サレカノでしたが、異世界召喚されて愛され妻になります〜子連れ王子はチートな魔術士と契約結婚をお望みです〜

きぬがやあきら

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ようこそエルデガリアへ

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「ふくくくっ、随分入れ込んだな。ヴァイスにしては良く頑張ったが、女性にそのように迫っても逆効果だぞ。それではお前を恐れるだけだ」

 ネンゲルの笑い声にヴァイスはムッと体を起こした。

「シオン姫、至らぬ弟をどうか許してやって欲しい。話を補足すると、こんな感じだ」

 ネンゲルは簡潔に、ヴァイスの話に大分肉付けをしながら、この国の歴史を語り出した。

 ここ、エルデガリアは、豊かな自然と文化を持つ王国だ。

 始まりは始祖神ヴォルクスが魔力を授けた「はじまりの王」の統治するところから始まった。

 始祖神の祝福を受けた王の血は子孫へと受け継がれ、美しい湖や森、気候に恵まれた豊かな国となった。

 時を経る中で、王家は血を分け、魔力の恩恵は国民にも及んだ。

 魔法は国に計り知れない発展と利益をもたらした。魔物の侵略を防ぎ、安全に暮らせると異国からの移民も未だ絶えない。

 ただし、その恩恵は万能ではない。

 魔力の保有は個人差が大きく、血筋であっても魔力を持たない者もある。

「尤も厄介な魔力の継承は隔世遺伝だ。持たざる者が、魔力持ちの子を授かると母体はその魔力に耐えられず、命を削る。魔力量の乖離が少なければ負担は少ないが、多ければ最悪、出産で命を落としてしまう者もいる」

「そんな……!」

 好奇心旺盛な白音は興味深くネンゲルの話に耳を傾けていたが、深刻な内容に思わず口元を手で覆った。

 いくら医療が発達している日本でも、出産は命懸けだ。

 しかし、赤子の魔力に耐えられず、愛しい我が子を抱くことなく母が世を去るなど、なんたる悲劇か。

「そこで、一つ問題が生まれる。この、ヴァイスはこう見えてエルデガリアの建国以来、最も偉大な魔術師と呼ばれている。実際、ヴァイスがいなければこの国の均衡は崩れていただろう。歴史上類を見ないほど、膨大な魔力量の持ち主だ。それ故に、異世界からシオン姫を召喚するなどという荒技をやってのけた。だから……わかるかな、ヴァイスの妻になる人には、それなりの器が必要になる。の女性には荷が重すぎるんだ」

 そうか。大きな魔力を持つ者の血を受け継ぐ赤子の魔力もまた、膨大なものかもしれない。

 そうなれば、母体は出産で命を落とす可能性が高い。

「その通りだ。呑み込みが早くて助かる。つまりヴァイスの子を授かったら死ぬんじゃない? と、婦女子の誰もが尻込みしているのが現状だ。そこで、異世界から女性を呼ぶことにした。ヴァイスはシオン姫を気に入ったようだし、これはもう、運命だ」

 意気揚々としたネンゲルの言葉に、白音は憤慨した。

「ひ、ひどい! 結婚なんてしませんけど、それじゃ異世界人の私は死んでもいいって思ってるんですか?」
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