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新しい世界
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「ではいずれ、エミリア様がヴァルデリアのお妃さまになってくださるんですね! 私も嬉しいです」
マリエは、心の底から嬉しそうに言った。
(そうだ、それも考えなければ……)
エドワードがエミリアを妻に迎えるということは、ヴァルデリアの王妃を迎えるということだ。
エミリアは責任感が強い。あまり負担を背負わせたくないが、既に賢妃として名高いエミリアだ。
周りは嫌でも期待する。
無用な重圧は可能な限り排除したい。
「ありがとう。皆様が認めて下されば、そうなるかもしれないわね」
エミリアは、マリエに優しく微笑んだ。
「これは、余計な心配を。すみません、僕が軽率でした」
「いえ、直視すべき、大切な問題よ。リチャード様は、応援してくださるんでしょう?」
エミリアはもう、プロポーズの余韻を振り切っていた。
恥じらう乙女の表情が消え、女王然とした雰囲気を取り戻していた。
「もちろんです!」
リチャードは姿勢を正して声を上げたが、エドワードは内心、面白くない。
もう少し、エミリアの照れた表情を見ていたかった。
「ですが、僕はエドワード様の妻になる女性はエミリア様の他にないと考えております。プロポーズをお受けになる決心をされたのなら、僕のことは今後、リチャードとお呼びください」
エミリアは、くすりと笑みを零した。
「では、そうさせてもらうわ。リチャード、至らない私を、どうか陰から支えてちょうだい」
「エミリア、貴女は十分に頑張っている。これ以上頑張ったら、体を壊してしまうよ」
エドワードは堪らず口を挟んだ。
(私だけのものであるはずの彼女が、他の男の名を呼ぶなんて)
二人の距離が、ぐっと近づいた気がして、エドワードは焦燥感に苛まれた。
リチャードとエミリアが親しくするのは一向に構わない。けれど、まだ早すぎる。
愛と信頼は、遠くて近い。どうしても負けたくないと思ってしまうのは男の性だろうか。
「エドワード様、そんなに怖い顔をしないでください。エミリア様は臣下としてリチャード様を信頼しているだけですよ」
見かねたマリエが、助け舟を出してくれた。
「分かっている」
エドワードは、深く息を吐いた。
(分かってはいるが……)
エミリアが自分以外の男に関心を持つのは、どうしても面白くない。
そんなエドワードの心を見透かしたように、マリエは続ける。
「先ずは腹ごしらえをしましょう! お料理が冷めてしまいます。さあ、エドワード様、エミリア様にあーん、してあげてください」
「え……」
エドワードは、目を瞬かせた。
マリエは、心の底から嬉しそうに言った。
(そうだ、それも考えなければ……)
エドワードがエミリアを妻に迎えるということは、ヴァルデリアの王妃を迎えるということだ。
エミリアは責任感が強い。あまり負担を背負わせたくないが、既に賢妃として名高いエミリアだ。
周りは嫌でも期待する。
無用な重圧は可能な限り排除したい。
「ありがとう。皆様が認めて下されば、そうなるかもしれないわね」
エミリアは、マリエに優しく微笑んだ。
「これは、余計な心配を。すみません、僕が軽率でした」
「いえ、直視すべき、大切な問題よ。リチャード様は、応援してくださるんでしょう?」
エミリアはもう、プロポーズの余韻を振り切っていた。
恥じらう乙女の表情が消え、女王然とした雰囲気を取り戻していた。
「もちろんです!」
リチャードは姿勢を正して声を上げたが、エドワードは内心、面白くない。
もう少し、エミリアの照れた表情を見ていたかった。
「ですが、僕はエドワード様の妻になる女性はエミリア様の他にないと考えております。プロポーズをお受けになる決心をされたのなら、僕のことは今後、リチャードとお呼びください」
エミリアは、くすりと笑みを零した。
「では、そうさせてもらうわ。リチャード、至らない私を、どうか陰から支えてちょうだい」
「エミリア、貴女は十分に頑張っている。これ以上頑張ったら、体を壊してしまうよ」
エドワードは堪らず口を挟んだ。
(私だけのものであるはずの彼女が、他の男の名を呼ぶなんて)
二人の距離が、ぐっと近づいた気がして、エドワードは焦燥感に苛まれた。
リチャードとエミリアが親しくするのは一向に構わない。けれど、まだ早すぎる。
愛と信頼は、遠くて近い。どうしても負けたくないと思ってしまうのは男の性だろうか。
「エドワード様、そんなに怖い顔をしないでください。エミリア様は臣下としてリチャード様を信頼しているだけですよ」
見かねたマリエが、助け舟を出してくれた。
「分かっている」
エドワードは、深く息を吐いた。
(分かってはいるが……)
エミリアが自分以外の男に関心を持つのは、どうしても面白くない。
そんなエドワードの心を見透かしたように、マリエは続ける。
「先ずは腹ごしらえをしましょう! お料理が冷めてしまいます。さあ、エドワード様、エミリア様にあーん、してあげてください」
「え……」
エドワードは、目を瞬かせた。
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