24 / 24
最終話.
しおりを挟む~数ヶ月後
「その時私は言われましたわ。"シャティなら可憐に泣いて縋りついてくるのに!"と」
「まぁ、誰がそのような事するものですかっ!あの者に泣いて縋りつくくらいなら、王城の時計台から飛び降りてやりますわ!!」
「ふふっ、シャティ様ったら…。でも、私も同じ気持ちですわ」
ハインツとシャティ様の結婚式から早数カ月。
シャティ様と仲良くなり、こうしてよくお茶をする仲になった。
散々エルカルトにはシャティ様と比べられて貶められてきたのに、そのシャティ様とこうして仲良くなるだなんて夢にも思いもしなかった。
「セアラ!シャティ様もようこそいらっしゃいました」
ニコラス様が私達に手を振る。ニコラス様は領地の視察へ行っていたはずだが、服装が乱れ、葉っぱが付いている。
「ニコラス様、お帰りになられたのですね。お出迎えできず申し訳ございません。それにしてもニコラス様、何かあったのですか…?」
ニコラス様は数ヶ月前から伯爵家を継ぐためにこの領地の事をもっと学びたいと、伯爵家で共に暮らすようになった。
父の元について伯爵領について学んだり、領地の視察にも時間が許す限り行き領民にも慕われている。
「全然構いませんよ。こちらこそお楽しみの所を邪魔して申し訳無い。あぁ、これですか?視察の途中で気に登って降りる事ができなくなった子どもを助けまして。あ、これはお礼にと貰ったんです」
美味しそうな色をした野菜が沢山入った袋を持っている。
きっと、助けてもらった子どもの親御さんはニコラス様を見て卒倒した事だろう…。まさか公爵家のニコラス様が直々に木に登り我が子を助けてくれただなんて…。
「ニコラス様も帰られた事ですし、私もそろそろお暇させて頂きますわ。名残惜しいですけれど、すぐに会えますもの!セアラ様とニコラス様の結婚式で」
そうなのだ。
いよいよ1週間後に結婚式を控えているのだ。
勿論、ハインツとシャティ様にも出席して頂く。
「そうですね。よろしくお願いします」
「ふふ、楽しみですわ。くれぐれも、侵入者にはお気をつけくださいね」
いたずらげに笑うシャティ様。
思わずニコラス様と顔を見合わせて笑ってしまう。
さすがにエルカルトが私達の結婚式に乱入する事はできないだろう。
なぜなら、エルカルトは貴族に対する不敬罪(ニコラス様、我が伯爵家、シャティ様、ハインツ、アレックス様に対して)や、使用人に対する暴行罪その他諸々で、懲役128年、賠償金額はおよそ2億ダリー。
本来ならすぐに死を持って償うべきかもしれないが、丁度良く(?)未開の炭鉱が見つかり、重罪人たちがそこに集められ働く事になった。しかし、その者たちが日の目を見る事は二度とないだろう。勿論エルカルトも。
私達もそれで納得している。死を持って償うよりも、少しでも国のために働き人々の役に立つことが最善だろうと思うからだ。
日々はあっという間に過ぎ、いよいよ私達の結婚式の日が来た。
「セアラ、誰よりも綺麗だよ」
「ニコラス様…ニコラス様も誰よりも素敵ですわ…」
「さぁ、行こう」
ニコラス様の手を取り、皆から祝福を受けながら誓いを交わす。
神父様が、
「ここに2人の新しい夫婦が生まれた事を宣言致します!」
そう、高らかに宣言された時。
何やら扉の向こうから騒がしい音が聞こえてくる。
まっっまさかっ!!??
何やら見た事のある光景に冷や汗をかく。
ニコラス様が表情を変えずに扉の前まで向かい、扉を開くとそこには…!!
何と、数え切れない程の伯爵領民が垂れ幕や花を持って集まっていた。
私も思わずニコラス様の側へ向かう。
「あっ、すみませんっ!本日セアラ様とニコラス様が結婚されると聞き、一目でもお会いしてお祝いしたいと皆が集まってしまって……」
「ニコラス様っセアラ様っ結婚おめでとうございます!ニコラス様!前は助けてくれてありがとうございます!」
「おめでとうございますっ!」
次々に領民達が祝言を口にする。
"このような侵入者なら大歓迎ですね"
ニコラス様が私の耳元で囁くので、思わず2人で顔を見合わせて笑ってしまったのだった。
fin.
これで完結となります。
拙い文章でしたが、お読み頂きありがとうございました!
感想、お気に入り登録、大変励みになりました。
感想の返信が滞ってしまい申し訳ございません。全て読ませて頂いております。
次回作は少し、ほっこりを目指して執筆中です。
また、お読みいただけたら嬉しいです!
完結できたのは皆様のおかげです。ありがとうございました。
……天歌
504
お気に入りに追加
6,600
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(146件)
あなたにおすすめの小説

