死の婚礼 

keima

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本編

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騎士爵の一人娘ミリリアと男爵家の子息アベル。 
2人は幼なじみであり、婚約者だった。 
幼い頃は一緒に野原を駆け回っていた。 

「僕はいつか騎士になってこの国を守るんだ。」

「アベルすご~い。もしその夢が叶ったらそのときはわたしをお嫁さんにしてね。」

「うん!!」

しかし、アベルが騎士養成学校に、ミリリアが王立貴族院に入学したときからその運命は変わった。 

ミリリアの1学年上の学年に第3王子が在籍しており、ミリリアはその第3王子に気に入られ寵愛を受けるようになった。 

ーー王子に気に入られたのならば、自分は王子の妃になれるかもしれない。 

そんな欲を持ってしまったミリリアはアベルに一方的な婚約破棄を告げる手紙と婚約したときに貰った指輪を送った。 

その手紙を読んだアベルは激しいショックを受け、自暴自棄となり酒を煽り続け、急性アルコール中毒で亡くなってしまった。 
息子の突然の死に両親は嘆き悲しんだ。 アベルの母はかつてミリリアに贈った婚約指輪に息子とミリリアの名前を刻み、棺の中に納めた。 




ーーリア……ミリリア…… 

ふと自分の名前を呼ばれたような気がしてミリリアは後ろを振り返ったが、そこには誰もいなかった。 

「ミリリアどうしたんだい?」

「いえ、何でもありません。」

第3王子の手前否定したが、ここ数日誰かに呼ばれる声と、刺すような視線を感じていた。 
しかし、振り返ってもそこに誰もいなかったり、寮の自分の部屋にいると、カップやお皿が割れたり、

ドン……

ドン… 

……バチン

という謎の音が響き渡るこという現象が起きる。 

「一体何なのよコレは!!」

ミリリアは知らなかった。
アベルの母が送り返した婚約指輪に自分とアベルの名前を刻んだことを。

冥婚めいこんーー婚姻前に亡くなった男性又は女性を供養するために、指輪に故人の名前と年齢を刻んで棺に納めるのが習慣である。しかし、指輪に生きた人の名前を刻めば、その人は決して生者の名前を刻むことは禁止されていた。 

ミリリアがアベルの死を知ったのは、両親が倒れたとの知らせを受け、領地に戻ってきた時だった。
娘の勝手な行動を知った両親はアベルの実家に慰謝料請求されそれを支払った直後、アベルが死んだと知りその精神的ショックから倒れてしまったのだ。
それを兄から聞かされて激しく動揺した。 
しかも、家族は何度もミリリアに手紙を送ったのにそれをまったく目に通してなかった事を激しく後悔した。


ーーまさかアベルが死んでいたなんて……わたしが一方的に婚約破棄をしたから……あんな手紙を出したから、だからアベルは死んだの?

アベルの死を知り、ミリリアは自責の念に駆られるようになり、寮の自分の部屋に閉じこもるようになってしまい、誰とも会おうとはしなかった。
見舞いに来た第3王子ですら面会も拒否するようになった。 

ーー今のわたしに殿下と逢う資格なんてない。わたしがアベルを殺したんだ。そしてお父様たちも苦しめて……最低だ。わたし…… 

しかし、第3王子は諦めきれず毎日ミリリアの部屋の前に来ては部屋のドアを叩いたり、閉じこもる彼女を説得し続けた。。
しかし、その行動はさらにミリリアを追い詰めることとなり、日に日にミリリアは衰弱していく。 

ーーきっとアベルはわたしを恨んでいるんだ。そうよね。あんな一方的に婚約を破棄して恨まないハズないもの。 


ドンッ ドンッ 

パキン パキン 

部屋中に響き渡る奇怪な音にミリリアは部屋の片隅で膝を抱えたまま耳を塞ぐ。 


ーーミリリア……… 

ドンッ 

ーーミリリア…… 

 ドンッ 

ドンッという音とともにミリリアを呼ぶ声が段々と近づいてくる。 

ーーミリリア…… 

  ドンッ

ーーミリリア…

  ドンッ 

ーーーミリリア………








   ヴァンッ

閉じていたはずの窓が勢いよく開き、冷たい雨と強風に顔をあげると窓から騎士服姿の骸骨が部屋へと侵入してきた。 


カチャン…カチャンという音を立てながら騎士服を着た骸骨がミリリアに近づいてくる。 

ーーああっ、アベルだ。姿は変わっているがあれはアベルだ。 

「………ごめんなさいアベル……ごめんなさい……」

アベルだった骸骨に向かい、ミリリアは謝罪の言葉を何度も告げた。 


ーーーミリリア。あの世で一緒になろうーー 

その言葉を聞いた瞬間、ミリリアの意識はブラックアウトした。




「ミリリア!!」

バンッとドアを叩き開けミリリアの部屋の中に入ってきた第3王子が見たものは、開け放った窓の前に倒れ込み絶命したミリリアの姿だった。 
その死に顔はまるで眠っているように安らかで、真っ白なドレスに身を纏っており、左手にはアベルの棺に納められたはずの婚約指輪が嵌められていた。 
 
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