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その14 終幕
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本日、最終回です
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
男の逮捕から数週間後、レオンは一人で男が収容されている牢獄に脚を踏み入れた。
「何しに来た・・・」
牢屋の住人となった男は逮捕されてからずっと暴れ回り、守衛に対しても暴言を吐いたり当たり散らしているので、両手足を鎖で繋がれ体の自由を封じられていた。
「貴女に報告したいことがあるので、牢獄に来ました。」
「報告・・・?」
「ええっ、貴方の乳父母だった家令とメイド長が先ほど逮捕されました。」
「!?・・・・じいとばあやが・・・何故・・・?」
幼い頃から自分の味方だった2人が捕まったことに男は驚愕した。
「人身売買と殺人ですよ。貴方の家令とメイド長は当時、他国で若い女性のいる家に潜り込んでその家族を騙し、破滅させ、時には殺人をも犯し、若い女性を旧王家派の貴族達に『商品』として売り捌いていた。そして、とある村の牧師・・・神官の家に目を付けた。牧師の美しい妻を次の『商品』にするために2人は彼女を手に入れるために牧師と彼女の幼い子供を殺し、彼女を強引にこの国に連れ去りとある男に売り飛ばした・・・それが貴方の父上だった。」
「・・・・!?」
「 彼女は貴方お父上の慰み者にされ、貴方を産んですぐ亡くなった。けれど、牧師夫婦にはもう1人子供がいた。それがナサニエル・カルセドニー提督だった。」
「!?・・・・・なっ・・・」
「貴方はカルセドニー提督の親族が貴方のお母上を売ったといいましたがそれはまったく違います。貴方の乳母父だった家令とメイド長は自分の罪を隠すために貴方に嘘を教えたんです。」
「うっ・・・そだ・・・」
母親の仇の一族だと信じていた男が自分の父親違いの兄弟であるという真実に今まで自分の信じていたものがガラガラと崩れていく。
「それと、貴方は提督が金で海軍に入ったといいますがそれも大間違いです。提督は家族を失ったあと親戚の家をたらい回しにされ、海軍に勤めていた叔父のツテを頼って海軍に入って、自ら努力を重ねて提督にまで上り詰めたんです。」
「……」
レオンの話を聞いて男はガクリと頭を垂れると、「嘘だ」「そんなはずはない」とブツブツ呟きはじめた。
「……間違っていたと言うのか……この俺が……俺はジジさえいれば良かったのに。すべて思い通りになると思ったのに。」
ブツブツと自分勝手なことを呟く男の姿をレオンの薄紫色の瞳が冷たく見つめていた。
元王都都議会議員ミハエル・ド・ロゼルは王弟を示唆し謀反を企んだ上、テロ集団の教祖の名を騙り禁止薬物を利用して人々を操った反逆罪の罪で国外退去の末、急病で死去したと 発表された。
表向きは
「今日でしたよね。ロゼル卿・・・じゃなくてリッカルド氏がヴィクトリア大国に送検される日でしたよね。」
「・・・・そうだな。あと、元乳父母夫婦も。」
男の身柄を巡る大国との話合いの結果、ミハエル・ド・ロゼルという男を消し、主犯であるリッカルド=ミケーレ・ディッタトーレをカルセドニー提督の殺害の首謀者としてヴィクトリア大国に身柄を送る事が決定した。
また、その捜査の過程で数10年前に起きた強盗誘拐事件の真犯人である夫婦もリッカルド同様大国に送られることとなった。
「って言うか家令とメイド長の夫婦、自分の犯罪が向こうで大きな事件になっていること知らなかったんですね。」
家令とメイド長がおかした犯罪はヴィクトリア大国では結構有名らしく、ジジもこの事件のことを知っていたらしくあの男の話をしたら呆れと軽蔑の表情を浮かべていた。
「まあ、当時ウチの国戦争でバタバタしていたしな。何よりあの男もそうだけど家令とメイド長も他国に興味なかったんじゃないかな。」
「そういえば話は変わりますがレオン弁護官!!どうして教えてくれなかったんですか………………カルセドニー提督の息子さんと『赤毛の愛妾』が生きていることを。」
