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新妻になりました
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ヴァイスは、現エルデガリア国王ツィノーバーと、側妃リモーネの間に生まれた第2王子だった。
魔力を持たない母リモーネは、なす術もなく出産と同時に命を落とした。
生まれつきに桁外れの魔力を備えていたので、幼い頃は力を、良く暴走させた。
故に誰もがヴァイスに近づきたがらない。
王室は高名な魔術士を師につけた。
だが、魔術士は誰よりもその力を理解しており、そのために誰よりも強くヴァイスを恐れた。
幸い、ヴァイスは才にも恵まれており、大した教えがなくとも自ら魔術を習得した。
一人きりの環境を苦痛に感じない体質も、ヴァイスにとっては功を奏したようだ。
孤独の時間を埋めるように、書物と向き合い魔術に没頭した。
自ら魔力を制御できるようになると、周囲は段階を踏んでヴァイスとの接触を試みるようになった。
魔術ばかりの日常に、剣術の修練が追加された。
その時初めて、自分には兄がいるのだと自覚した。
母親の違う、1歳上の王子。
ヴァイスの母は他界したが、父王ツィノーバーと、正妃シャルラッハ。その息子のネンゲル。
その3人が家族なのだと理解した。
家族は尊ぶべきものだと教えられた。
王族といえど、王子は国王の臣下であり、臣下たる忠義を持って国王に尽くすべし。
また王家の人間にとっては、国の民も愛すべき家族であると。
ヴァイスの余りある才と魔力はエルデガリアの繁栄のために役立てるべく、天から与えられた恩恵だ。
王と国の安寧のために互いに力を併せよう、と兄ネンゲルはヴァイスに説いた。
その頃には2人はすっかり打ち解けていて、ネンゲルの言葉はすんなりと耳に入り、いつしかネンゲルの思想はヴァイスの理想となっていた。
自分と、それ以外の人間。
白と黒しかないヴァイスの世界に色彩を与えてくれたのは、ネンゲルだけだった。
だから要請があれば、ヴァイスはいつでも戦線に向かう。
国家の繁栄のために、共に手を取り合える兄弟は2人しかいない。
「ヴァイス、済まないが手を貸してくれないか……? こんなこと、お前にしか頼めない」
だからある日、ネンゲルから依頼を持ちかけられて、ヴァイスは誇らしい気持ちになった。
ネンゲルは両親、臣下からの期待を一心に受けこの国の未来を担う人材だ。
そのネンゲルの頼りが、自分だけだなんて。
「昨晩、赤子が生まれた。私の子だ。魔力持ちで、母親は死んでしまった」
ネンゲルの妻、ヴェーシュが懐妊したとの報せは聞いていない。
ネンゲルの口ぶりから、私生児なのだと知れた。
ネンゲルは王太子の立場から、幼少の頃よりヴォルクス教皇の孫娘ヴェーシュと婚約関係にあり、昨年末に結婚した。
この縁組の背景には、王家の直系血族の魔力不足によるところが大きく関係している。
王国を築いた「はじまりの王」はヴォルクス神により魔力を授かったとされていた。
王家の正当性は魔術師の力量に拠るところが大きく、今や権威は揺らぎつつあった。
ヴァイスの功績は目覚ましいが、たった一人。それも一代限りの魔術師では正統性の維持は難しい。
そこでエルデガリアを支える片翼を担う、国教会と手を結ぶ形を取った。
教皇は孫娘のヴェーシュを、大層可愛がっていた。
私生児の存在が知れれば、王家と国教会、双方の関係に亀裂が走りかねない。
だからこそ、ネンゲルは秘密裏の解決策として、ヴァイスを頼った。
ヴァイスは暗黙のうちに、生涯独身だと予見されていた。
その上、社交性もなく独特の性質の持ち主なので、他者からの干渉を受けにくい。
ヴァイスにしても、他でもないネンゲルからの頼みを、断る理由などなかった。
