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その12 黒い紙
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きっかけは祖父のひと言からだった。
━お前、この春から予備校(今でいう高校)生だったよな。 今度入学してくる生徒をちょっと監視してくれないか?
監視しろと言ったその少年は自分と同い年のわりに一歩引いた落ち着いたどこか不思議な少年だった。
話しかけてみると、どこか抜けていて、ちょっと空気の読めないところがあるがレオンはそんな彼が好きだった。
祖父から彼のあまりにも理不尽で哀しい過去とその抱える罪を、彼がその罪を受け入れているのだと知ったとき、レオンは決意した。
自分は彼の味方でいようと……
・・・・あ~、これ本気でキレているな・・・・
男を殴ったレオンを見て、ロゼットは一瞬何が起こったのかわからなかったが、鋭い瞳で睨みつけるレオンの表情を見て本能的にそう感じた。
男は目の前のレオンの鋭い睨みと強い圧により、腰が抜けてしまい、立ち上がることができなくなっていた。
「貴方は、自分が何やったのか分かってんのか。己の欲望を満たすために本物のミハエル・ド・ロゼルを殺し、カルセドニー提督やその家族……使用人や幼い子供を手にかけた。唯一生き残ったアイツをも平気で道具扱いして、その上こき使ってやる?巫山戯るな!!貴方にアイツの人生を滅茶苦茶にする権利なんかない!!」
「なっ…………!?」
「貴方は依頼人やアイツだけじゃなく、多くの人間の人生を滅茶苦茶にしたんだ!!それにアイツのことをバケモノだと言っているが、アイツはバケモノなんかじゃない。貴方こそがバケモノだ!!」
レオンに殴られたうえ、バケモノだと言われた男はワナワナと身体を震わせる。
「こっ、この俺がバケモノだと…貴様、この俺を誰だと思っている?」
「「(頭のおかしい狂った/妄想ナルシスト)犯罪者」」
「ハモっていうな!!そこのオレンジ女、誰がナルシストだ!!」
「十分ナルシストかと思いますが。それに貴方いま、ご自分の罪を認めましたよね。」
「はっ……?」
罪を認めたと言われて、男は訳がわからずキョトンとする。そんな男をロゼットはまるで汚物でも見るかのような目で見ながらはっきりと告げた。
「ご自分がミハエル・ド・ロゼル氏を殺し、なりすましたこと。カルセドニー提督の事件の犯人であることをご自分で認めましたよね。」
「……………っ!?」
しまったと言うように男は顔を青ざめ両手で口を塞いだ。その瞬間
「突入!!」
その声と同時にドンッという音が外から聞こえてきた。
「なっ、なん……」
「貴方、ほんっとうに自分がどういう状況にいるのか知らなかったんですね。」
と呆れ顔のロゼットに男は「はっ?」と状況がまだ飲み込めていないのを見てレオンは思わず「この人、本当に都議会議員か?」と呟いた。
「屋敷の周辺に公安や法務省、それと警備兵が隠れて監視していたんですよ。危険人物である貴方を逮捕するためにね。」
「なっ……わたしは逮捕されるようなことはしていな…「ひと昔前のテロリスト集団の教祖の生まれ変わりを詐称し、禁止薬物を利用して人々を操った詐欺罪と薬事法違反。王弟殿下を利用してクーデターを企んだ国家反逆罪。また、彼の甥の婚約者を暗殺を計画した殺人未遂の首謀者……それと我々の依頼人に対する理不尽な人権侵害や殺人未遂など罪状はいくつもありますがそれでもまだ自分は悪くないとおっしゃるつもりですか。」
「っ…………」
怒りを孕んだレオンの薄紫色の瞳に睨まれ、男は怯むが、ふとあることに気づいた。
「ちょっと待て。元妻?元妻ってどういうことだ。」
「………ああ、そうでした。今朝こちらを訪れる前、裁判所の職員に貴方にコレを渡すように頼まれたんですよ。」
そう言うとレオンは懐から黒い封筒を取り出した。
「貴方の長年に渡る依頼人の理不尽な扱いと禁止薬物による本人の意思を無視した堕胎は倫理人権侵害に当たるものとして、今日付けで倫理人権侵害被害届を受理されたことに伴い、貴方と彼女の離婚が成立しました。」
「……ぅそだ……」
「それと、彼女から伝言を預かってきました。『いくらアナタが私を愛しているといっても許されないことがある。私はアナタを一生許せない。』だそうです」
黒い紙を懐に入れるとレオンは男に近づき、耳元で囁いた。
「……俺も親友の人生を滅茶苦茶にしようとした貴方を許せません。」
「………………え……」
「「んっ??」」
ガクッと膝をつき俯いていた男がクワッと目を見開き、顔をあげると……
「ぴぇぇぇ~~!!」
思いっきり泣きはじめたのだった。
「「ええっ~……??」」
━お前、この春から予備校(今でいう高校)生だったよな。 今度入学してくる生徒をちょっと監視してくれないか?
