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演技

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 冷めた気分で見下ろした。

 やはり、どんな女に触れられても、どうとも心が動かない。

「わっ、私もっ」

 黙殺を容認と受け取ったのか、ロザリーを押しのけるようにして、唐突にイヴリンが進み出た。

「私も、殿下とお近づきになりたいです……」

 イヴリンは精一杯の勇気を振り絞って、エドワードの手を取った。

「まあ」

 ロザリーが目を丸くする。イヴリンは耳まで真っ赤に染めて目を瞑っていた。

 恐らくエドワードに自分をアピールする目的だろうが、イヴリンには不向きの方法だ。

 ソーニャからよほど強い圧力をかけられているのか? そう考えれば気の毒でもある。

 こんな茶番は早々に終わらせなければ。

「イヴリン、それに他のご令嬢がたも。私は君たちに興味はない」

 エドワードは手を振り払った。ロザリーとイヴリンは、目を見開いて固まった。

「エドワード様、それは少し冷たいのでは?」

 クロ―ディアが、思わず口を挟む。

「貴女たちこそ、母上の言いなりではないか」

 エドワードは呆れて指摘する。

「ソーニャ様は、私たちに良くしてくださっています。エドワード殿下とお近づきになりたいのは、自分の意思です。他の皆様も、同じかと」

 ロザリーが、クロ―ディアを庇うように反論する。

「その通りです。私も、ソーニャ様に頂いたきっかけを活かしたいだけです」

 イヴリンも、神妙に頷く。

 3人が揃ってエドワードを囲み、熱い視線を注いできた。

 にやり、とソーニャが満足げに微笑んでいる姿が、見えなくても想像できる。

「エドワード様、私はダンスが得意ですの。今度のパーティで、ご一緒に踊ってくださいませんか?」

「いいえ、エドワード様。私は料理が得意ですの。今度我が家のティーパーティにいらして? ご一緒にお茶会をしましょう」

「何をおっしゃいますの。私はお菓子作りも得意でしてよ? ぜひ私の焼いたケーキを食べて頂きたいわ」

「私が最初にお誘いしましたのよ。ですから、まずは……」

 3人が口々に誘いかけ、途端にその場は騒然とした。誰も譲らないので、収拾がつかない。

(――心底、面倒だな……)

 今まではこんな事態を避けるため、社交場を避け続けていたのに。

 喧騒を聞きながら、エドワードの心は次第に殺伐とした。

 王子という立場からか、どこへ出ても、顔も知らない女たちは着飾ってエドワードを取り囲む。

 甚だ迷惑だ。こちらは振りまきたくもない愛想を強要される。

 興味のない相手とは、何も話したいことなどない。

 誰が、どこの誰と恋をしたとかくっついたとか、どこのサロンで誰がどのデザイナーの服を着ているとか、彼女らの関心事はどうでもいい。
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