。
学校行事とは言え、旅先でも彼女の姿を見ていられるなら。
群れるのも悪くないかと、後姿を見送る和貴の口元は綻んでいた。
「おっはよ!あんたたち今日も一緒に来てたの?」
和貴と別れ、深雪はクラス別の集合場所へ移動を始めた時だった。
ボストンバッグを肩から下げた友香が現れる。
修学旅行の行き先は定番の京都。京都までは新幹線での移動になるので、学校へは集まらず直接東京駅での集合となっていた。
「うん。佐竹君とはここで約束なの?」
「ここでっていうか、特に約束してないし……電車で会わなきゃ夜じゃない?」
あっさり言ってのける友香に深雪はいらぬ質問をしてしまったかと言葉に詰まる。一人だと知っていたら、友香も誘ったのに。
「ヤダ、浜崎との間に割り込むなんて。うちらはこんな感じだし、気にしないでよ。深雪みたくお姫様扱いされたら逆に怖いもん」
「そんなお姫様扱いなんて――」
反論しかけて、今までの和貴の行動を振り返る。
「…………」
「そうでしょ? ほら行こう!」
ほのかに頬が熱くなる。
多分赤くなった顔を見届けると、友香はさっさと歩き出した。
付き合いが始まってひと月弱経つが、和貴は文字通りお姫様のように深雪を大切にしてくれていた。
和貴は本当は、不良とは思えないくらい繊細で優しい。
二人の”お付き合い”は順調だった。もう何も、不安はない。
それはまるでこれからも、すべてのことが上手くいくかと思わせるほどだった。
「ウン。でも良かった。和貴君が林君と同じクラスで」
そうだね。と和貴は少しためらいがちに微笑った。
友香の彼氏、佐竹光一とのやりとりを思い出したからだ。
和貴は今まで意識的に他者とつるんだり、誰かを誘うという行為をしたことがなかった。
深雪の親友――友香の紹介があったとはいえ、光一とは接点がまるでなかった。
今まで一言も口をきいたことがなかった相手と班を組み、行動の予定をたてるのは容易な努力ではなかった。
それを成し得ることができたのはひとえに深雪の存在があったからこそだ。
主導は高杉美波たち、深雪のクラスメイトだった。
光一とだけは意思の疎通を要したが、その他の班のセッティングなどは、半自動的に行われた。
D組は和貴と光一の他に男子が二名、女子四名。
深雪たちB組は例の女子を含め五名と男子が二名。
行動予定も意見を聞き取りつつ、きっちり決めていた。
深雪や主要メンバーはともかく、他のからも不満を出さないのだから、よくできた手腕に和貴は感心していた。
三つ編みを揺らしながら、深雪はB組の集合場所へと小さく駆けて行く。
学校行事とは言え、旅先でも彼女の姿を見ていられるなら。
群れるのも悪くないかと、後姿を見送る和貴の口元は綻んでいた。
「おっはよ!あんたたち今日も一緒に来てたの?」
和貴と別れ、深雪はクラス別の集合場所へ移動を始めた時だった。
ボストンバッグを肩から下げた友香が現れる。
修学旅行の行き先は定番の京都。京都までは新幹線での移動になるので、学校へは集まらず直接東京駅での集合となっていた。
「うん。佐竹君とはここで約束なの?」
「ここでっていうか、特に約束してないし……電車で会わなきゃ夜じゃない?」
あっさり言ってのける友香に深雪はいらぬ質問をしてしまったかと言葉に詰まる。一人だと知っていたら、友香も誘ったのに。
「ヤダ、浜崎との間に割り込むなんて。うちらはこんな感じだし、気にしないでよ。深雪みたくお姫様扱いされたら逆に怖いもん」
「そんなお姫様扱いなんて――」
反論しかけて、今までの和貴の行動を振り返る。
「…………」
「そうでしょ? ほら行こう!」
ほのかに頬が熱くなる。
多分赤くなった顔を見届けると、友香はさっさと歩き出した。
付き合いが始まってひと月弱経つが、和貴は文字通りお姫様のように深雪を大切にしてくれていた。
和貴は本当は、不良とは思えないくらい繊細で優しい。
二人の”お付き合い”は順調だった。もう何も、不安はない。
それはまるでこれからも、すべてのことが上手くいくかと思わせるほどだった。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
クソつよ性欲隠して結婚したら草食系旦那が巨根で絶倫だった
山吹花月
恋愛
『穢れを知らぬ清廉な乙女』と『王子系聖人君子』
色欲とは無縁と思われている夫婦は互いに欲望を隠していた。
◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
私をもう愛していないなら。
水垣するめ
恋愛
その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。
空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。
私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。
街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。
見知った女性と一緒に。
私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。
「え?」
思わず私は声をあげた。
なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。
二人に接点は無いはずだ。
会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。
それが、何故?
ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。
結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。
私の胸の内に不安が湧いてくる。
(駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)
その瞬間。
二人は手を繋いで。
キスをした。
「──」
言葉にならない声が漏れた。
胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。
──アイクは浮気していた。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる