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港町ゴンドラ。異国から来た商人や旅人や海軍関係者などの様々な人々が訪れる町の高台にその病院は建っていた。
聖マリア病院ー通称ピエターは廃墟となった大聖堂を改装して開設された病院だ。
前身が産科と小児科の専門病院であったため、敷地内には親を亡くした子供達の教育施設や乳児院。医師の指導の元、患者の看護や医療補助、助産の知識を持つ賢女けんじょを養成する学校が併設されているため女性患者の数が多く、様々な悩みを持った女性が訪れている。


その日、ピエタの外来待合室でトラブルが発生していた。 

「だからあの女を出せって言ってんのよ!!」 

キンキンと高い金切り声が病院内に響き渡り、周りにいた人々はただただその光景に騒然としていた。 

「面会の方でないのなら逢わせるわけには行けません。お引き取り下さい。」

  「はあっ?わたくしに命令する気?私を誰だと思っているのよ!!」

  エメラルドグリーンのドレスの若い貴婦人と紫がかった黒髪の少女…受付事務兼医師長秘書のライラックス・エメが揉めていた。というよりも貴婦人が一方的に怒鳴っており、ライラックスの方は無表情のまま対応していた。 

「っ・・・・このクソガキ、何様のつもりよ!!」 

貴婦人が手を振り上げライラックスの頬を叩こうとしたが、その手があたることはなかった。 

「キャアッ!?何すんのよ離しなさいよ!!」

ライラックスの目の前にフッと現れた黒い影によって貴婦人の手首を掴まれた。


「痛い痛い痛い!!ちょっと離しなさいよアンタッ!!」

 
「・・・・そんな力入れていないんだけど・・」

捻りあげたわけでもなく、軽く掴んだだけで痛いと騒ぐ貴婦人にその人物・・・白衣を着た黒髪の若い男性は呆れた表情を浮かべる。

「ライラ、大丈夫?怪我していない?」

賢女の制服でもある灰色のエプロンワンピースを身に纏った白銀の髪の若い女性がライラックスのもとにかけより尋ねるとライラックスは大丈夫。というようにコクリと頷いた。

「一体、何があったの?」

白銀の髪の賢女・・・リーア・アルジェントはライラックスにたずねた。

 「あの女性(ひと)受付に来ていきなり、ウチに入院している患者を出せって言ってきたんです。けど、途中から『あの女を匿っているだろう。匿っても無駄よ。』とか言い始めて、お見舞いにきたわけじゃなさそうだし、何か怪しそうな感じがしたので、お見舞いで来られた訳じゃないのならお引き取り下さいって言ったらキレだして…」


「なるほど・・・」

 
「こっ、この私にこんな事していいと思っているの?私は貴族よ!!たかが平民ごときが貴族である私にこんな事して許されるとでも思っているの。」


「・・・少なくとも病院内で騒いだうえ、なんの非もないウチの職員スタッフを殴ろうとする人に言われたくありませんし、寧ろそちらこそ、いくら貴族であっても病院内で騒いだり、他の患者さん達に迷惑をかけて許されると思っているのですか。」

若い医師…ノエル・サフィールは貴婦人のあまりの横暴さに呆れ、フゥッと深いため息を吐いたあとそう言い放った。 

「なっ、なんですってぇぇ~~!!!!」

 
キイィ~っと硝子をひっかく音によく似た金切り声にリーアやライラックス、そしてその場にいた人々は耳を塞いだ。

 「たかが医者のくせに私に意見しようだなん・・「大声でうちの医師長秘書を脅して殴り掛かったのはここにいる人全員が目撃しています。なので・・・・これって現行犯逮捕になりますよね?」

 
 「へっ?」


自分の背後に向かってたずねるノエルに貴婦人が後ろを振り返ると、ネイビーの制服を着た巡回警備兵2人組がいつの間にかそこに立っていた。


「・・・・とりあえず、詳しい話は署の方で聞きましょうか。」

 
巡回警備兵の1人がそう言うと、。一瞬で貴婦人の両脇に回り込み、ガッシリと彼女を拘束した。

「い~~や~~あぁ~~!!」

警備兵に両脇抱えられそのまま貴婦人は連行された。

 
「離しなさいよ!!私は悪くないわよ。あの女に……現実を、身の程を知らそうと思っただけよぉぉ~!!」


叫びながらズルズルと警備兵に引きずられていく貴婦人をリーア達はその姿が見えなくなるのを見届けた。 









 


 

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