捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら

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新しい世界

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 エドワードは〝大丈夫”と話していたが、お茶会のみならず、国を跨いで騒動に巻き込んでしまった。

 その上、今度は本当にエドワードと結婚の許しを得る相手となって、どう接していいのか分からない。

 ソーニャは覆った口元を、そっとエミリアの耳へ寄せる。

「貴女を再び危険な場所へ追いやったのは私だわ。ごめんなさい、エミリア。私を許して……」

 謝罪を耳に、エミリアはハッとする。

 声を震わせ、ソーニャは落涙していた。

「そんな、王后陛下! 勿体ないお言葉でございます! どうか、お顔を上げてください」

 エドワードからエミリアを引き離そうと、他愛のない画策をしたヴァルデリア王妃。

 それが急にエミリアに謝罪をするなんて、不可解な展開だったが、どうやらソーニャの言葉に偽りはないようだ。

 あんな風に子供のような悪戯をなさるくらい、きっと素直な方なのだろう。

 でなければ王妃が息子の婚約者候補に、謝罪を述べるなど有り得ない。

「さぞ辛かったでしょう。でも、もう大丈夫よ。これからは私たちが貴女を守るわ」

「ありがとうございます……」

 予想を遥かに上回る歓迎の言葉に、エミリアも声を詰まらせた。

 するとソーニャは腕を広げて、エミリアを抱きしめてくれる。

(……温かい)

 エミリアに触れたソーニャの掌には、温もりがあった。そ

 れは彼女が人の親だからだろうか。

 ソーニャはエミリアの背中を、とんとんと優しく叩く。

「貴女が我が国に戻ってきてくれて嬉しいわ」

 エミリアは優しい抱擁に、心から安堵する。

「母上、少々挨拶が長すぎるのでは? 皆の目がありますのに」

「あら、嫉妬しているの? いいでしょう、貴方は散々しているのだから」

「エミリアはまだ、本調子ではないので、私だって遠慮しているんです。ですから……」

 エドワードがソーニャとエミリアの間に割って入ると、どこからともなく失笑を買った。

 皆、場を弁えている。だが、気兼ねないやり取りに和やかな雰囲気になる。

「母と子で嫁を奪い合うとは、これは大変結構じゃないか。王家の行く末も、安泰というものだ」

 ロズウェルドは、愉快そうに大笑した。

「さて、立ち話もなんだし、エミリアの帰還を祝って夕食会を開くとしよう」

 ソーニャがエミリアの抱擁を解くと、またどこからともなく拍手が上がった。





 ***




 その夜、王宮の広間で、晩餐会が開かれた。

 宴はエミリアが想像していた以上に華やかだった。

 王家の人々だけではなく、国内の名だたる貴族たちも出席してくれた。

 心を尽くした、祝いの言の葉の数々が2人を包む。

 中でも、ヴォルティア王国での事件を聞いた人々は、エミリアを労わってくれた。
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