サレカノでしたが、異世界召喚されて愛され妻になります〜子連れ王子はチートな魔術士と契約結婚をお望みです〜

きぬがやあきら

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おあずけ

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 シオンは叫んだ。

 高さを揃えて刈り込まれたプリペットの狭間から、リラが出たり消えたりを、繰り返していた。

 プリペットにそれほど高さはないが、それでも2メートルはある。

 叫んだシオンと目が合うと、リラは「あう~」と柔らかな声を出した。

 こんな真似ができる人物はヴァイスしかいない。

 シオンはダッシュで生垣を回り込み、無謀な人物に詰め寄る。

 犯人は予想通りヴァイスだ。

 しかしヴァイスはリラと同様、キョトンとした表情でこちらを眺めていた。

「何って? 高い高いだが……」

 ヴァイスの眼差しには、一点の後ろ暗さもない。

 形相で迫って来たシオンには驚いたようだが。

「まだ首も据わってない子に高い高いなんて……それに、高すぎ!」

 ヴァイスは魔力の操作で、リラを浮遊させているのだろう。

 人差し指でリラを空中に持ち上げて、ゆらゆらと揺らしている。

「危なくないように、横向きにしている。それに、喜んでるぞ?」

「きゃあ~、だぁ~」

 見上げたリラは晴れ渡る青空の下、陽光を浴びながらその小さな手足をパタパタさせている。

 きりなく何かを訴えるような喃語は、ご機嫌そのもので、喜んでいるのは一目瞭然だ。

 改めて認識したそんな様子に、シオンは思わず脱力した。

 こちらから見たら充分危なっかしいのに、シオンが心配しすぎなのだろうか。

「もう、ヴァイスったら……」

 肝が縮んだ腹いせに、ヴァイスを睨みつけてやる。

 しかし、八つ当たり気味なシオンの胸の内を知ってか知らずか、ふと目が合うとヴァイスは蕩けるような微笑みを見せた。

 途端に、胸がキュンとときめく。

 出会い頭に吹っ飛んだ、昨夜の余韻みたいなものが蘇って急に鼓動が早まった。

「見るたびに綺麗になっている。良く眠れたようだな」

 ただでさえ興奮気味だったところに、そんな甘い言葉を投下されて、シオンの頰は一気に紅潮した。

「ん……お、お陰様で。ヴァイスがリラを見ててくれたのね」

「用事を済ませて戻ってからだ。それまではセシルが見ていてくれた」

 もう、一仕事済ませたんだ。その後でリラの面倒を見てくれていたとわかると、ますます頭が下がる。

「ごめんね、私ったらすっかり寝過ごしてしまって。お仕事の後なんて……ヴァイスは休んで。リラは私が抱くわ」

「大した仕事でもない。それにシオンは悪くない。起きられないほど負担をかけたのは俺だ。身体は大丈夫か? シオンが素晴らしくてつい、歯止めが効かなく……」

「ちょっ、何言い出すの!」

 思わず両手でヴァイスの口を塞ぐ。誰もいないかどうか、慌てて周囲を見渡すが、幸い庭園には誰もいない。

 だが、頭上で「ぶう~、ぶう~」と不満そうな声がしている。

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