捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら

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「力になれなかったなんて。エドワード様のお母様に無礼を働いたんですよ、私は」

「エミリアの切り返しはベストだった。これで母もエミリアに一目置くだろう。私はね、自分の感情で、エミリアの役に立ちたかったんだよ。それができずに悔しいんだ。私の愛する人に、そんな身勝手を働かれて気付きもしないなんて」

「また、ご自分を悪く仰る」

 エミリアは、エドワードの拳に、そっと触れた。

「私は充分助けられました。もし私をお咎めにならないなら、エドワード様も気になさらないでください」

「うーん……」

 エドワードは唸っただけだった。

 エミリアにとっては本心からの言葉でも、エドワードに効果はないらしい。

 エミリアも、しばし思案する。

「では……、代わりと言っては何ですが、お願いをしてもよろしいですか?」

「何だい?」

 エドワードは驚くべきレスポンスで聞き返した。どことなく嬉しそうに見えなくもない。

「陛下……エドワード様のご両親についてお教えください。お好きな物や、お嫌いなもの……私、何も知りませんから。お近づきになれるよう、努力します」

「ああ! エミリア、貴女はなんて……!」

 エドワードは、感極まってエミリアを抱きしめた。さらに強く引き寄せられて、苦しいくらいだ。

「そんなの、お願いの内に入らない。もっと我儘を言ってくれていいんだ。他にはないのか?」

 エミリアはエドワードの腕の中で身じろいだ。

 胸を押して、距離を取って……頭の一番にあった、大きいほうの願いを告げる。

「では、もう一つ。私を……ヴォルティアに連れて行ってください」

 見上げたエドワードは、大きく目を見開いた。

「その前に、書簡もお願いします。私……エミリア・ヴォルティアは廃妃を望んでいると。正式に離婚を成立させるため、私はもう一度ヴォルティアへ行かねばなりません」

 エミリアは、より、困難な要求を突き付けていると自覚していた。

 しかし、今のエミリアの状態は中途半端で、ソーニャ王妃の嫌煙は当然の反応だった。

 ヴァルデリア王子に、ヴォルティア王妃略奪の罪を着せてはならない。

 そのためには、離婚を成立させる必要があった。

 離婚が成立しても、問題は山積みの身の上だが、それでようやくエミリアは個人に戻れる。

「エミリア、でもそれは……また、ヴォルティア王に会うのだろう」

 エドワードは言葉を濁した。

「そうですね、お互い代理人で良いという事になれば別ですが、私の場合は、先方が引継ぎしたい事項もあると思いますので……」

「やはりまだ、会いたいのか? ヴォルティア王に……」

 神妙な面持ちのエドワードに、エミリアはぷっと噴き出した。

 なんだ、そんな心配か。
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