即座に承諾し、ネンゲルの提案を受け入れた。
ただ一つ、自分でも予想だにしなかった感情が生まれた。
魔力を持たない母リモーネは、なす術もなく出産と同時に命を落とした。
生まれつきに桁外れの魔力を備えていたので、幼い頃は力を、良く暴走させた。
故に誰もがヴァイスに近づきたがらない。
王室は高名な魔術士を師につけた。
だが、魔術士は誰よりもその力を理解しており、そのために誰よりも強くヴァイスを恐れた。
幸い、ヴァイスは才にも恵まれており、大した教えがなくとも自ら魔術を習得した。
一人きりの環境を苦痛に感じない体質も、ヴァイスにとっては功を奏したようだ。
孤独の時間を埋めるように、書物と向き合い魔術に没頭した。
自ら魔力を制御できるようになると、周囲は段階を踏んでヴァイスとの接触を試みるようになった。
魔術ばかりの日常に、剣術の修練が追加された。
その時初めて、自分には兄がいるのだと自覚した。
母親の違う、1歳上の王子。
ヴァイスの母は他界したが、父王ツィノーバーと、正妃シャルラッハ。その息子のネンゲル。
その3人が家族なのだと理解した。
家族は尊ぶべきものだと教えられた。
王族といえど、王子は国王の臣下であり、臣下たる忠義を持って国王に尽くすべし。
また王家の人間にとっては、国の民も愛すべき家族であると。
ヴァイスの余りある才と魔力はエルデガリアの繁栄のために役立てるべく、天から与えられた恩恵だ。
王と国の安寧のために互いに力を併せよう、と兄ネンゲルはヴァイスに説いた。
その頃には2人はすっかり打ち解けていて、ネンゲルの言葉はすんなりと耳に入り、いつしかネンゲルの思想はヴァイスの理想となっていた。
自分と、それ以外の人間。
白と黒しかないヴァイスの世界に色彩を与えてくれたのは、ネンゲルだけだった。
だから要請があれば、ヴァイスはいつでも戦線に向かう。
国家の繁栄のために、共に手を取り合える兄弟は2人しかいない。
「ヴァイス、済まないが手を貸してくれないか……? こんなこと、お前にしか頼めない」
だからある日、ネンゲルから依頼を持ちかけられて、ヴァイスは誇らしい気持ちになった。
ネンゲルは両親、臣下からの期待を一心に受けこの国の未来を担う人材だ。
そのネンゲルの頼りが、自分だけだなんて。
「昨晩、赤子が生まれた。私の子だ。魔力持ちで、母親は死んでしまった」
ネンゲルの妻、ヴェーシュが懐妊したとの報せは聞いていない。
ネンゲルの口ぶりから、私生児なのだと知れた。
ネンゲルは王太子の立場から、幼少の頃よりヴォルクス教皇の孫娘ヴェーシュと婚約関係にあり、昨年末に結婚した。
この縁組の背景には、王家の直系血族の魔力不足によるところが大きく関係している。
王国を築いた「はじまりの王」はヴォルクス神により魔力を授かったとされていた。
王家の正当性は魔術師の力量に拠るところが大きく、今や権威は揺らぎつつあった。
ヴァイスの功績は目覚ましいが、たった一人。それも一代限りの魔術師では正統性の維持は難しい。
そこでエルデガリアを支える片翼を担う、国教会と手を結ぶ形を取った。
教皇は孫娘のヴェーシュを、大層可愛がっていた。
私生児の存在が知れれば、王家と国教会、双方の関係に亀裂が走りかねない。
だからこそ、ネンゲルは秘密裏の解決策として、ヴァイスを頼った。
ヴァイスは暗黙のうちに、生涯独身だと予見されていた。
その上、社交性もなく独特の性質の持ち主なので、他者からの干渉を受けにくい。
ヴァイスにしても、他でもないネンゲルからの頼みを、断る理由などなかった。
即座に承諾し、ネンゲルの提案を受け入れた。
ただ一つ、自分でも予想だにしなかった感情が生まれた。
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