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愛の証
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ネンゲルは居た堪れなくなって、唇を噛む。
確かに、ネンゲルの行動は万全を期していたとは言い切れない。
しかし、悔いているからこそ、告白を決意した。
この国では悪魔や魔術がデフォルトだからスルーされているのかもしれないが、なかなかに激しい内容だと思う。
夢で、誘惑に負けて淫らな行為をしただなんて、誰だって秘密にしたい。
葬り去りたい秘密を、こんな複数人の前で告白しているのだから、充分に勇気を振り絞っている。
かなり頑張っていると思う。
その姿を前に、不遜な態度を貫くマグヌスに腹が立つ。
完全な責任転嫁だ。
「元はと言えば、悪魔を取り締まれなかった教会の落ち度もあるのでは? それを棚に上げて殿下だけ非難するなんて」
見守る姿勢を保っていたのに、シオンはつい口を挟んだ。
「殿下だって、何もせず侍女の話を鵜呑みにしたわけじゃないでしょう。自分の過失を誤魔化そうと殿下に責任を押し付けてるようにしか見えないんですけど」
「何だと!? 私はそのような……! いいや、殿下の話を最後までお聞かせ願おう。是非はその後で話し合えばいい。侍女の話の真偽はどのように判断されたのです? 何故、国教会に相談してくれなかったのですか?」
マグヌスはシオンの指摘に、一瞬激昂しかけたが、ネンゲルに先を促した。
(何よ、偉そうに)
シオンはマグヌスをキッと睨みつけるが、当のマグヌスは涼しい顔で無視している。
「私は……、この通り完璧な人間ではない。でも、幼い頃から大勢の人間を見て育ったから、人を見る目には自信があった。実際に会ったシュナは善良な人間で、子供の存在を盾に何かを要求するでもなかった。ただ王家の血脈が悪魔の手で汚されるのを恐れていた。彼女の行動は、私と子を案じてのことからだったんだ」
その後もネンゲルは痛切な面持ちで、語り続けた。
シュナを辞職させ、療養の名目で田舎の医者に預けた。
未婚女性が訳ありの出産をするケースは、そう珍しくもないらしい。
「だが、浅はかだった。隠し果せると考えていた自分が恥ずかしい。結果、彼女は子の顔を見ることもなく命を落とした。弟に望まぬ婚姻を押し付け、シオンは拉致も同然にこの国に連れて来てしまった。謝っても謝り切れない」
ネンゲルは苦しそうに胸を押さえた。
ネンゲルの煩悶と苦悩は、多分、本物だ。
シオンは突然、エルデガリアに召喚され、リラの監護を、ほとんど強制された。
(……でも、それだけじゃない。最初はびっくりしたけど、ここでの生活は)
子育ても結婚生活も、強要されたものだったけれど実際は嫌じゃなかった。
リラは本当に可愛いし、城の皆は暖かく迎え入れてくれた。
寂しさと憎しみで、自分を見失いそうになっていたシオンを助けてくれた。
確かに、ネンゲルの行動は万全を期していたとは言い切れない。
しかし、悔いているからこそ、告白を決意した。
この国では悪魔や魔術がデフォルトだからスルーされているのかもしれないが、なかなかに激しい内容だと思う。
夢で、誘惑に負けて淫らな行為をしただなんて、誰だって秘密にしたい。
葬り去りたい秘密を、こんな複数人の前で告白しているのだから、充分に勇気を振り絞っている。
かなり頑張っていると思う。
その姿を前に、不遜な態度を貫くマグヌスに腹が立つ。
完全な責任転嫁だ。
「元はと言えば、悪魔を取り締まれなかった教会の落ち度もあるのでは? それを棚に上げて殿下だけ非難するなんて」
見守る姿勢を保っていたのに、シオンはつい口を挟んだ。
「殿下だって、何もせず侍女の話を鵜呑みにしたわけじゃないでしょう。自分の過失を誤魔化そうと殿下に責任を押し付けてるようにしか見えないんですけど」
「何だと!? 私はそのような……! いいや、殿下の話を最後までお聞かせ願おう。是非はその後で話し合えばいい。侍女の話の真偽はどのように判断されたのです? 何故、国教会に相談してくれなかったのですか?」
マグヌスはシオンの指摘に、一瞬激昂しかけたが、ネンゲルに先を促した。
(何よ、偉そうに)
シオンはマグヌスをキッと睨みつけるが、当のマグヌスは涼しい顔で無視している。
「私は……、この通り完璧な人間ではない。でも、幼い頃から大勢の人間を見て育ったから、人を見る目には自信があった。実際に会ったシュナは善良な人間で、子供の存在を盾に何かを要求するでもなかった。ただ王家の血脈が悪魔の手で汚されるのを恐れていた。彼女の行動は、私と子を案じてのことからだったんだ」
その後もネンゲルは痛切な面持ちで、語り続けた。
シュナを辞職させ、療養の名目で田舎の医者に預けた。
未婚女性が訳ありの出産をするケースは、そう珍しくもないらしい。
「だが、浅はかだった。隠し果せると考えていた自分が恥ずかしい。結果、彼女は子の顔を見ることもなく命を落とした。弟に望まぬ婚姻を押し付け、シオンは拉致も同然にこの国に連れて来てしまった。謝っても謝り切れない」
ネンゲルは苦しそうに胸を押さえた。
ネンゲルの煩悶と苦悩は、多分、本物だ。
シオンは突然、エルデガリアに召喚され、リラの監護を、ほとんど強制された。
(……でも、それだけじゃない。最初はびっくりしたけど、ここでの生活は)
子育ても結婚生活も、強要されたものだったけれど実際は嫌じゃなかった。
リラは本当に可愛いし、城の皆は暖かく迎え入れてくれた。
寂しさと憎しみで、自分を見失いそうになっていたシオンを助けてくれた。
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