ヤンキー上がりの浜崎君は眼鏡ちゃんを溺愛してます

きぬがやあきら

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京都へ

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「じゃあ、何かあったら、いつでも連絡して」

「ウン。でも良かった。和貴君が林君と同じクラスで」

 そうだね。と和貴は少しためらいがちに微笑った。

 友香の彼氏、佐竹光一とのやりとりを思い出したからだ。

 和貴は今まで意識的に他者とつるんだり、誰かを誘うという行為をしたことがなかった。

 深雪の親友――友香の紹介があったとはいえ、光一とは接点がまるでなかった。

 今まで一言も口をきいたことがなかった相手と班を組み、行動の予定をたてるのは容易な努力ではなかった。

 それを成し得ることができたのはひとえに深雪の存在があったからこそだ。

 主導は高杉美波たち、深雪のクラスメイトだった。

 光一とだけは意思の疎通を要したが、その他の班のセッティングなどは、半自動的に行われた。

 D組は和貴と光一の他に男子が二名、女子四名。

 深雪たちB組は例の女子を含め五名と男子が二名。

 行動予定も意見を聞き取りつつ、きっちり決めていた。

 深雪や主要メンバーはともかく、他のからも不満を出さないのだから、よくできた手腕に和貴は感心していた。

 三つ編みを揺らしながら、深雪はB組の集合場所へと小さく駆けて行く。

 学校行事とは言え、旅先でも彼女の姿を見ていられるなら。

 群れるのも悪くないかと、後姿を見送る和貴の口元は綻んでいた。









「おっはよ!あんたたち今日も一緒に来てたの?」

 和貴と別れ、深雪はクラス別の集合場所へ移動を始めた時だった。

 ボストンバッグを肩から下げた友香が現れる。

 修学旅行の行き先は定番の京都。京都までは新幹線での移動になるので、学校へは集まらず直接東京駅での集合となっていた。

「うん。佐竹君とはここで約束なの?」

「ここでっていうか、特に約束してないし……電車で会わなきゃ夜じゃない?」

 あっさり言ってのける友香に深雪はいらぬ質問をしてしまったかと言葉に詰まる。一人だと知っていたら、友香も誘ったのに。

「ヤダ、浜崎との間に割り込むなんて。うちらはこんな感じだし、気にしないでよ。深雪みたくお姫様扱いされたら逆に怖いもん」

「そんなお姫様扱いなんて――」

 反論しかけて、今までの和貴の行動を振り返る。

「…………」

「そうでしょ? ほら行こう!」

 ほのかに頬が熱くなる。

 多分赤くなった顔を見届けると、友香はさっさと歩き出した。

 付き合いが始まってひと月弱経つが、和貴は文字通りお姫様のように深雪を大切にしてくれていた。

 和貴は本当は、不良とは思えないくらい繊細で優しい。

 二人の”お付き合い”は順調だった。もう何も、不安はない。

 それはまるでこれからも、すべてのことが上手くいくかと思わせるほどだった。
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