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意地

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 そんなことを考えているうちに、部屋のドアをノックする音が聞こえた。

「おはようございます。お早いお目覚めですね」

 部屋に入って来たのは、ウィルマだった。

「……おはよう。どうして貴女がここに……?」

 エミリアは瞠目する。

「朝のお散歩でございます。エミリア様、お時間があればお付き合い頂けませんか?」

 そう問いかけながらも、ウィルマは足早に部屋を横切る。

 侍女を遮り、窓を開け放った。

「どういった風の吹き回しかしら。私が自由に出回れないと知っていて、わざといらっしゃったの?」

「いえ。私は何も聞かされない立場ですから、エミリア様の現状はわかりようがありませんわ。私が勝手にフィリップ様と面会するのはまずいようですけれど、エミリア様に会うなとは命じられていなかったので」

 ウィルマはエミリアを振り返り、意味ありげに微笑む。

(本当に……油断も隙もない人)

「私が喜んで応じるとは思っていないでしょう? 何が目的ですか?」

「目的など……。強いて言うなら、エミリア様と仲良くなりたいだけですわ」

 エミリアとウィルマの二人を、侍女は不安そうな目で交互に見やった。

「ご冗談でしょう? だって、貴女は……」

「どうかあの晩の非礼をお許しいただけませんか? まさかここまで来て、上皇陛下たちがエミリア様を手放さないとは、予想外だったんです。……お願いですから、散歩にお付き合いくださいよ」

 ウィルマは終始砕けた口調だった。

 最早エミリアの前で猫を被る気はないらしい。

「わかりました。私はサンフラン嬢と散歩に参ります。もし、心配ならついていらっしゃい」

「でしたら、どうぞお着替えください。私は外に出ておりますから」

 ウィルマはエミリアの着替えを待つと、先に外へ出た。

 見張りの侍女はウィルマが先に出たことで、安堵の表情を浮かべる。

 何の用事かわからない。

 だが、間もなくこの国を去るエミリアだ。一度くらい誘いに応じてやっても良い。

(あの娘の思い通りになるなんて癪だけれど、もう、フィリップ様を奪い合う気もないのだし……)

 手伝いを得て、エミリアは着替えを済ませた。

 外で待つ、ウィルマに声をかける。

 侍女の案内で、二人は並んで森へ足を踏み入れた。

 侍女は報告へ席を外すよりも、エミリアの付き添いを選んだようだ。

「あまり奥には行かないで。貴女が何を企んでいるのか知らないけれど、そこまでは付き合えないわ」
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