サレカノでしたが、異世界召喚されて愛され妻になります〜子連れ王子はチートな魔術士と契約結婚をお望みです〜

きぬがやあきら

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異変

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 集中すべきはそこでないと分かっていても、シオンの心は大きく乱された。

「では何か、わざわざ異世界から無関係の女を呼び寄せて子守りをさせていると、お主はそう言いたいのか?」

 マグヌスは一笑に付したが、真実はその通りだ。

 理解できない。馬鹿馬鹿しい。

「理解できんな。何の意味がある? 子守りだけなら誰でもよかろう。わざわざ異界からその女を呼び寄せた理由に説明がつかん」

 マグヌスが、シオンの抱くあらゆる疑問に解を与えてくれた。

 どうして、はるばる時空まで超えて、ヴァイスはシオンを呼んだのか。


 ”俺が、シオンに会いたかったから”
 ”俺と結婚してくれ。シオンが必要なんだ”



 初対面で掛けられた台詞がぶわっと、膨れるように思い出される。

 初めから、ヴァイスの言動は一貫していた。

 恋人が架空の存在だったなら、辻褄が合う。

 敵の示す意見を全部まるっと、信じて、受け入れるのは得策でない。

 だけど……!

 こんな非常時なのに、期待に胸が騒めいた。

(ひょっとしたら、あれらは全部、本心だったかもしれないの……!?)

「理由までは、私には判りかねます。ですが」

 カルロは慎重に言葉を選んだ。だが、続けようと口を開いたところで、異変を感じ取る。

「ーー教皇様……!」

 同時に、シオンもまた、迫り上がるような悪寒に身を震わせた。

 ズズズズッ

 引き摺られるような細かい振動の後、ズンッ! と落下を予感させる地鳴りと共に建物全体が揺れた。

「きゃっ」

「うっ!」

 カルロはマグヌスに駆け寄ったが、支えきれずに2人とも床に倒れた。

 それでもカルロの機転のお陰で、机やキャビネットなど複数の家具を避けられた。

「教皇様! ご無事ですか!?」

「ああ……だが何事だ?」

 シオンは振動で強か肩を打ったが、軽傷だ。

 地震のような揺れは一瞬で収まり、次の瞬間には何事もなかったかのようにシンとした静寂が訪れた。

 鳥肌も治らないくらいの僅かな間で、感じた違和感も霧散していた。

 今の揺れは何だったのだろう?

 元の世界で軽度の地震は日常茶飯事だったが、こちらの世界での揺れは初体験だ。

 しかも、滅法大きな揺れだった。

 日本の地震なら、原因は地殻の変動だ。

 自然の摂理なのだから、仕方がない。

 しかし、こちらではどうだ?

 国境付近には魔物が蔓延り、討伐した魔物から貴石を回収するような世界だ。

 シオンの思考は目まぐるしく流転し、行き着いた直感に叫んでいた。

「リラはどこなの!? これを外しなさい!」

 2人の様子から察するに、どこで何が起きたのか、把握していない。

 ネンゲルの子だから粗末に扱っていないと信じたいが、非常事態に紛れてリラに厄災が降りかからないとは限らない。

 何かあったらと思うと、居ても立ってもいられない。

 あの子は身を守るどころか、まだ、自分の意思で動くこともできないのだから。

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