ヤンキー上がりの浜崎君は眼鏡ちゃんを溺愛してます

きぬがやあきら

文字の大きさ
上 下
3 / 43
深雪と和貴

3

しおりを挟む
「もう……やめてよー!!」

 行為の凄惨さに耐えかねて、深雪は叫んでいた。

 深雪が和貴と二人で、公園へやって来たのは6時限が終わってすぐだ。

 ただでさえ薄暗い公園から、影法師が消え去ってからもう大分経っている。

 あれから、どう考えてももう10、いや20分以上、彼は暴力を受け続けている。

「浜崎くんが死んじゃう……っ」

 つかまれた腕はいくらばたついても振りほどくことが出来ない。

 ――彼はそのせいでこんな目にあっているのに。

「……気にいらねーなぁ。」

 ぽつり、とリーダー格らしき男が和貴の頭部を踏みつけて言った。

「何でスか? 俺スッキリしましたよ。まさかあの浜崎タコれるなんて」

 茶髪に剃り込みの入った男だ。皆同じ学ランなので、服装では区別がつかない。

 彼がポケットから煙草を取り出し口にくわえると、ずっと横に張り付いていた小男がそれに火をつける。

「コイツよぉ、こんな目にあってるのに詫びいれねぇんだぜ? 気分わりーったらねえよ!」

 言いながら更に足に力を込める。

 ジャリジャリと砂の擦れる音が悲痛に響いた。

「気に入らないって、それ以上浜崎くんに何するって言うのよ、殴るとこなんて残ってないじゃない!」

 和貴一人なら、こんな風にはならなかっただろう。

 昨日も先刻も、彼は鬼のような身体能力を誇っていた。強い姿を知っているだけに目の前の光景は悪夢のようだ。

「オーイ、浜崎よぉ、杉原さんの言葉聞こえただろ?ワビだよワビ!ワビいれんだよ!!」

「――――――んだよ・・」

「あぁ!?」

「テメェなんかにあ……たま、……げるくれぇなら死、んだ方が……んだよタコ」

 和貴が途切れ途切れに回答した途端、格下らしい男の額に青筋が浮き上がる。

「フザケてんじゃねえぞ!! タコはどっちだボケ!!」

 怒りにまかせて和貴の頭に足を振り下ろす。

「あっ・・」

 一度は止んだはずの攻撃の再開に一瞬深雪は身じろぐ。

「やっ、ヤダ、本当に死んじゃう……、ねぇもういいでしょ? 止めてよ、ねえ!!」

 怖かったが言わずにはいられない。

 このままでは本当に和貴が死んでしまう気がした。頭と言わず顔といわず、至る所から流れた血が、砂にまみれている。

 不良を恐ろしい生物として恐れていた。しかし、まさかここまでとは……。

「こんなことして何になるっていうのよ、浜崎くんが死んだらみんな犯罪者になっ……」

 バンッ

「!!」

 今までに受けた経験のない打撃を顔面に加えられる。 

 頬をはたかれた衝撃で眼鏡が地面へ落下して割れた。

「うっせーんだよこのアマが! ブスのくせしやがって黙ってろ!!」

 ……頬も痛いが、口の中も痛い。不意の衝撃だったので思わず口の中を切ってしまった。

 恐怖と悔しさで眼に熱いものがこみ上げたが、唇をかみしめ殴った相手を睨みつける。

 恐らく和貴はもっと、自分の何倍も痛い目にあっている。

 こんな卑怯な連中の前で、泣いてなどやるものかと思った。

 その横で“杉原”がピュウっと口笛を吹いた。面白いものでも見つけたように。

「ヘェー、浜崎ぃ、テメェの女よー」

 テメェの女とはつまり深雪のことだ。

 深雪としてはまだ正式に彼の彼女になったつもりはないのだが、とりあえず追及している場合ではない。

 杉原はこちらに近づいてくる。

「メガネとるとわりとマブイんじゃねえの?」

























しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。

ふまさ
恋愛
「──わかった、これまでのことは謝罪しよう。とりあえず、国に帰ってきてくれ。次の聖女は急ぎ見つけることを約束する。それまでは我慢してくれないか。でないと国が滅びる。お前もそれは嫌だろ?」  出来るだけ優しく、テンサンド王国の第一王子であるショーンがアーリンに語りかける。ひきつった笑みを浮かべながら。  だがアーリンは考える間もなく、 「──お断りします」  と、きっぱりと告げたのだった。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~

石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。 食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。 そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。 しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。 何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。 扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

処理中です...