ここはあなたの家ではありません
風見ゆうみ
恋愛
「明日からミノスラード伯爵邸に住んでくれ」
婚約者にそう言われ、ミノスラード伯爵邸に行ってみたはいいものの、婚約者のケサス様は弟のランドリュー様に家督を譲渡し、子爵家の令嬢と駆け落ちしていた。
わたくしを家に呼んだのは、捨てられた令嬢として惨めな思いをさせるためだった。
実家から追い出されていたわたくしは、ランドリュー様の婚約者としてミノスラード伯爵邸で暮らし始める。
そんなある日、駆け落ちした令嬢と破局したケサス様から家に戻りたいと連絡があり――
そんな人を家に入れてあげる必要はないわよね?
※誤字脱字など見直しているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
双子の妹を選んだ婚約者様、貴方に選ばれなかった事に感謝の言葉を送ります
すもも
恋愛
学園の卒業パーティ
人々の中心にいる婚約者ユーリは私を見つけて微笑んだ。
傍らに、私とよく似た顔、背丈、スタイルをした双子の妹エリスを抱き寄せながら。
「セレナ、お前の婚約者と言う立場は今、この瞬間、終わりを迎える」
私セレナが、ユーリの婚約者として過ごした7年間が否定された瞬間だった。

捨てた私をもう一度拾うおつもりですか?
ミィタソ
恋愛
「みんな聞いてくれ! 今日をもって、エルザ・ローグアシュタルとの婚約を破棄する! そして、その妹——アイリス・ローグアシュタルと正式に婚約することを決めた! 今日という祝いの日に、みんなに伝えることができ、嬉しく思う……」
ローグアシュタル公爵家の長女――エルザは、マクーン・ザルカンド王子の誕生日記念パーティーで婚約破棄を言い渡される。
それどころか、王子の横には舌を出して笑うエルザの妹――アイリスの姿が。
傷心を癒すため、父親の勧めで隣国へ行くのだが……
妹ばかり見ている婚約者はもういりません
水谷繭
恋愛
子爵令嬢のジュスティーナは、裕福な伯爵家の令息ルドヴィクの婚約者。しかし、ルドヴィクはいつもジュスティーナではなく、彼女の妹のフェリーチェに会いに来る。
自分に対する態度とは全く違う優しい態度でフェリーチェに接するルドヴィクを見て傷つくジュスティーナだが、自分は妹のように愛らしくないし、魔法の能力も中途半端だからと諦めていた。
そんなある日、ルドヴィクが妹に婚約者の証の契約石に見立てた石を渡し、「君の方が婚約者だったらよかったのに」と言っているのを聞いてしまう。
さらに婚約解消が出来ないのは自分が嫌がっているせいだという嘘まで吐かれ、我慢の限界が来たジュスティーナは、ルドヴィクとの婚約を破棄することを決意するが……。
◆エールありがとうございます!
◇表紙画像はGirly Drop様からお借りしました💐
◆なろうにも載せ始めました
◇いいね押してくれた方ありがとうございます!

人の顔色ばかり気にしていた私はもういません
風見ゆうみ
恋愛
伯爵家の次女であるリネ・ティファスには眉目秀麗な婚約者がいる。
私の婚約者である侯爵令息のデイリ・シンス様は、未亡人になって実家に帰ってきた私の姉をいつだって優先する。
彼の姉でなく、私の姉なのにだ。
両親も姉を溺愛して、姉を優先させる。
そんなある日、デイリ様は彼の友人が主催する個人的なパーティーで私に婚約破棄を申し出てきた。
寄り添うデイリ様とお姉様。
幸せそうな二人を見た私は、涙をこらえて笑顔で婚約破棄を受け入れた。
その日から、学園では馬鹿にされ悪口を言われるようになる。
そんな私を助けてくれたのは、ティファス家やシンス家の商売上の得意先でもあるニーソン公爵家の嫡男、エディ様だった。
※マイナス思考のヒロインが周りの優しさに触れて少しずつ強くなっていくお話です。
※相変わらず設定ゆるゆるのご都合主義です。
※誤字脱字、気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません!

私を売女と呼んだあなたの元に戻るはずありませんよね?
ミィタソ
恋愛
アインナーズ伯爵家のレイナは、幼い頃からリリアナ・バイスター伯爵令嬢に陰湿ないじめを受けていた。
レイナには、親同士が決めた婚約者――アインス・ガルタード侯爵家がいる。
アインスは、その艶やかな黒髪と怪しい色気を放つ紫色の瞳から、令嬢の間では惑わしのアインス様と呼ばれるほど人気があった。
ある日、パーティに参加したレイナが一人になると、子爵家や男爵家の令嬢を引き連れたリリアナが現れ、レイナを貶めるような酷い言葉をいくつも投げかける。
そして、事故に見せかけるようにドレスの裾を踏みつけられたレイナは、転んでしまう。
上まで避けたスカートからは、美しい肌が見える。
「売女め、婚約は破棄させてもらう!」

【完結】他人に優しい婚約者ですが、私だけ例外のようです
白草まる
恋愛
婚約者を放置してでも他人に優しく振る舞うダニーロ。
それを不満に思いつつも簡単には婚約関係を解消できず諦めかけていたマルレーネ。
二人が参加したパーティーで見知らぬ令嬢がマルレーネへと声をかけてきた。
「単刀直入に言います。ダニーロ様と別れてください」

初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
とっても面白かったです。
ハッピーエンドで、ざまぁでよかったです。
誤字だと思うんですが、
ニコラス様が視察の途中で気に登るは木に登るかなぁと思いました。細かくてすみません。
一気読みさせてもらいましたーw
面白かったです(^^)
わー!!嬉しいです!!ありがとうございます!
これからも頑張ります(^^)
以前一度読んで面白かったため、もう一度読み返しましたがやっぱり面白かったです。これからも躰に気をつけてご自分のペースで作品を書かれて下さいね。
なんて嬉しいお言葉!!ありがとうございます!!
この一年バタバタしてしまい離れていましたが、また投稿したいと思います。良ければお付き合いください(^^)!