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事件
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さりげなくしなければいけないのに、つい性急な触れ合いを求めてしまう。
今日のデートは順調と呼べるだろうか?
エミリアは楽し気にしてくれている時もあるが、その度にエドワードが手を出し、エミリアを戸惑わせている。
「エドワード様、どうなさったの? どこかお加減が?」
牧場を一通り見学した後、休憩のため、近くの小川で足を浸した。二人で並んで飛び石に腰を掛け、涼を取る。
脛をむき出しにした白い足が目に眩しい。
エミリアはエドワードを心配して、覗き込むように窺った。
(――いや、足を目的に誘ったのではない。これは、不可抗力だ)
髪をかき上げ耳にかける。それだけの仕草にも、エドワードはつい頬を緩ませる。
「いや、どこも悪くはない」
エミリア愛らしさはその見た目だけではない。
心根から生み出される、優し気な所作にもあった。
「麗しいエミリアと二人きりで、胸が一杯になっただけだ」
エミリアの頬が、さっと赤に染まる。
エドワードの言葉に対する素直な反応に、きゅーっと、胸を引き絞られた。
上気する、ふんわりとした輪郭の頬は、触れればどんな感触がするだろう。
熟した赤リンゴのように色づく唇からこぼれる吐息を、今すぐに奪い取りたい。
無意識の欲望に、ごくりと喉を鳴らした。
掌を握り絞めて、堪える。
エミリアは、不用意に距離を詰めるエドワードの仕草に、いつも戸惑っている。
その反応が可愛らしくて、つい、いけない気持ちになってしまう。
もう少し上手く接していれば、今より多少心を開いてくれたかもしれないのに……。
エドワードは、掌に食い込む爪の痛みで、どうにか理性を保った。
「それは、あ、ありがとうございます……?」
エミリアは、困ったように目を泳がせた。
だが、昨日とは、少し態度が違う。
今日の旅程は、楽しんでくれていると思う。
「足は、冷たくない?」
「ちっとも。とても気持ち良いです。こんな風に過ごすのは初めて……」
風が一筋、髪を掬って通り過ぎた。
川の水気を含んだ冷たさに、目を細める。
「いつも、宮殿ではどんな風に過ごしていたの?」
エミリアは口籠る。
答えにくい質問をしてしまったのだろうか?
「そうですね……。王宮での私は、毎日忙しくしていました」
エミリアが紡ぐ言葉に耳を傾ける。すると、ぽつりぽつりと、エミリアは語り始めた。
「朝礼に、会議、財務調整や社交に慈善活動……。あとはお茶会や、夜会かしら。きっとエドワード様のしていることと変わりません」
エドワードは内心閉口した。
それらの一部、いや、前半のほとんどは国王の取り仕切る分野ではないのか。
通常王妃が受け持つ政務は、社交が大半を占めている。
今日のデートは順調と呼べるだろうか?
エミリアは楽し気にしてくれている時もあるが、その度にエドワードが手を出し、エミリアを戸惑わせている。
「エドワード様、どうなさったの? どこかお加減が?」
牧場を一通り見学した後、休憩のため、近くの小川で足を浸した。二人で並んで飛び石に腰を掛け、涼を取る。
脛をむき出しにした白い足が目に眩しい。
エミリアはエドワードを心配して、覗き込むように窺った。
(――いや、足を目的に誘ったのではない。これは、不可抗力だ)
髪をかき上げ耳にかける。それだけの仕草にも、エドワードはつい頬を緩ませる。
「いや、どこも悪くはない」
エミリア愛らしさはその見た目だけではない。
心根から生み出される、優し気な所作にもあった。
「麗しいエミリアと二人きりで、胸が一杯になっただけだ」
エミリアの頬が、さっと赤に染まる。
エドワードの言葉に対する素直な反応に、きゅーっと、胸を引き絞られた。
上気する、ふんわりとした輪郭の頬は、触れればどんな感触がするだろう。
熟した赤リンゴのように色づく唇からこぼれる吐息を、今すぐに奪い取りたい。
無意識の欲望に、ごくりと喉を鳴らした。
掌を握り絞めて、堪える。
エミリアは、不用意に距離を詰めるエドワードの仕草に、いつも戸惑っている。
その反応が可愛らしくて、つい、いけない気持ちになってしまう。
もう少し上手く接していれば、今より多少心を開いてくれたかもしれないのに……。
エドワードは、掌に食い込む爪の痛みで、どうにか理性を保った。
「それは、あ、ありがとうございます……?」
エミリアは、困ったように目を泳がせた。
だが、昨日とは、少し態度が違う。
今日の旅程は、楽しんでくれていると思う。
「足は、冷たくない?」
「ちっとも。とても気持ち良いです。こんな風に過ごすのは初めて……」
風が一筋、髪を掬って通り過ぎた。
川の水気を含んだ冷たさに、目を細める。
「いつも、宮殿ではどんな風に過ごしていたの?」
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答えにくい質問をしてしまったのだろうか?
「そうですね……。王宮での私は、毎日忙しくしていました」
エミリアが紡ぐ言葉に耳を傾ける。すると、ぽつりぽつりと、エミリアは語り始めた。
「朝礼に、会議、財務調整や社交に慈善活動……。あとはお茶会や、夜会かしら。きっとエドワード様のしていることと変わりません」
エドワードは内心閉口した。
それらの一部、いや、前半のほとんどは国王の取り仕切る分野ではないのか。
通常王妃が受け持つ政務は、社交が大半を占めている。
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