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クロ―ディアは苦笑する。
「私は一度だけ、エドワード様をパーティーでお見掛けしたことがあるんですの。お声を掛けようと思ったのですが、すぐにお帰りになってしまわれたので」
エドワードは招待客に挨拶をして回っていて、クローディアのことなど気に留めていなかったのだろう。
「それは申し訳ないことをした」
ぶっきらぼうに言い放って、会話を打ち切った。
それで引き下がるかと思いきや、クローディアは首を振る。
会話を続ける気らしい。
「いえ、構いませんわ。でも、これからはもっとお話する機会がございますもの」
彼女は微笑む。エドワードは、彼女の笑みの理由が分からずに困惑する。
エミリアの存在は昨日耳にしているはずなのに、先走った話だ。
しかし、会話を弾ませるつもりはないので、否定もしない。
「私はクローディアほど積極的になれないの。ごめんなさいね」
イヴリンが茶化す。
「私も、クローディアみたいに積極的になれないわ。ねえ、私もお話に加えてくださいな」
後ろに控えていたナーサリー男爵家の令嬢が、クローディアの袖を引いた。
名前は、ロザリー・ナーサリー。15歳。
まだ社交界デビューはしていないので、エドワードも会ったことはないが、彼女の存在は耳にしている。
広大な農業地域を領地に持つナーサリー男爵家は、国内の食料供給を担う大農家だ。
彼女の兄もまた、国王の覚えもめでたく、既に何人かの側室を抱えている。
しかし、ロザリーは社交界デビュー前だ。他の候補者たちと比べると、幾分見劣りしてしまう。
「ロザリーはね、エドワード様に会ってみたかっただけなんですよ」
イヴリンが笑う。
「ええ、でもイヴリン、貴女だって」
ロザリーも悪戯っぽく笑った。彼女たちは、なかなかに仲が良さそうだ。
「どう? 皆気立てが良く、躾けの行き届いた良家の子女よ。それに、どの子も美しいでしょう?」
ソーニャが、自慢げに語る。
確かに、どの娘も美貌の持ち主だ。
……一般的には。ソーニャの自慢げな様子から察するに、彼女たちはいわゆる「美女」というタイプなのだろう。
しかしこの子らを「美女」と形容するなら、エミリアの美しさは何と讃えたら良い?
可憐で、妖艶で、それでいて清楚で、理知的で、包容力があり……。
「そうだな。けれど、私の理想ではありません」
エドワードは、きっぱりと言い放つ。
クローディアは、驚いたように目を瞠った。イヴリンも驚いているようだ。
ソーニャはむっつりと顔をしかめた。
「では、どんな女性が理想ですか?」
そう問うて来たのは、クロ―ディアだ。
「そうですね。たとえば」
エドワードは、サロンの扉に目を向けた。……きっと、もうすぐ扉が開く。
「あのように、控えめで慎ましやかな女性でしょうか。皆さんも後姿くらいはご覧になったでしょう」
昨晩は転んだせいでエミリアの服が乱れたと、灯りの下で明らかになった。
だから予定を変更して、エミリアだけはこっそりリチャードに送らせていた。
今日は――期待通り、扉がゆっくりと開いた。エミリアだ。
エミリアはエドワードの姿を確認すると、小さく目礼した。
それから恭しく一礼して入室する。
「ちょっと。私は彼女を招待してはいないわよ」
ソーニャは不機嫌を露わにして、エミリアに抗議する。
「私は一度だけ、エドワード様をパーティーでお見掛けしたことがあるんですの。お声を掛けようと思ったのですが、すぐにお帰りになってしまわれたので」
エドワードは招待客に挨拶をして回っていて、クローディアのことなど気に留めていなかったのだろう。
「それは申し訳ないことをした」
ぶっきらぼうに言い放って、会話を打ち切った。
それで引き下がるかと思いきや、クローディアは首を振る。
会話を続ける気らしい。
「いえ、構いませんわ。でも、これからはもっとお話する機会がございますもの」
彼女は微笑む。エドワードは、彼女の笑みの理由が分からずに困惑する。
エミリアの存在は昨日耳にしているはずなのに、先走った話だ。
しかし、会話を弾ませるつもりはないので、否定もしない。
「私はクローディアほど積極的になれないの。ごめんなさいね」
イヴリンが茶化す。
「私も、クローディアみたいに積極的になれないわ。ねえ、私もお話に加えてくださいな」
後ろに控えていたナーサリー男爵家の令嬢が、クローディアの袖を引いた。
名前は、ロザリー・ナーサリー。15歳。
まだ社交界デビューはしていないので、エドワードも会ったことはないが、彼女の存在は耳にしている。
広大な農業地域を領地に持つナーサリー男爵家は、国内の食料供給を担う大農家だ。
彼女の兄もまた、国王の覚えもめでたく、既に何人かの側室を抱えている。
しかし、ロザリーは社交界デビュー前だ。他の候補者たちと比べると、幾分見劣りしてしまう。
「ロザリーはね、エドワード様に会ってみたかっただけなんですよ」
イヴリンが笑う。
「ええ、でもイヴリン、貴女だって」
ロザリーも悪戯っぽく笑った。彼女たちは、なかなかに仲が良さそうだ。
「どう? 皆気立てが良く、躾けの行き届いた良家の子女よ。それに、どの子も美しいでしょう?」
ソーニャが、自慢げに語る。
確かに、どの娘も美貌の持ち主だ。
……一般的には。ソーニャの自慢げな様子から察するに、彼女たちはいわゆる「美女」というタイプなのだろう。
しかしこの子らを「美女」と形容するなら、エミリアの美しさは何と讃えたら良い?
可憐で、妖艶で、それでいて清楚で、理知的で、包容力があり……。
「そうだな。けれど、私の理想ではありません」
エドワードは、きっぱりと言い放つ。
クローディアは、驚いたように目を瞠った。イヴリンも驚いているようだ。
ソーニャはむっつりと顔をしかめた。
「では、どんな女性が理想ですか?」
そう問うて来たのは、クロ―ディアだ。
「そうですね。たとえば」
エドワードは、サロンの扉に目を向けた。……きっと、もうすぐ扉が開く。
「あのように、控えめで慎ましやかな女性でしょうか。皆さんも後姿くらいはご覧になったでしょう」
昨晩は転んだせいでエミリアの服が乱れたと、灯りの下で明らかになった。
だから予定を変更して、エミリアだけはこっそりリチャードに送らせていた。
今日は――期待通り、扉がゆっくりと開いた。エミリアだ。
エミリアはエドワードの姿を確認すると、小さく目礼した。
それから恭しく一礼して入室する。
「ちょっと。私は彼女を招待してはいないわよ」
ソーニャは不機嫌を露わにして、エミリアに抗議する。
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