捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら

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 エミリアが手を出せずにいると、エドワードが先にプティ・フールの皿をテーブルに置いた。

「え、今ですか?」

 エミリアは驚いて聞き返すと、エドワードは至極当然のように頷く。

 改めて見回せば、広間には楽団が待機している。

 他の客人も、それぞれのパートナーと共に広間の中央へ移動していた。

「さあ、行こう」

 エドワードはエミリアの手を取り、広間の中央へエスコートする。

 2人が踊り始めると、広間は一層華やかな空気に包まれた。

 楽団の奏でる音楽に合わせ、ゆったりとしたステップを踏む。

(わ……楽しい)

 予想以上にダンスが上手なエドワードにリードされながら、エミリアはあっという間に夢中になる。

 広間に集う人々も、エドワードとエミリアのダンスを微笑ましく見守っていた。

「エミリアはダンスも上手だね。この間、ダンスが好きだと話していたのは本当だったんだ」

「エドワード様も、興味がないなんて思えないくらいお上手ですね」

「エミリアとだからだよ」

 エドワードはエミリアの手の甲に、そっと口づけを落とす。

「君の怪我が治ったら、正式に結婚を発表しよう。諸国の賓客を招いて、盛大に挙式を執り行う」

「私は、エドワード様の傍にいられるなら、どんな形式でも構いません」

 エミリアはエドワードの瞳を覗き込む。その目が嬉しそうに細められた。

「ミモザの花が街道を埋め尽くす頃、君は……私の妻だ」

 急に、エドワードの瞳が熱を帯びた。

 エドワードはエミリアの腰に回した手に、ぎゅっと力を込める。

 そのつもりでプロポーズを受けたのに、いざその時を思い描くと、どうにも心がむず痒くなる。

 この人の妻になる未来には、もう何の躊躇いもない。

 しかし、その時が来ればこの胸のざわめきは収まるのだろうか。

 この人に何もかも、捧げる勇気が得られるだろうか。

 愛していると自覚すればするほど、エドワードを真っすぐに見つめ返すことができない。

 返事の代わりにエミリアは、精一杯の微笑みを浮かべた。エドワードの胸元に頬を寄せる。

(私は、この方が……)

 曲調がゆったりとしたテンポに変わる。

 エミリアは甘い胸の疼きを覚えていた。

(……ミモザの花が満開になったら……)

 エミリアは、その日を夢に見る。うっとりと瞼を閉じた。

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感想 4

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みんなの感想(4件)

かずさ
2023.12.17 かずさ

え、え、エドワードはそもそもどうするつもりだったのか。協議離婚言い出したのはエミリアだし、両親にもエミリアの素性隠して、ばれたらえらい慌ててるし。これほど薄っぺらい『大丈夫、守る』もないですよね。びっくりするくらい口だけ。
フィリップも謝るとか言った次の瞬間『不感症』呼ばわりで、しばらく貸し出しますよって?
王妃ものっけから単なる嫁いびり、王は空気。息子がつれてきたのが既婚者だと知って、最初にするのが他の女の斡旋とか。いやいや、国際問題レベルにどんな対応の仕方ですか。
面白くなりそうだったから、凄く残念です

2024.01.02 きぬがやあきら

コメントをありがとうございます。
お気に召して頂けず、残念ですが、今後の作品作りに活かしていきますね。

解除
hiyo
2023.12.12 hiyo

とても楽しく最後まで読ませて頂きました。

その後無事に子供が生まれたのかどうかだけが気になります。
読ませて頂いて有難うございました。

2023.12.13 きぬがやあきら

こちらこそ、ありがとうございます!
お読みいただいた上にご感想までお寄せくださって、嬉しいです。

冗長になりそうなので割愛しましたが、エドワードは尽くすタイプなので、きっと授かるだろうな……との見方が濃厚です。
ありがとうございました!

解除
るー
2023.11.01 るー

内容的には面白いと思う
恋に落ちる部分は心情あらわに、ゆっくり育んで行く情景は素敵でしたが

後半の「ざまぁ」部分のテンポが悪い。
サスペンスでも犯行を曝露する時は10分程度なのに、、、
なんだがグチャグチャと引き伸ばして

んーーーって感じでした

2023.11.01 きぬがやあきら

最後まで読んでいただいた上、ご感想までありがとうございます。
後半のテンポについて、ご指摘をありがとうございます。
自分では気づきにくく、今後の作品作りの参考にさせて頂きますね。

解除

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