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放課後
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夢を見ているようだった。
寝ていたわけではないような気もするが、視界全体が靄がかっていてモノクロだったから、きっと夢に違いない。
自分は檻の中にいた。
何をしているのかといえば、ただ格子にしがみついて人を待っているのである。
誰を待っている?
決まってる。浜崎君だ。
自分は彼の敵に閉じ込められている。和貴は何をしても助けに来てくれるだろう。
理由はむろん、深雪を危険から救いたいからだ。
けれど深雪が危険にさらされるのも和貴の為。
和貴が来た。
自分は檻の中にいて、周りはいつの間にかガラの悪い連中に囲まれ乱闘が始まる。
ものの数分で片がついたが、和貴は額に傷を負い、衣服はボタンがいくつかとんでいる。
―――どうしてこんなことになってしまうのだろう。いつまでこんな事が続くのか。
彼と共に、平和には過ごせないのだろうか?
暴力の連鎖は――終わらせることが出来ないのか。始まりはどこだったのだろう。
和貴が檻の鍵を開ける。深雪がゆっくり立ち上がったその時―――
和貴の背後に、いつの間にか接近していた男が体当たりをする。
和貴の口から鈍い悲鳴が漏れ前のめりに倒れる。
背後にいた男の手には紅く染まった白銀が光って・・・
「ぅんっ!」
目を開くと、そこが檻の中でないことがわかった。
天井は遠く、背中が冷たい。
体が上手く動かせないが、どうやらさっきの映像は夢で、和貴も刺されていないようだ。
(ああ、よかった……)
ほっとしたのも束の間、次に今の状況を把握しようと周囲を見渡そうとして、身体の自由が奪われていることに気づいた。
「なにこれ……」
腕を後ろに取られて、胴と一緒にぐるぐる巻きに縛られ転がされていた。
転がされていた、というのは勿論自分でこんなことをするわけがないので誰かにされたのに違いないからそう推測されるのだが……
どうやらどこかしらの建物の中のようで、薄暗く窓も見当たらない。
「やっと気づいたか? ヤワなお姫様だな。本当に浜崎の女か?」
頭上から声が落ちてくる。
寝ていたわけではないような気もするが、視界全体が靄がかっていてモノクロだったから、きっと夢に違いない。
自分は檻の中にいた。
何をしているのかといえば、ただ格子にしがみついて人を待っているのである。
誰を待っている?
決まってる。浜崎君だ。
自分は彼の敵に閉じ込められている。和貴は何をしても助けに来てくれるだろう。
理由はむろん、深雪を危険から救いたいからだ。
けれど深雪が危険にさらされるのも和貴の為。
和貴が来た。
自分は檻の中にいて、周りはいつの間にかガラの悪い連中に囲まれ乱闘が始まる。
ものの数分で片がついたが、和貴は額に傷を負い、衣服はボタンがいくつかとんでいる。
―――どうしてこんなことになってしまうのだろう。いつまでこんな事が続くのか。
彼と共に、平和には過ごせないのだろうか?
暴力の連鎖は――終わらせることが出来ないのか。始まりはどこだったのだろう。
和貴が檻の鍵を開ける。深雪がゆっくり立ち上がったその時―――
和貴の背後に、いつの間にか接近していた男が体当たりをする。
和貴の口から鈍い悲鳴が漏れ前のめりに倒れる。
背後にいた男の手には紅く染まった白銀が光って・・・
「ぅんっ!」
目を開くと、そこが檻の中でないことがわかった。
天井は遠く、背中が冷たい。
体が上手く動かせないが、どうやらさっきの映像は夢で、和貴も刺されていないようだ。
(ああ、よかった……)
ほっとしたのも束の間、次に今の状況を把握しようと周囲を見渡そうとして、身体の自由が奪われていることに気づいた。
「なにこれ……」
腕を後ろに取られて、胴と一緒にぐるぐる巻きに縛られ転がされていた。
転がされていた、というのは勿論自分でこんなことをするわけがないので誰かにされたのに違いないからそう推測されるのだが……
どうやらどこかしらの建物の中のようで、薄暗く窓も見当たらない。
「やっと気づいたか? ヤワなお姫様だな。本当に浜崎の女か?」
頭上から声が落ちてくる。
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