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お茶会
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「何故そうなる。違うだろ、お前は浮気どころかようやく初恋を知って舞い上がる純情青年だ。だがな……これは、私のせいだ。釈明できない、ヴァイスには非常に申し訳ない」
ネンゲルは急速に声のトーンを落とすと、項垂れた。
ヴァイスは何もかも分からず、当惑するばかりだ。
「話が見えない。俺が浮気したわけでもなくて、何故兄上が?」
「そのシオンの怒りは当然だよ」
ネンゲルは執務椅子を滑らせて、ヴァイスに向き合った。
窓から差し込む朝の光が反射して、その緑の瞳がエメラルドのように煌めいて見える。
「シオンから見たヴァイスはリラの父親だ。二月前に、結ばれなかった恋人と死別している。普通なら喪に服す期間だし、恋人を愛していればいるほど、その喪失感は大きい」
ヴァイスは素直に同意した。今し方ネンゲルに対して共感したばかりだから、理解できる。
「それなのに、異国から呼び寄せた女性に臆面もなく言い寄り、口説こうとしている。しかも、それが男の自然な衝動だから理解しろと。……結構ゲスいと思う。身体目当てみたいだし、シオンが怒って当然だ」
「そうか、それで恋人や別腹、と」
ネンゲルの解説で、ストン、とシオンの言動の全てが腑に落ちた。
シオンからしたら、ヴァイスはとんでもなく不埒な男だったわけだ。
それでは”浮気男”と罵られてもやむを得ない。
理解した。だが、理解したところで、これはーー
「それは、弁解の機会は……」
「済まない、ヴァイス。シオンに全てを明かす手もあるが、リスクが高い。リラの出生は」
「分かっている。2人だけの秘密だ。原因を突き止めてくれて助かった」
椅子から立ち上がり、謝罪をしようとしたネンゲルをヴァイスは制した。
リラの出自の秘密は守る。リラを引き取り、自分の子として育てると決めた時からの約束だ。
契約は交わしていないが、違える気はない。
「ありがとう。だが、シオンの誤解は……」
「原因が分かれば自ずと解は導かれる。シオンを納得させるだけの時が要る。それまで俺が距離を置く方法を工夫すればいいだけだ。初めからその約束だった。兄上が気に病む必要はない」
ネンゲルはエルデガリアの太陽となる男だ。兄弟で手を携えこの国を守るのだと誓った。
腫れ物だった自分に、ネンゲルは重要な役割を与えてくれた。
兄の信頼に応えたい。
「私のほうが兄なのに、ヴァイスに甘えてばかりで本当に済まない。取り成せるか分からないが、私も仲裁に入ろう。私たちもサロンに顔を出そうか」
ネンゲルは申し訳なさそうに肩を落としつつ、提案した。
「それは助かる。シオンに会うためだと、今の俺は会場に近づけない。それにシオンはリラを連れてきているからちょうど良い。リラの顔が見られる」
「え? ヴェーシュのサロンにリラを連れてくるのか? まだ言葉も喋れないだろうに、何のために?」
「義姉上がそうするようにと申し出られたそうだ。リラにも会いたかったのでは?」
ネンゲルは首を傾げる。
ヴェーシュとネンゲルは夫婦なのだから、把握していると思っていた。
「できるだけ早く顔を出したほうが良さそうだな。彼女は時々突飛な行動を取るから」
ネンゲルはそう苦笑すると、侍従を呼びつけるためにベルを鳴らした。
ヴァイスには、苦笑の裏事情は分からないので見守った。
シオンを訪ねる行動を制限されている今、ネンゲルの同行としての名目ができるだけで有難い。
ネンゲルは急速に声のトーンを落とすと、項垂れた。
ヴァイスは何もかも分からず、当惑するばかりだ。
「話が見えない。俺が浮気したわけでもなくて、何故兄上が?」
「そのシオンの怒りは当然だよ」
ネンゲルは執務椅子を滑らせて、ヴァイスに向き合った。
窓から差し込む朝の光が反射して、その緑の瞳がエメラルドのように煌めいて見える。
「シオンから見たヴァイスはリラの父親だ。二月前に、結ばれなかった恋人と死別している。普通なら喪に服す期間だし、恋人を愛していればいるほど、その喪失感は大きい」
ヴァイスは素直に同意した。今し方ネンゲルに対して共感したばかりだから、理解できる。
「それなのに、異国から呼び寄せた女性に臆面もなく言い寄り、口説こうとしている。しかも、それが男の自然な衝動だから理解しろと。……結構ゲスいと思う。身体目当てみたいだし、シオンが怒って当然だ」
「そうか、それで恋人や別腹、と」
ネンゲルの解説で、ストン、とシオンの言動の全てが腑に落ちた。
シオンからしたら、ヴァイスはとんでもなく不埒な男だったわけだ。
それでは”浮気男”と罵られてもやむを得ない。
理解した。だが、理解したところで、これはーー
「それは、弁解の機会は……」
「済まない、ヴァイス。シオンに全てを明かす手もあるが、リスクが高い。リラの出生は」
「分かっている。2人だけの秘密だ。原因を突き止めてくれて助かった」
椅子から立ち上がり、謝罪をしようとしたネンゲルをヴァイスは制した。
リラの出自の秘密は守る。リラを引き取り、自分の子として育てると決めた時からの約束だ。
契約は交わしていないが、違える気はない。
「ありがとう。だが、シオンの誤解は……」
「原因が分かれば自ずと解は導かれる。シオンを納得させるだけの時が要る。それまで俺が距離を置く方法を工夫すればいいだけだ。初めからその約束だった。兄上が気に病む必要はない」
ネンゲルはエルデガリアの太陽となる男だ。兄弟で手を携えこの国を守るのだと誓った。
腫れ物だった自分に、ネンゲルは重要な役割を与えてくれた。
兄の信頼に応えたい。
「私のほうが兄なのに、ヴァイスに甘えてばかりで本当に済まない。取り成せるか分からないが、私も仲裁に入ろう。私たちもサロンに顔を出そうか」
ネンゲルは申し訳なさそうに肩を落としつつ、提案した。
「それは助かる。シオンに会うためだと、今の俺は会場に近づけない。それにシオンはリラを連れてきているからちょうど良い。リラの顔が見られる」
「え? ヴェーシュのサロンにリラを連れてくるのか? まだ言葉も喋れないだろうに、何のために?」
「義姉上がそうするようにと申し出られたそうだ。リラにも会いたかったのでは?」
ネンゲルは首を傾げる。
ヴェーシュとネンゲルは夫婦なのだから、把握していると思っていた。
「できるだけ早く顔を出したほうが良さそうだな。彼女は時々突飛な行動を取るから」
ネンゲルはそう苦笑すると、侍従を呼びつけるためにベルを鳴らした。
ヴァイスには、苦笑の裏事情は分からないので見守った。
シオンを訪ねる行動を制限されている今、ネンゲルの同行としての名目ができるだけで有難い。
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