ホドワールの兄弟 

keima

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泣き女と妖精隠し 

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今回、以前投稿した「星が泣いた夜」のキャラが登場します。


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黒の森には人間世界と繋がるゲートがある。しかし、この扉は簡単に通る事はできない。というのも、扉は無数に存在しており、扉によって国・時間・世界がそれぞれ異なっており、無闇に通る事が難しい。
気まぐれな黒の森の住民はこの扉を使って、気に入った人間をここに連れてきては人間世界に帰すというイタズラをするのだが、人間世界では時間の流れが違うため、1ヶ月、1年、ひどいので10年時がたっていたり、全然、自分の知らない国だったり、別の世界だったりすることがあるので下手に通る事ができない。
このイタズラを人間世界では「妖精隠し」と呼んで恐れられている。

そのためどの扉にどんな国か、どんな時間が、どんな世界と繋がっているのかをて、管理することができるのは黒の森の主であり、森の中にあるセレナード湖に住む泣き女だけである。  

「あらっ・・・?」 

泣き女は水面みなもに写る人間界の様子を見ていた。
暗い森の中を4つの影が駆けていて、その影を追うように重々しい鎧を纏った集団とそれをまとめるキラキラした格好の男が森の中を突き進んでいた。

  「いい男・・・だけど、なんか胡散臭いわねぇ・・・」 

癖のない黒髪にエメラルドグリーンの瞳、贅肉のついていない引き締まったボディに美しい容姿はまさに完璧なのだが、その瞳の奥にほの昏い闇が潜んでいる。

再び、4人組のほうに目を映すと、4人組のうちの2人はまだ子供で、その1人は少女だ。 

------この4人、どこかで見覚えがあるような。 

ジッと水面に映る4人組の顔を見ながら考えていると、アッと思わず声を上げた。 


「思い出した・・・この4人、シーナんトコの4兄弟じゃない!?」 

追われている4人組は、度々、扉を使って人間世界を旅しているこびと族の女性シーナの親戚の4兄弟である。確か兄弟の内の1人は以前、この森に入って住民たちに追いかけられて酷い目に遭っている。 

「人間に追われるなんて・・・何があったのかしら?」

 右手を顎にのせて考えこんでいると、末っ子の少女が木の幹に足を引っかけて転んでしまった。それに気づいた少年-確か双子の兄-が駆け寄り、起こそうとしたとき胡散臭いと称された男が直ぐ近くまで迫り、少女に手を伸ばした瞬間・・・・。



    ――――――パチンっ。



  気が付くと、男のすぐ目の前にいたはずの少女の姿は消え泉の前に立っていた。

 「ここは・・・あっ、あの子は何処だ?」  

キョロキョロと周りを見回して見ると、同行していた騎士達の姿も見当たらなかった。正面を見ると、いつの間にか湖の中に白いワンピースに前髪が顔を覆うくらい長い女の姿が湖の中にいた。 

 「誰だ貴様は?彼女をどこに隠した!?彼女を返せ!!」 

「隠してないわよ。それにしても・・・胡散臭いとはおもっていたけど貴方、とんでもない物をもっているわね。」 

美しい顔を歪め、叫ぶ男の胸には普通の人間には見えない禍々しい靄が渦巻いており、男の顔だったり女の顔、老人や子供の顔だったりと変化しているが、どれも苦悶した表情を浮かべている。 

 「人間でありながら人間の魂を喰べているなんて興味深いわ・・・」 

「何のことだ?」 

「自覚が無いのね。まあいいわ。」

 パチンと泣き女が指を鳴らすと、すぐそばにあった木の枝が伸びてきて男の身体に巻き付いた。 

「うわっ!!なっ・・・何だこれは!?うっ、動けない・・・。」

 「抵抗しないほうがいいわよ。この子たちは抵抗すればするほど、締めるから。」 

「うぐっ・・・こんなもの・・・完璧な私にかかれば・・・」 

パキッと男の身体を締め付ける木の幹にヒビが入る。 

「・・・あら?人間の身でそんな力があるなんて・・・興味深いわぁ。」

 泣き女が口角を上げニヤリと笑うと、カサカサという音を立て、男を取り囲むように蜘蛛が足元に集まってきていた。 
蜘蛛の口から白い糸が伸びてきて男の身体を包み込む。声なき声を上げ暴れ回る男に、泣き女は不敵な笑みを浮かべながら湖から上がってきて、蜘蛛の糸に包まれた男に近づいた。 

「一度、解剖してから・・・その力を取り除いてみましょうか」









翌日、   黒の森の入口があるこびとの里、森の入り口前に里の住人たちが集まっていた。昨日の夜から森の中では謎の音と男の悲鳴が響き渡っていたので、不安になって集まってきていた。

アアァアアァ~~!!

 ギュイ~ンギュイ~ン

ウァァァ~~!!

ギギギギ~  

ギャアアアア~~ !!

ギュイギュイギュリリ~ン


ギィーコ ギィーコ 



「……………」



男の叫び声と共に、どう考えても機械音にしか聞こえないその音に住人たちは思った。

 ―――一体、何が行われているんだ?

森の中から響きわたる叫び声と騒音ひ里の住人達はただただドン引きしていた。



 「本当、一体なに考えてんだろうなぁ?お前もそう思うだろう

































………エドワード。」


「そう………ですねぇ。」

隣にいた知人に声をかけられたエドワードも森の中から聞こえる阿鼻叫喚に引き気味で、ひきつった表情を浮かべている。
ちなみに、弟のカインは幼少期に黒の森の住民に酷い目にあって以来、なるべく森に近づかないようにしており、それは成長した今も変わらず、今回は自宅で下の弟達と留守番している。


「それにしても、コレ、いつまで続くんでしょうね?子供達が不安にならないか心配ですね。 」

「あ~……そうだよなぁ。」

そんなやりとりをしているエドワードは知らない。泣き女がを自分達だと勘違いしていることを、彼らを追う人間世界のとある国の王子様のことを、泣き女が森の中で何を行っているのかを、知る者は誰もいない。 


機械音と男の悲鳴が聞こえなくなったのは、それから3日後のことだった。 

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男こと「星が泣いた夜」でゴーレム4兄妹の末っ子を虐げていた第2王子は、あのあと泣き女に元の世界に帰されました。 



エドワード達4兄弟にそっくりな4人は「星が泣いた夜」のゴーレム4兄弟です。

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