追求するロゼットにレオンは
「どうしてって……別に言う必要なかったから。」
「必要ないって……」
「……あのなロゼット、もしお前が思い出したくもない過去を掘り返そうとして絡んでくるヤツがいたらどうする?」
「どうするって。……それはちょっと、イヤですし、ほっといてほしいですよ。」
「そうだろう。それに『赤毛の愛妾』に関しては俺も最近まで知らなかったし……それに普通に生活を送っているのなら、ほっといたほうがいい。そう判断したから言わなかったんだ。」
レオンのその答えにロゼットは納得できないと眉をひそめる。
「ちなみにロゼット。お前2人に逢っているからな。」
「ええっ!?逢ってる?いつ?どこで?」
目をこれでもかと丸々見開き驚くロゼットにレオンは少し意地悪そうに薄紫色の瞳を細めて笑う。
「さあ、どこでしょうね?ところでロゼット・・・・俺たちはいつまでこの寒空の中にいるつもりなんだ。」
ジジが入院している病院の庭の中でレオンたちはピューッと冷たい風をうけながらジジとの面会を待っていた。
「ヴィクトリア大国の海軍のお偉い様と面会中ですからしばらくはここで待機ですね。」
ロゼットも寒いらしく両腕で自分の体を抱きしめ身を震わせる。
「向こうの海軍のお偉いさんかぁ……なんかこの間も来てなかったっけ?何しに来てるんだ。」
「ひょっとして、夫人…じゃなくてジジさんに興味があって口説いているとか。」
「え~、それは……ないんじゃないか。」
そんな会話から3週間後、ヴィクトリア大国に身柄を引き渡されたリッカルド=ミケーレ・ディッタトーレは海軍提督ナサニエル・カルセドニー子爵殺人及び海軍の機密情報を盗んだ罪で死刑判決を受け、強盗殺人及び人身売買の罪で同じく死刑判決を受けた乳父母ととともに同じ日にち処刑された。
ヴィクトリア大国では彼らは至上最悪の犯罪者として後世に名前が残ることとなる。
半年後、長い治療から開封したジジことジゼル・マリーンは祖国の海軍将軍からの求婚をうけ彼と再婚し、夫とともに祖国ヴィクトリア大国へと帰国した。
おわり
━━━━━━━━━━━━━
ご愛読いただきありがとうございます。
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男の逮捕から数週間後、レオンは一人で男が収容されている牢獄に脚を踏み入れた。
「何しに来た・・・」
牢屋の住人となった男は逮捕されてからずっと暴れ回り、守衛に対しても暴言を吐いたり当たり散らしているので、両手足を鎖で繋がれ体の自由を封じられていた。
「貴女に報告したいことがあるので、牢獄に来ました。」
「報告・・・?」
「ええっ、貴方の乳父母だった家令とメイド長が先ほど逮捕されました。」
「!?・・・・じいとばあやが・・・何故・・・?」
幼い頃から自分の味方だった2人が捕まったことに男は驚愕した。
「人身売買と殺人ですよ。貴方の家令とメイド長は当時、他国で若い女性のいる家に潜り込んでその家族を騙し、破滅させ、時には殺人をも犯し、若い女性を旧王家派の貴族達に『商品』として売り捌いていた。そして、とある村の牧師・・・神官の家に目を付けた。牧師の美しい妻を次の『商品』にするために2人は彼女を手に入れるために牧師と彼女の幼い子供を殺し、彼女を強引にこの国に連れ去りとある男に売り飛ばした・・・それが貴方の父上だった。」
「・・・・!?」
「 彼女は貴方お父上の慰み者にされ、貴方を産んですぐ亡くなった。けれど、牧師夫婦にはもう1人子供がいた。それがナサニエル・カルセドニー提督だった。」
「!?・・・・・なっ・・・」
「貴方はカルセドニー提督の親族が貴方のお母上を売ったといいましたがそれはまったく違います。貴方の乳母父だった家令とメイド長は自分の罪を隠すために貴方に嘘を教えたんです。」
「うっ・・・そだ・・・」
母親の仇の一族だと信じていた男が自分の父親違いの兄弟であるという真実に今まで自分の信じていたものがガラガラと崩れていく。
