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婚約者を名乗る男 2
しおりを挟む今回、あの弁護官&事務官コンビが登場します。
━━━━━━━━━━━━━
「ねえレナちゃん。貴女お見合いしない?」
「はいっ?」
2年前、女子短期学校卒業を目前に控えたレナのもとに母方の親戚に当たるおばが現れ、関口一番にこう告げてきた。
「私のお得意さまの息子さんがね、美形なんだけどちょっ~と性格に難がありすぎてもうすぐ30歳になるというのに女の人の影もないし、結婚する気がまったくないみたいで、今必死になってお嫁さんになってくれる人を探しているんだけどぉ~、レナちゃん貴女その人とお見合いしてみない?」
「えぇ~・・・」
商人として働いているおばは少々強引なところがあり、レナや家族は少し苦手だった。 今回のお見合い話に関しても母親はあまり乗り気ではなく
「おばさん強引なところあるから、断ってもいいんだから。」
とこう言ってくれたのだが、おばは自分がこうと決めたらその意思を押し通す性格のため、あの手この手でお見合いしてくれと迫るためにレナは根負けし、お見合いすることとなった。自分は良いことをしたとホクホク顔のおばだったが、お見合い当日、相手の男性が会場に現れることはなかった。
次の日、自宅にそのお見合い相手の男性から「僕は君と結婚する気はない」という内容の手紙が届き、この手紙を相手の両親にみせたところ、顔を真っ青にさせ
「ウチのバカ息子が大変失礼なことをした!!」
と頭を下げ、お見合いの話はなかったものになった。
「えっ!?じゃあ、そのお見合い相手とは顔を合わせていないんですか?」
紅茶色の目を丸くさせながらリーアがそうたずねると、レナは「はい」と言うようにコクリと頷いた。
「もともと、私もお見合いに乗り気じゃなかったんであの手紙を呼んだとき少し腹は立ちましたけど、ちょっとホッとしたんです。それなのに・・・」
当時のことを思い出したのか、レナは無意識にシーツを握る手に力が入っていることにノエルは目敏く気づいた。
「・・・何があったんですか?」
「・・・学校を卒業してすぐ就職した職場にそのお見合い相手のオトモダチだと言う人が現れたんです。」
「オトモダチって……?」
「・・・貴族のお嬢様達です。あんまり爵位とかはわからないんですけど、自分はそのお見合い相手と深い仲にあるから貴女は彼に相応しくないって言ってきたりしてきました。」
「オトモダチって要は取り巻きじゃない」
「取り巻き……そうですね。その後も別の貴族のお嬢様から「彼に相応しくない」とか「身を引け」や「調子に乗るな」とかもうほぼほぼ毎日のように来ては同じようなことを言ってきたり、自宅にも同じような内容の手紙が送られてきたんです。」
「平民のくせに」 「あの方に近づかないでよ」など次々と書き殴られた罵詈雑言の数々や職場にまで押し掛け絡んでくる令嬢達に当時のレナの精神は疲弊していった。
何度も説明しても彼女たちは信じることなく決まってこう言った。
「そんなことはない。あの方が嘘をつくはずがない!!」
どうやら元お見合い相手の男が令嬢達に自分に対する嘘の情報を吹き込んだらしく、彼女達の中では自分は平民でありながら愛する男を誑かし婚約者の座におさまった悪女と認識され、何度も違うと言っても彼女たちがその話を聞き入れることはなかった。
「なんだその男、自分がお見合い嫌がって逃げたくせに自分の女を利用してコーラルさんに嫌がらせしてバカじゃねえのか!!」
今まで黙ってレナの話を聞いていたイザークも、「はああっ!?」と大声を上げその沈黙を破り叫んだ。
「うるさいぞバカ弟!!」
「「イザーク(先輩/先生)ここ病室なので静かにしてください!!」
イザークのあまりにもデカイ声にニーナは自分より背のあるイザークの頭を思い切り叩き、ノエルとリーアは耳を押さえつつイザークを窘めた。
「・・・それから私、外にでるのが少し怖くなって来たんです。出たらあの令嬢達に絡まれるのか、何も悪いことしていないのに暴言を吐かれるんじゃないのかって、前の職場を退職て自宅に閉じこもってそんなことときに女学校時代の仲の良かった先輩から連絡が来て、先輩の旦那さんが働く商会が新事業を開くからその従業員として働かないかって誘われて、ゴンドラにやってきたんですけど・・・もうすっかり忘れていたのに・・・」
「コーラル氏、これはもう貴女だけの問題ではない。他の令嬢にも話を聞いてみたところ、その男は自分は陸軍の大佐で子爵位を賜っていると言って彼女たちに・・・肉体関係を持つよう迫っていたようだ。」
髪を掻きあげ複雑そうな顔を浮かべたニーナの言葉にその場にいた誰もが驚愕した。
「……最低ですね。」
思わずそう零したリーアの瞳にも嫌悪の色が滲んでいる。
「一部の令嬢の実家は、娘をキズモノにした男を許せないと被害届を提出したのだが……コーラル氏、君はどうしたい?」
「・・・私は……」
握りしめていたシーツから手を離し、顔をあげ、まっすぐニーナのほうをみる
「あの人とはできれば関わりたくありません。お見合いしたくないって言っといて自分のオトモダチ使って私にちょっかいを出してくる理由がわからないし、何より私、あの人の顔ぜんっぜん知らないんですし、見たこともないんですよ。なのに嘘のせいで貴族のお嬢様達から目を付けられて嫌がらせされて、これ以上私の人生を滅茶苦茶にされたくないです!!弁護官を立てて、訴えるつもりです。」
強い意志の籠もった瞳ではっきりと告げたレナに、ニーナは満足げに頷いた。
「弁護官をたてるのなら、俺の学生時代の友人が弁護官をしているから、1度逢って相談してみないかい?」
ノエルのその提案にレナは二つ返事で了承した。
「おっ……?」
数日後、王都にある第3者意見司法機関の弁護官レオン・クォーツのもとに1通の手紙が届いた。
「ノエルのやつ珍しいなぁ、手紙を寄こすだなんて。何々……?」
封筒をあけ手紙を読み始めると、レオンの表現は段々と険しくなっていく。
「……レオン弁護官、顔怖いんですけどどうしました?」
オレンジ色の髪の若い女性事務官が険しい顔で手紙を読む上司におそるおそる声をかけた。
「……仕事だよロゼット。とりあえず、彼女に逢って話を聞いてみますか。」
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