捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら

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ヴァルデリア

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 そんなエドワードが強引に攫った娘を連れ帰ったと聞いた時には驚いた。

「ソーニャ様は、随分とエミリア様をお気に召したご様子ですね」

「ええ。最初は伯爵令嬢とは言え、所詮はヴォルティアの馬の骨でしょう? 興味がなかったのだけど、実際にお話しをしたらすっかり気に入ってしまったの。利発なのに控え目で……頭の回転の早いこと。それで容姿はあの通り花のようで……」

「そうですね。お年は一つ、エドワード様より上だと伺いましたが」

「あらそうなの? そんなこと、どうして貴女が知っているの?」

「……湯浴みを担当した侍女が、ご本人から伺ったと申しておりまして」

(ふうん、とすると、21歳。随分と若く見えるわね……)

 ソーニャはふぅん、と首を傾げた。

 21だとすれば随分と晩婚だ。

 今まで嫁ぎ先が見つからずに、嫁き遅れた娘にも見えない。

 だからこそ、焦ったエドワードが慌てて連れ去った……と考えられなくもないか。

 とにもかくにも、あの娘なら、エドワードの妻に相応しい。

 聖母のような慈悲を纏いながらも、その身は気品に溢れている。

 生まれついての女王であるかのような優雅さを備えている。あのような娘は、ソーニャの知る限り一人もいない。

 或いは両親が「最上の嫁ぎ先を」と大切に隠しているうちに年齢を重ねたのかもしれない。

「では、早々に結婚の話を進めましょう。婚約者がいるのですものね。明日、一番に書簡をしたためるよう……ええと、アルデン家と言っていたわね」

 伯爵家ともあれば、大抵の家との縁談が叶う。

 それこそ、王家に望まれてもおかしくない。

(ヴォルティアの王太子は――もうお妃がいたわ。それで昨日、エドワードが戴冠式に出席したのですも……の)

 ソーニャは上機嫌で指示を出しながら、はた、と思考を止めた。

 只ならぬ予感で胸がざわつく。

「……ヴォルティア王国から届いた書簡は、何処に保存してあるかしら?」

「え? 恐らく国王陛下の執務室に……」

「そうよね。ありがとう、もう下がって結構よ。ご苦労様」

「左様で、ございますか? 何かお話が途中だったのでは?」

「いえ、明日にしましょう。お下がりなさい」

「……失礼致します」

 急な態度の変化に、メイドが訝しみながらも退出すると、ソーニャは唇を噛んだ。

「何てことなの。もしも私の予想が正しければ、とんでもない事態だわ……」

 ソファの背に寄りかかり、額を押さえた。

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