サレカノでしたが、異世界召喚されて愛され妻になります〜子連れ王子はチートな魔術士と契約結婚をお望みです〜

きぬがやあきら

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お茶会

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 大して話してもいないのに喉がカラカラに乾いた気がして、シオンは早速、紅茶を啜った。

 そうだ。

 エルデガリアに来た当初は右も左もわからず、環境に適応するだけで気持ちが一杯だったが、今は大分、ヴァイスに好感を抱き始めていた。

 ヴァイスの感性は規格外だが、彼は善人だった。

 家人からも好かれ、責任感も強く、優しさも備えている。

 魔術について教わる時には尊敬できる師でもあり、机に並び議論する時には仲の良い友人のようでもあった。

 リラと積極的に関わろうとする父としての姿も好感が持てた。

 恋愛関係を除けば、最上のパートナーになれるかもしれないと、感じ始めていた。

 その矢先、だ。

 今朝のヴァイスの発言は、シオンが抱いた仄かな希望を見事に裏切ってくれた。

 期待したからこそ、余計に腹立たしかった。

 結局はヴァイスも、あの男と同じで、口先だけだ。

 熱心にシオンに好意を寄せているのは今だけで、きっかけがあればすぐにでも他の女性に心を移すだろう。

「そう、上手くいってるのね。シオンが幸せなら、良かったわ。それなら余計に聞きたいことがあるの」

 シオンの心境とは裏腹に、上手くやり過ごせたようだ。

 一度は安堵したものの、更に続いた質問に、シオンは再び身構える。

「シオンは何回くらいでリラを授かったの?」

 ぶふーっ。

 歯に衣着せぬド直球な質問に、シオンは紅茶を噴き出した。

「う……っ、ごほっ、ごめんなさ」

「あらあら、ごめんなさい。これを使って? そんなに動揺しないで。今は2人きりだから」

 ヴェーシュは何事もないように、さっとナプキンを手渡してくれる。

「ありがとうございます……」

 シオンは口元を拭いつつ、耳にした内容が幻聴だったら良いなと目を泳がせた。

『何回くらい』って、王太子妃が義理の妹にする質問だろうか。

「知ってるかもしれないけど、私がネンゲル様に嫁いでから、もうすぐ1年が経つの。でも、一向に授かる気配がなくて」

 ヴェーシュは可憐な溜息をつき、肩を竦めてみせる。

(あ……そうか)

「世継ぎを産むのが私の義務なのに。体質にも依るとは思うのだけど、教えてくれない?」」

 俯きカップに口をつけるヴェーシュは寂しそうだ。

 それでやっと、ヴェーシュが質問を投げかけた理由に合点がいった。

 王太子妃ともあろう方が、出会って数時間の義妹に繊細な告白をするくらい悩んでいるのか。

 相談できる相手も、立場上限られているのだろう。

 なりふり構っていられないヴェーシュに協力したいが、できるはずがない。

 実態は仮面夫婦もいいところだし、リラを生んだのは別の女性だ。

「お力になりたいんですが、でも、か、回数とか、覚えていなくて……」

 心苦しいのと恥ずかしいのとで声が上ずる。

「覚えられないくらいの回数なのね? やっぱりそれくらいでないと」

「違います! 数えてないだけっていうか……!」

 とんでもない勘違いに、シオンは思わず立ち上がった。

 手を振って、盛大に否定する。

 どうして、そんな解釈になったんだ?
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