サレカノでしたが、異世界召喚されて愛され妻になります〜子連れ王子はチートな魔術士と契約結婚をお望みです〜

きぬがやあきら

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ようこそエルデガリアへ

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「異世界というのはだな、そもそも、実在しない概念だ。行って還った者もいないし、存在自体の証明ができない。だから、通常異世界へ行く方法は存在しないのだが、稀に次元の歪みが起きて、別世界と繋がってしまうことがある。たまに居るだろう。何処からともなく現れた者や、突然姿を消してしまう者が」

 いるかもしれない。日本では神隠しとか言われるアレだろうか。

「通常、次元の歪みは偶然の産物だと言われている。だけど、今回それを無理に繋げてみた。俺が、シオンに会いたかったから」

 ヴァイスは曖昧に頷いた白音に向かい、急に熱の籠もった視線を向けてきた。

 白音は間近で見つめられ、頬が熱くなるのを感じた。

「だからシオン、俺と結婚してくれ。俺にはシオンが必要なんだ」

 ヴァイスはいつの間にか距離をぐっと詰めて、片手を白音の腰に回した。

 もう一方の手は白音の手首を掴んでいる。

「ちょっと、近っ……え? 今何て? ”けっ”?」

「ああ。結婚して欲しい、シオン。届は隣室にあるから、すぐにサインできる。許可はネルゲンが下す。挙式も城の聖殿に神官が詰めているから、書類にサインしたらすぐできる。指輪はこれから誂えよう」

 白音の脳がフリーズする間にも、ヴァイスはどんどん距離を詰めて来る。

 美形の圧に、白音は仰け反って逃れようとした。

「そんなこと、急に言われても! ちょっと、離れてください」

「何故? 夫婦は常に共に過ごすものだと聞いた。それに、シオンの傍は心地良い」

 傍とは厳密にどんな距離感だろう?

 と素朴な疑問が頭に浮かんだ。しかし、そもそも異世界で言葉の意味が詳細に通じているのかも怪しい。

 精一杯に腕を突っ張っても、ヴァイスの拘束は緩まない。

「シオンは嫌か? 俺にとってシオンの魔力は、とても心地良い。シオンはどうだろう、俺の魔力にも触れてみてくれ」

 それどころか握った手を自分の頬に触れさせてきて、白音は益々戸惑った。

(ひゃぁぁ)

 手触りは絹のように滑らかだ。

 頬は冷んやりとしているのに、触れた指先から熱が移る。

 急に血流が活発になったかのように、指の先からジンジンと痺れるような感覚が流れ込む。

「どう?」

 美形のどアップも心臓に悪い。

 しかも、鼻同士が触れ合いそうなほどの至近距離での囁きだ。

 やや少年らしさの残る顔立ちなのに、妙な色気まであって、単に吐息がかかっただけなのに腰砕けになりそうだ。

「か……顔が近いです! 離れて下さい!」

 顔をそむけて何とか逃れるが、視線はヴァイスを追いかけてしまう。

 白音は自分が赤面している自覚があった。

 ーーだって、この美貌だ。

 こんな綺麗な人に迫られたら、平静を保てる女性はいない気がする。
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