愛していたって許されないことがある

keima

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その5  ミハエル・ド・ロゼルの裏事情②

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「ロゼル卿が外務省に目を着けられた理由は2つある。」


 そう言うとレオンはピッと指を2本出した。


「ひとつは『あの日の約束』の教祖の生まれ変わりと名乗ったこと。輪廻転生思想者とか自身を転生者って宣言する者は『危険分子』として、「自分は転生者だ!!」って言った時点で速攻逮捕される。」


「速攻!?ええっ厳しくないですか?」


「これもさあ、昔『あの日の約束』のメンバ一が自分は聖女の生まれ変わりだって言って自分の取り巻き利用して当時の教皇聖女様を暗殺を計画して失敗したことと、過去にも国家中央聖教会機関バスティアン関係者の殺害を企んだことが何度かあって以来、教会の方も黙って入られなくなって「自分は転生者だ」って宣言した人は現行犯逮捕っていう法案が通っちゃったんだよね。」


「ああ・・・しかもロゼル卿、自分は『あの日の約束』の教祖の生まれ変わりだなんていったんですよね。かなりヤバイじゃないですか。」 「そう、しかも真偽はどうあれ『あの日の約束』は今もなお世界で忌み嫌われる国際テロリスト。その名を名乗っている以上その罪は重い。」


「・・・ロゼル夫人はどうなるんですか?」


「彼女は卿との離婚を望んでいる。離婚が成立すれば彼女は国元に帰されるか、この国で暮らすか、今後のことは彼女が決めることだ。けれど・・・」

「…………やっぱり、難しいですか?」

「……そうだな。」

 フッと窓の外を見ると空は重い雲に覆われている。

「・・・・ロゼル卿が外務省に目をつけられたもうひとつの理由が……今、外務省にとある国からロゼル卿の身元を引き渡せという要請がでているんだよ。」


「身元の引き渡し・・・ですか?その国とロゼル卿どんな関係があるんですか?一体、何をしたんですか。」


「・・・・・・ロゼル卿は・・・」


 一一ロゼル卿は・・・


「・・・・人を殺したんだ。」


 一一一その国の軍人を自殺に見せかけ殺し、その家族も殺したんだ。




 ゴロゴロと雷が鳴り始めた頃、ミハエル・ド・ロゼルは自室で普段は飲まない酒を煽っていた。

「どうしてだジジ、どうしてどうして、どうしてわたしを捨てるんだ・・・……」


 ジメジメとした部屋の中に引きこもっているせいでミハエルの艶のあった髪はボサボサになり、ひげも伸び、かつては美しいと言われた美貌は見る影もない。


「・・・・・のせいだ。アイツが・・・あののせいで・・・」


 愛する妻がいなくなってもまだ現実を受け止めきれないミハエルの目は真っ赤に充血し、その奥底
 には狂気を孕んでいた。

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