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新しい世界

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「ああ、皆、出迎えご苦労」

 エドワードが声を掛けると、民は口々にヴァルデリアを讃えた。

「ありがとうございます!ご無事で何よりです!」

「お帰りをお待ちしておりました」

 小さな子どもから老人までいるようで、口々に歓声が上がる。

 まるでお祭り騒ぎのような歓迎だ。

(すごい熱気だわ……)

 エミリアは呆気にとられた。

 人々の熱意に圧倒されるが、同時に嬉しくもある。

 エドワードの帰還を喜ぶ民がいるということは、彼が慕われている証拠だ。

 彼は未来のヴァルデリアの王なのだと感じる。

「エミリア、行こう」

 エドワードはエミリアに声を掛けると、そっと手を引いて歩き出した。

 いつの間にか周囲には側近の騎士達がおり、馬車や荷物を引き受けている。

(なんて気が利くのかしら)

 王室に仕える騎士としては当然かもしれないが、感謝の気持ちでいっぱいになる。

 気後れしていたのが嘘のように、エミリアの心は晴れやかだった。

 王宮へ続く目抜き通りを歩き、大きな門をくぐると、広々とした庭園が広がる。

(懐かしい……)

 宮殿に一歩足を踏み入れた途端、懐かしい記憶が蘇る。

 つい先日のことなのに、遥か昔のことのようにも感じられる。

 かつて、エミリアもこの場所を歩いたことがあるのだ。

 星空の回廊や薔薇の迷路の景色をふんわり頭に想い起こすと、今度は庭園の持ち主が出迎えてくれた。

「国王陛下、それに王后陛下……!」

 エミリアは息を呑む。

 慌ててその場で礼を取る。

「父上、母上。お二人まで、迎えに来てくださったのですか」

「こちらから拝謁申し上げるところを、大変恐れ入ります――」

「ああ、畏まらなくていい」

 国王は、手を振って遮ると、穏やかに微笑んだ。

「そなたたちの帰還を皆待ちかねていた。……さ、顔を見せておくれ」

 エミリアとエドワードが顔を上げるのを確認すると、国王夫妻は揃って歩み寄ってくる。

「報告は聞いていたが、2人の息災な姿を見て安心したよ。エドワード、よくやった。さすがは私の息子だ」

「ありがとうございます、父上」

 エドワードは父王と握手を交わす。

 2人は言葉を詰まらせた。どちらからともなく抱き合った。

 王妃も何か感じることがあったのだろう。

 うっすらと涙ぐんでいるように見える。

(……あ)

 家族の温かい愛情を微笑ましく見守っていると、ソーニャと視線がかち合う。

「失礼致しました、王后陛下。この度は……」

 エミリアが顔を伏せると、コホン、と空咳が聞こえる。

「貴女、緊張しすぎよ。……お顔を上げて。私も聞きましたわ、大変な目に遭われたと」

「はい……」

 エミリアは恐る恐る顔を上げた。

 ソーニャは開いた扇で口元を覆っている。

 静々とエミリアの傍まで接近した。

「心無い人たちに囲まれ、暴力まで……本当に、無事でよかったわ」

 エミリアはヴァルデリアを去る前に、お茶会でソーニャに一杯食わせて、その後初めての対面だ。


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