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その6 ミハエル・ド・ロゼルの裏事情③

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時を戻そう 
 
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遡ること1日前、エンリコ・ガル駐在武官が第3者意見司法機関サードセクションを訪れ、レオンと話がしたいとロゼットとアシュリー女史が退室した直後に話は戻る。



「・・・実はヴイクトリア大国がロゼル卿の身元を引き渡せとの要請がでているんです。」


ヴィクトリア大国はレオンたちの暮らすこの国の反対側にある国であり、正式名称はヴィクトリア・グリフォン大連合国。歴史的経緯から5つの国が連合した国家である。 
現王家がク一デタ一によって国を追われたとき、王族や貴族たちの大半はこの国に避難してきた。
また、ジジ・ロゼルもこの国の出身である。


「何故、ヴィクトリア大国がロゼル卿を?」


「・・・・・・・実は16年前にヴィクトリアで起きたとある犯罪の容疑者としてロゼル卿の名前があがっているんです。」


16年前と聞いてレオンの眉が一瞬ビクっと動いた。



「・・・ある犯罪とは・・・?」



それは16年前、ヴィクトリア大国で海軍に勤める男が妻と幼い娘、そして家令と侍女を殺し、自らも銃で頭を打ち自殺した事件が起きた。

一度は無理心中と判断されたが、心中にしてはあまりにも不自然なところが多く、自殺ではなく殺人だと判断され、長年捜査されてきた。


「実はその事件で・・・「その男には当時7歳の一人息子がいて、事件以来ずっと行方不明のままですよね。」・・・そうです。最近の調査でロゼル卿が捜査線上にあがってきたため、ヴィクトリア大国向こうとしては容疑者を一刻も捕まえたい。それに・・・この件は「ウチの国王陛下の耳にも入っている上、陛下もまた、ロゼル卿が犯人である証拠も握っている。そうですよね。」


「・・・どうして、それを………」

この情報はエンリコ含む一部の駐在武官や外務省しか知らないハズだ。それを弁護官であるレオンがすでに情報を掴んでいることには驚いた。

「その自殺した男の名前って、ナサニエル・カルセドニ一海軍提督ですよね。」


「・・・・・そうです。数年前の大戦で『海上の死神』と呼ばれ恐れられたヴィクトリア大国海軍最強の男です。しかしレオン弁護官、何故貴方はそこまでご存じなのですか?」


「・・・・・」


エンリコの問いにレオンは少し躊躇しながらも、ゆっくりと、重い扉を開けるように口を開いた。


「           」


「!?・・・・なん・・だって……?」


レオンの口から出てきた過去の真実にエンリコは目を見開き、ただただ驚愕するばかりだった。


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