「それと、貴方は提督が金で海軍に入ったといいますがそれも大間違いです。提督は家族を失ったあと親戚の家をたらい回しにされ、海軍に勤めていた叔父のツテを頼って海軍に入って、自ら努力を重ねて提督にまで上り詰めたんです。」
「……」
レオンの話を聞いて男はガクリと頭を垂れると、「嘘だ」「そんなはずはない」とブツブツ呟きはじめた。
「……間違っていたと言うのか……この俺が……俺はジジさえいれば良かったのに。すべて思い通りになると思ったのに。」
ブツブツと自分勝手なことを呟く男の姿をレオンの薄紫色の瞳が冷たく見つめていた。
元王都都議会議員ミハエル・ド・ロゼルは王弟を示唆し謀反を企んだ上、テロ集団の教祖の名を騙り禁止薬物を利用して人々を操った反逆罪の罪で国外退去の末、急病で死去したと 発表された。
表向きは
「今日でしたよね。ロゼル卿・・・じゃなくてリッカルド氏がヴィクトリア大国に送検される日でしたよね。」
「・・・・そうだな。あと、元乳父母夫婦も。」
男の身柄を巡る大国との話合いの結果、ミハエル・ド・ロゼルという男を消し、主犯であるリッカルド=ミケーレ・ディッタトーレをカルセドニー提督の殺害の首謀者としてヴィクトリア大国に身柄を送る事が決定した。
また、その捜査の過程で数10年前に起きた強盗誘拐事件の真犯人である夫婦もリッカルド同様大国に送られることとなった。
「って言うか家令とメイド長の夫婦、自分の犯罪が向こうで大きな事件になっていること知らなかったんですね。」
家令とメイド長がおかした犯罪はヴィクトリア大国では結構有名らしく、ジジもこの事件のことを知っていたらしくあの男の話をしたら呆れと軽蔑の表情を浮かべていた。
「まあ、当時ウチの国戦争でバタバタしていたしな。何よりあの男もそうだけど家令とメイド長も他国に興味なかったんじゃないかな。」
「そういえば話は変わりますがレオン弁護官!!どうして教えてくれなかったんですか………………カルセドニー提督の息子さんと『赤毛の愛妾』が生きていることを。」
追求するロゼットにレオンは
「どうしてって……別に言う必要なかったから。」
「必要ないって……」
「……あのなロゼット、もしお前が思い出したくもない過去を掘り返そうとして絡んでくるヤツがいたらどうする?」
「どうするって。……それはちょっと、イヤですし、ほっといてほしいですよ。」
「そうだろう。それに『赤毛の愛妾』に関しては俺も最近まで知らなかったし……それに普通に生活を送っているのなら、ほっといたほうがいい。そう判断したから言わなかったんだ。」
レオンのその答えにロゼットは納得できないと眉をひそめる。
「ちなみにロゼット。お前2人に逢っているからな。」
「ええっ!?逢ってる?いつ?どこで?」
目をこれでもかと丸々見開き驚くロゼットにレオンは少し意地悪そうに薄紫色の瞳を細めて笑う。
「さあ、どこでしょうね?ところでロゼット・・・・俺たちはいつまでこの寒空の中にいるつもりなんだ。」
ジジが入院している病院の庭の中でレオンたちはピューッと冷たい風をうけながらジジとの面会を待っていた。
「ヴィクトリア大国の海軍のお偉い様と面会中ですからしばらくはここで待機ですね。」
ロゼットも寒いらしく両腕で自分の体を抱きしめ身を震わせる。
「向こうの海軍のお偉いさんかぁ……なんかこの間も来てなかったっけ?何しに来てるんだ。」
「ひょっとして、夫人…じゃなくてジジさんに興味があって口説いているとか。」
「え~、それは……ないんじゃないか。」
そんな会話から3週間後、ヴィクトリア大国に身柄を引き渡されたリッカルド=ミケーレ・ディッタトーレは海軍提督ナサニエル・カルセドニー子爵殺人及び海軍の機密情報を盗んだ罪で死刑判決を受け、強盗殺人及び人身売買の罪で同じく死刑判決を受けた乳父母ととともに同じ日にち処刑された。
ヴィクトリア大国では彼らは至上最悪の犯罪者として後世に名前が残ることとなる。
半年後、長い治療から開封したジジことジゼル・マリーンは祖国の海軍将軍からの求婚をうけ彼と再婚し、夫とともに祖国ヴィクトリア大国へと帰国した。
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