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異変
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「私はヴォルクス教皇、マグヌス・カイエ。このような高い位置からのご挨拶で申し訳ない、シオン・シュニー大公夫人殿」
嫌味な物言いが、いちいち鼻に付く。
「ヴォルクス教皇? ……って、あの?」
シオンは目を瞬いた。
少しだけ、頭の中で情報が繋がった。ヴェーシュの祖父はヴォルクス教の教皇だと聞いている。
するとここは、教会絡みの施設だろうか。
リラの父親を疑って、ヴェーシュが祖父のマグヌスに助力を仰いだのか。
「ほう、卑しい異国民でもヴォルクス教は知っているか。なかなか殊勝ではある。名は名乗ったし、これで気は済んだか」
「済むわけないでしょう! この仕打ちは、どういうつもり!? リラはどこ?」
シオンは敢えて声を張り上げた。
手足まで拘束されて、完全に敵認定だ。
「お前は王国の一殿下を誑かし、王太子妃の座を脅かそうとする奸賊ばらだ。故に相応しい裁きを下すため連行したまで」
リラについて言及しないマグヌスに腹が立つ、そこへカルロが割って入る。
「教皇様、しかしながら……、先ほど申し上げた通りリラ様からは大公夫人の身体情報は検出できておりません」
「それを判断したのはお前だったな。どうして口を挟む」
「つまり、結果から導かれる結論を申し上げると、大公閣下並びに夫人にはリラ様との血縁関係が認められないのです」
カルロは恐縮するように跪き、しかしはっきりと進言した。
目覚め直後に聞かされていた会話と、カルロの主張は一致していた。
この世界にも遺伝子検査なるものが存在するのか。
どのような方法かわからないが、リラとシオンが血縁でないのはシオン自身が1番よく分かっている。
(私は当然だけど、ヴァイスとも関係がないって、どういうこと?)
リラの所在も気になるが、新たに浮上した疑惑が衝撃的過ぎて、シオンはつい、2人の会話に聞き入った。
「馬鹿馬鹿しい。ならばもう1度やり直せば良い。お主ではなく別の者にやらせるとしよう」
やれやれと頭を振り、マグヌスはベルを鳴らす。
チリリンと澄んだ音が響いた。
「お待ちください。私とて、信じられず3度検査を重ねました。しかし、全ての結果は同じ。首席魔導士の名に懸けて、断言致します。リラ様は夫人の娘ではありません」
ぎくん。
当事者だからわかる検査結果の信憑性にシオンの心臓は跳ね上がった。
事実を突きつけられて、どうするべきか。
(いいえ、何を迷っているの。否定しなくちゃ!)
自分を鼓舞する一方で、言いようのない不安が押し寄せる。
ネンゲルの子だと、当然のように唱える2人を前にして、シオンの自信は揺らぎ始めていた。
母親だと詐称するシオンとリラの身体情報は無関係、とする診断は正しい。
誰も疑わなかった事実を、カルロは見事に言い当てた。
もしもカルロが正しかったら……? リラは本当にネンゲルの子なの?
カルロがどのような人物か知らないが、教会に属する首席魔導士なら、それなりの実力を備えている。
躊躇ってはいけない。躊躇えば、付け込まれる。
だが、しかし。
(ヴァイスは真実を隠してリラを育てる決意をしたっていうの? 兄の子を、自分の子として。どうして……!?)
嫌味な物言いが、いちいち鼻に付く。
「ヴォルクス教皇? ……って、あの?」
シオンは目を瞬いた。
少しだけ、頭の中で情報が繋がった。ヴェーシュの祖父はヴォルクス教の教皇だと聞いている。
するとここは、教会絡みの施設だろうか。
リラの父親を疑って、ヴェーシュが祖父のマグヌスに助力を仰いだのか。
「ほう、卑しい異国民でもヴォルクス教は知っているか。なかなか殊勝ではある。名は名乗ったし、これで気は済んだか」
「済むわけないでしょう! この仕打ちは、どういうつもり!? リラはどこ?」
シオンは敢えて声を張り上げた。
手足まで拘束されて、完全に敵認定だ。
「お前は王国の一殿下を誑かし、王太子妃の座を脅かそうとする奸賊ばらだ。故に相応しい裁きを下すため連行したまで」
リラについて言及しないマグヌスに腹が立つ、そこへカルロが割って入る。
「教皇様、しかしながら……、先ほど申し上げた通りリラ様からは大公夫人の身体情報は検出できておりません」
「それを判断したのはお前だったな。どうして口を挟む」
「つまり、結果から導かれる結論を申し上げると、大公閣下並びに夫人にはリラ様との血縁関係が認められないのです」
カルロは恐縮するように跪き、しかしはっきりと進言した。
目覚め直後に聞かされていた会話と、カルロの主張は一致していた。
この世界にも遺伝子検査なるものが存在するのか。
どのような方法かわからないが、リラとシオンが血縁でないのはシオン自身が1番よく分かっている。
(私は当然だけど、ヴァイスとも関係がないって、どういうこと?)
リラの所在も気になるが、新たに浮上した疑惑が衝撃的過ぎて、シオンはつい、2人の会話に聞き入った。
「馬鹿馬鹿しい。ならばもう1度やり直せば良い。お主ではなく別の者にやらせるとしよう」
やれやれと頭を振り、マグヌスはベルを鳴らす。
チリリンと澄んだ音が響いた。
「お待ちください。私とて、信じられず3度検査を重ねました。しかし、全ての結果は同じ。首席魔導士の名に懸けて、断言致します。リラ様は夫人の娘ではありません」
ぎくん。
当事者だからわかる検査結果の信憑性にシオンの心臓は跳ね上がった。
事実を突きつけられて、どうするべきか。
(いいえ、何を迷っているの。否定しなくちゃ!)
自分を鼓舞する一方で、言いようのない不安が押し寄せる。
ネンゲルの子だと、当然のように唱える2人を前にして、シオンの自信は揺らぎ始めていた。
母親だと詐称するシオンとリラの身体情報は無関係、とする診断は正しい。
誰も疑わなかった事実を、カルロは見事に言い当てた。
もしもカルロが正しかったら……? リラは本当にネンゲルの子なの?
カルロがどのような人物か知らないが、教会に属する首席魔導士なら、それなりの実力を備えている。
躊躇ってはいけない。躊躇えば、付け込まれる。
だが、しかし。
(ヴァイスは真実を隠してリラを育てる決意をしたっていうの? 兄の子を、自分の子として。どうして……!?)
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