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真夜中の泣く声
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小人の里の東部にある黒の森と呼ばれる森がある。 その森の中にあるセレナード湖には、泣き女と呼ばれる湖の主がいる。
女性の絶望・悲哀から生みだされた泣き女は深夜になると、自分の不幸を嘆き、夜な夜な泣き叫んでいるらしい。
「あれっ?兄さん、まだ起きてたの。」
深夜2時、目が覚めてしまったカインが水を飲もうとキッチンに向かうと、エドワードがダイニングテーブルのイスに座って飲み物を飲んでいた。
「ええ、ちょっと目が冴えてしまって。」
「ふ~ん。兄さん、それ何飲んでんの?」
「紅茶。カインも飲みますか?」
「あぁ、もらおうか……」
ーっ、ひっく…ひっく……
「!?……兄さん、今なんか女の声みたいなの聞こえなかったか?」
「へっ?泣き声ですか?私は聞こえなかったんですが……」
ーっ、わい……こゎい……
「ほら、やっぱり!!」
顔を青ざめるカインだが、エドワードはおやぁ……というように怪訝そうな顔をしている。
「この時間に女の泣き声って……これって泣き女なんじゃ……」
「落ち着いて。黒の森からウチまでだいぶ離れています。セレナード湖の主の声が聞こえることはありませんよ。」
はぁっ……と額に手を当てて呆れる。 黒の森の住民はいたずら好きの者が多く、森に入ってくる者にしょっちゅういたずらを仕掛けてくる。おまけに人間界と繫がる扉があり、そこから人間を引きずりこんでは驚かせたり、惑わせたりと自分たちの気が済んだら帰したりと気まぐれなところがある。
カインはルカとライリーの年齢ぐらいのときに間違ってその森に入ってしまい、森の住民に追いかけられたことがある。
それ以来、泣き女などの黒の森の住民に苦手意識あるのだ。
「……カイン、よーく聞いてください。」
………うぇっ、ひっく…こわぃ…
エドワードに言われジッと耳をかたむけてみると、その声は自分のよく知る人物に似ていた。
「………ライリー?」
「……の声ですね。やっぱり。」
幼少期からライリーは夜泣きをすることが多かった。この夜泣きでエドワードやカインは夜中によく起こされていた。
「赤ん坊のときならまだしも、夜中に泣きだすなんて……」
「よっぽど、怖い夢でも見たんじゃないですか?」
そう言うと、泣き声の聞こえる子供部屋の前に立ち、ドアノブに手を伸ばしたのだが、エドワードの手はそのままドアノブの前で止まってしまった。
「……兄さん、どうした?」
カインが訪ねると、エドワードはシィ……と人差し指を口に当てる。
「ライリー、大丈夫?」
「こわい……こわい……」
怖いと泣きじゃくるライリーをルカが優しくなだめている声が、ドア越しから聞こえてきた。
やがてライリーの泣き声は小さくなってゆき、しばらくすると完全に聞こえなくなった。
ソ~ッとドアを開けて部屋に入っていくと、ライリーとルカはお互いの手を握りしめたまま眠っていた。
「2人とも寝ちゃったようですね。」
「まったく……驚かせやがって。」
「泣き女じゃなくてよかったですね、カイン。」
「………うるせぇ。」
そっぽを向くカインに苦笑しながらエドワードは2人に毛布をかけてやると、そのままルカとライリーの頭を優しく撫でた。
「おやすみなさい。よい夢を。」
女性の絶望・悲哀から生みだされた泣き女は深夜になると、自分の不幸を嘆き、夜な夜な泣き叫んでいるらしい。
「あれっ?兄さん、まだ起きてたの。」
深夜2時、目が覚めてしまったカインが水を飲もうとキッチンに向かうと、エドワードがダイニングテーブルのイスに座って飲み物を飲んでいた。
「ええ、ちょっと目が冴えてしまって。」
「ふ~ん。兄さん、それ何飲んでんの?」
「紅茶。カインも飲みますか?」
「あぁ、もらおうか……」
ーっ、ひっく…ひっく……
「!?……兄さん、今なんか女の声みたいなの聞こえなかったか?」
「へっ?泣き声ですか?私は聞こえなかったんですが……」
ーっ、わい……こゎい……
「ほら、やっぱり!!」
顔を青ざめるカインだが、エドワードはおやぁ……というように怪訝そうな顔をしている。
「この時間に女の泣き声って……これって泣き女なんじゃ……」
「落ち着いて。黒の森からウチまでだいぶ離れています。セレナード湖の主の声が聞こえることはありませんよ。」
はぁっ……と額に手を当てて呆れる。 黒の森の住民はいたずら好きの者が多く、森に入ってくる者にしょっちゅういたずらを仕掛けてくる。おまけに人間界と繫がる扉があり、そこから人間を引きずりこんでは驚かせたり、惑わせたりと自分たちの気が済んだら帰したりと気まぐれなところがある。
カインはルカとライリーの年齢ぐらいのときに間違ってその森に入ってしまい、森の住民に追いかけられたことがある。
それ以来、泣き女などの黒の森の住民に苦手意識あるのだ。
「……カイン、よーく聞いてください。」
………うぇっ、ひっく…こわぃ…
エドワードに言われジッと耳をかたむけてみると、その声は自分のよく知る人物に似ていた。
「………ライリー?」
「……の声ですね。やっぱり。」
幼少期からライリーは夜泣きをすることが多かった。この夜泣きでエドワードやカインは夜中によく起こされていた。
「赤ん坊のときならまだしも、夜中に泣きだすなんて……」
「よっぽど、怖い夢でも見たんじゃないですか?」
そう言うと、泣き声の聞こえる子供部屋の前に立ち、ドアノブに手を伸ばしたのだが、エドワードの手はそのままドアノブの前で止まってしまった。
「……兄さん、どうした?」
カインが訪ねると、エドワードはシィ……と人差し指を口に当てる。
「ライリー、大丈夫?」
「こわい……こわい……」
怖いと泣きじゃくるライリーをルカが優しくなだめている声が、ドア越しから聞こえてきた。
やがてライリーの泣き声は小さくなってゆき、しばらくすると完全に聞こえなくなった。
ソ~ッとドアを開けて部屋に入っていくと、ライリーとルカはお互いの手を握りしめたまま眠っていた。
「2人とも寝ちゃったようですね。」
「まったく……驚かせやがって。」
「泣き女じゃなくてよかったですね、カイン。」
「………うるせぇ。」
そっぽを向くカインに苦笑しながらエドワードは2人に毛布をかけてやると、そのままルカとライリーの頭を優しく撫でた。
「おやすみなさい。よい夢を。」
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