監視しろと言ったその少年は自分と同い年のわりに一歩引いた落ち着いたどこか不思議な少年だった。
話しかけてみると、どこか抜けていて、ちょっと空気の読めないところがあるがレオンはそんな彼が好きだった。
祖父から彼のあまりにも理不尽で哀しい過去とその抱える罪を、彼がその罪を受け入れているのだと知ったとき、レオンは決意した。
自分は彼の味方でいようと……
・・・・あ~、これ本気でキレているな・・・・
男を殴ったレオンを見て、ロゼットは一瞬何が起こったのかわからなかったが、鋭い瞳で睨みつけるレオンの表情を見て本能的にそう感じた。
男は目の前のレオンの鋭い睨みと強い圧により、腰が抜けてしまい、立ち上がることができなくなっていた。
「貴方は、自分が何やったのか分かってんのか。己の欲望を満たすために本物のミハエル・ド・ロゼルを殺し、カルセドニー提督やその家族……使用人や幼い子供を手にかけた。唯一生き残ったアイツをも平気で道具扱いして、その上こき使ってやる?巫山戯るな!!貴方にアイツの人生を滅茶苦茶にする権利なんかない!!」
「なっ…………!?」
「貴方は依頼人やアイツだけじゃなく、多くの人間の人生を滅茶苦茶にしたんだ!!それにアイツのことをバケモノだと言っているが、アイツはバケモノなんかじゃない。貴方こそがバケモノだ!!」
レオンに殴られたうえ、バケモノだと言われた男はワナワナと身体を震わせる。
「こっ、この俺がバケモノだと…貴様、この俺を誰だと思っている?」
「「(頭のおかしい狂った/妄想ナルシスト)犯罪者」」
「ハモっていうな!!そこのオレンジ女、誰がナルシストだ!!」
「十分ナルシストかと思いますが。それに貴方いま、ご自分の罪を認めましたよね。」
「はっ……?」
罪を認めたと言われて、男は訳がわからずキョトンとする。そんな男をロゼットはまるで汚物でも見るかのような目で見ながらはっきりと告げた。
「ご自分がミハエル・ド・ロゼル氏を殺し、なりすましたこと。カルセドニー提督の事件の犯人であることをご自分で認めましたよね。」
「……………っ!?」
しまったと言うように男は顔を青ざめ両手で口を塞いだ。その瞬間
「突入!!」
その声と同時にドンッという音が外から聞こえてきた。
「なっ、なん……」
「貴方、ほんっとうに自分がどういう状況にいるのか知らなかったんですね。」
と呆れ顔のロゼットに男は「はっ?」と状況がまだ飲み込めていないのを見てレオンは思わず「この人、本当に都議会議員か?」と呟いた。
「屋敷の周辺に公安や法務省、それと警備兵が隠れて監視していたんですよ。危険人物である貴方を逮捕するためにね。」
「なっ……わたしは逮捕されるようなことはしていな…「ひと昔前のテロリスト集団の教祖の生まれ変わりを詐称し、禁止薬物を利用して人々を操った詐欺罪と薬事法違反。王弟殿下を利用してクーデターを企んだ国家反逆罪。また、彼の甥の婚約者を暗殺を計画した殺人未遂の首謀者……それと我々の依頼人に対する理不尽な人権侵害や殺人未遂など罪状はいくつもありますがそれでもまだ自分は悪くないとおっしゃるつもりですか。」
「っ…………」
怒りを孕んだレオンの薄紫色の瞳に睨まれ、男は怯むが、ふとあることに気づいた。
「ちょっと待て。元妻?元妻ってどういうことだ。」
「………ああ、そうでした。今朝こちらを訪れる前、裁判所の職員に貴方にコレを渡すように頼まれたんですよ。」
そう言うとレオンは懐から黒い封筒を取り出した。
「貴方の長年に渡る依頼人の理不尽な扱いと禁止薬物による本人の意思を無視した堕胎は倫理人権侵害に当たるものとして、今日付けで倫理人権侵害被害届を受理されたことに伴い、貴方と彼女の離婚が成立しました。」
「……ぅそだ……」
「それと、彼女から伝言を預かってきました。『いくらアナタが私を愛しているといっても許されないことがある。私はアナタを一生許せない。』だそうです」
黒い紙を懐に入れるとレオンは男に近づき、耳元で囁いた。
「……俺も親友の人生を滅茶苦茶にしようとした貴方を許せません。」
「………………え……」
「「んっ??」」
ガクッと膝をつき俯いていた男がクワッと目を見開き、顔をあげると……
「ぴぇぇぇ~~!!」
思いっきり泣きはじめたのだった。
「「ええっ~……??」」
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