捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら

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 今回はエミリアの居場所を作るためだから、足を運んだというのに。

(目当ての男の心情も配慮せず喧しくする女たちの、どこに躾が行き届いていると)

「はぁ」

 募った不快さが吐息に籠る。

 こんなバカげた席はいっそ、二度と設ける気が起きないようにぶち壊してしまおうか。

 破壊的衝動が込み上げ、エドワードはうんざりと息を吐いた。

 ぴりり、と身辺の空気が強張るのを感じ取り得たのは、ロザリーだけだった。

 ロザリーは初め主導を握ってエドワードの懐柔に打って出たが、次第にイヴリンとクロ―ディアの熱量に押されていた。

「あ……」

 エドワードと目が合うと、ロザリーは怯えた顔つきになる。

 イヴリンとクロ―ディアは変わらず、自身の主張を続けていた。

 だが、ロザリーが後退りを始めると、ようやく顔色を変える。






『不愉快だ。あなた方のような低俗な女たちとは二度と関わりたくない』






 偽らざる本心と共に、エミリアを連れて退出を決めたその時だった。

「まあ。皆さん素晴らしい特技をお持ちなのね。私、ダンスもお食事も大好き。エドワード様が独り占めするのは狡いわ」

 発言の直前に、ふんわりとした微笑が舞い込む。

「私も末席に加えて頂きたいわ。けれど、急に私が押し掛けてはご迷惑でしょうから……ねえ、エドワード様、パーティを主催してくださらない?」

 エミリアはエドワードの不機嫌を敏感に察し、緊張を解きほぐすように提案した。

「え……?」

 ロザリーは驚きに目を見開いている。イヴリンとクロ―ディアも同様だ。

 エドワードも驚いたが、意図を察して納得がいった。

 エドワードに対する明確なアプローチだ。見事な機転と言える。

「エミリアは不快ではないの? 貴女と関係のない部分を指摘されたりして」

「それは、エドワード様がそれだけ魅力的だからですわ。誰だって、ご自分お一人のものにしたいと願わずにいられないでしょう。けれど、エドワード様は普通の殿方とは違いますもの。私にだって、それくらいの分別はございます」

 エミリアは女性の甘え、拗ね、健気さの全てを表現した。

 エドワードは、思わずエミリアに触れたくなる。

 やはり、エミリアは突出している。

 エドワードを理解している上、信頼を寄せてくれていると感じられる。

「それに、エドワード様の大切な方とは、私も仲良くなりたいのです。お仲間に加えて頂けませんか」

「そういうことなら……。では、私から主催を申し出よう。そうすれば、皆公平になるな」

 エドワードは快諾した。いずれの令嬢も粗末に扱えば、王家への心象を悪くする。

 大切な方とはそう言う意味だ。

「ありがとうございます。皆さんの手料理やお菓子、楽しみですわ。私も何か、おもてなしを考えますね」

 エミリアが、花が綻ぶように微笑むと、周囲のご令嬢たちは、目を泳がせた。

 エミリアの素晴らしさは、仕草や口調の何処にも嫌味を含まないところだ。

 3人は、しばらくして観念したように頷く。
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