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流星雨の夜
しおりを挟むこびとの里の冬は寒い。日が沈むのが早い上に冷たい北風が吹くために余計に寒く感じる。
「う~さみぃ~~!!」
そのため寒さが苦手なこびと達はカインのように肩をすぼめながら急いで家路に帰ることが多い。
「ただいま~。あ~、寒かった!」
「お帰りなさい。もうすぐごはんができますよ。」
家に入ると、キッチンから兄のエドワードがひょっこりと顔を出してきた。
自室に戻り、コートとマフラーを脱いでから暖炉の効いたダイニングに入ると、いつも賑やかな弟たちの姿がないことに気づいた。
「兄さん、ルカとライリーは?」
「2人ならベランダにいますよ。」
「ベランダ?この寒いのに?」
「今日は流星雨ですからね、それを見ているんですよ。」
流星雨はこの冬になると流れ星が大量に流れてくる現象で、まるで雨のように降ってくる様子からそう名づけられた。
「あ~~っ、また流れた!!」
「わ~、すごーい!!」
外から2人の楽しそうな声が聞こえてきた。
「……アイツら、流れ星であんなはしゃぐなよ。」
「アレ?ルカだって子どものころは2人みたいにはしゃいでましたよね。」
「そうだっけ?」
「しかも虫取り網をもって、流れ星をとってくるんだ~!!なんていってましたよね。」
「……そうでしたっけ……」
覚えがあるのか、目をそらすカインの姿にエドワードはクスリと笑った。
ベランダから流星雨を眺めるルカとライリーは星が流れるたびに歓声を上げていた。
「わ~っ、また流れた~!!」
「キレーイ!! 」
「お前ら楽しそうだなぁ……。」
カインは呆れながらもベランダの窓を開けて、2人に声をかけた。
「あっ、カイン兄さん。」
「お帰りなさい。」
「ただいま~って、2人とも完全防備だなぁ……ソレ。」
2人とも色違いのニット帽に、同じくモコモコしたブランケットにくるまった姿でロッキングチェアに座っていた
「どうも秘密結社ブランケットです。」 ドャッ!!
「でっす。」 ドャッ!!
「秘密結社ブランケットって…何だよそれ。ってか、お前ら2人ドヤ顔してるけどさ、寒くないの?」
「正直、寒いです。」 キリッ!!
「めちゃくちゃ寒いです。」 ドヤッ!!
「……ルカ、それかっこつけて言うことではないぞ。そしてライリー、お前のそのドヤ顔は何?」
「2人とも、晩ごはんできましたから、そろそろ中に入って下さい。」
「「は~い!!」」
2人はロッキングチェアから立ち上がり、冷たいベランダから暖かいダイニングに入ると、帽子やブランケットを片付けた。
「エドワード兄さん、今日の晩ごはんは何?」
「今日の晩ごはんはかぼちゃシチューですよ。」
「やった~~!!」
「シチューだ。シチューだぁ!!」
「お皿やスプーンだすの手伝って下さいね。」
「「はーい!!!!」」
ベランダの窓を閉めながら、エドワードの後ろについて行く2人の姿をカインは呆れながら見つめた。
「まったく、調子が良いなぁ、アイツら…。」
「カイン兄さ~ん!!」
「今行くよ。」
ベランダから離れたカインの後ろで流れ星が4つ、夜空に流れていき、消えていった。
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