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23.名前を
しおりを挟む「ごほっそのっ!!失礼しました…。咄嗟に呼び捨てしてしまって…」
ちょっと待って…?いつも何でも卒なくこなしてしまって、完璧で、いつでも余裕があるニコラス様がむせてしまう程焦って、その上顔を真っ赤にして照れている…!
その様子を見て私まで赤面してしまう。
「いえ…その嬉しかったのです。ニコラス様が良ければこれからもセアラと呼んで頂けませんか?」
「セ、セアラ…」
私の名を呼んで顔を赤らめるニコラス様に、私の心臓はキュッと掴まれたようだ…。
二人して耳まで真っ赤にしていると…
「ニコラス様っ…!セアラ嬢…!!この度は本当に、本当に申し訳ございませんでした…っ!」
振り向けば、顔面蒼白なエルカルトの義兄アレックス様が頭を下げていた。
きっと、新郎新婦の元へもこうして謝罪へ行っていたのだろう…。
「顔を上げてください、アレックス様の責任ではありませんわ」
「随時監視の報告はさせていたのですが…。エルカルトにここまでの行動力があるとは…全て、ルーツベット侯爵家の責任です…!どのように償えば良いか見当もつきません…」
アレックス様は早くに祖父を亡くして母親を一人で守り、領地は天災に見舞われ、更に父親には苦労させられ、腹違いの弟が大罪を犯すという…1番の被害者は彼なのでは無いかと感じる。
「大丈夫ですよ、私はもう気にしておりませんから。アレックス様は今は領地の事を第一にお考えください」
エルカルトが暴走してくれたおかげで婚約解消ができ、更にニコラス様と婚約ができたのだから結果的には良かったとすら思う。
エルカルトが結婚まで大人しく猫をかぶっていれば、今頃結婚式を挙げていたのは自分だと思うと、心底ゾッとする。
「セアラ嬢…。慈悲深いお言葉ありがとうございます…この先、セアラ嬢やニコラス様に助けが必要になった時、力になれるよう今は侯爵領を立て直していきたいと思います」
「ふふ、心強いですわ」
アレックス様は一礼した後、他の参列者の元へ謝罪へ向かった。
「今後、ルーツベット侯爵家とは良い関係を築いていくことができそうですね」
ニコラス様が満足そうに微笑む。
「えぇ、そう思いますわ。アレックス様は力がある方ですので心強いですね」
「目の前で他の男性を褒められるなんて…私も負けていられませんね…?」
「…!いえっ…そのそのような意味では…!」
「ふふ、冗談ですよ」
あぁ、もう私はニコラス様の手のひらの上でコロコロと転がされている…
でも、こんな時間がこれからも続いて欲しいと心から思うのだった。
その後、ハインツとシャティ様も私達の元へ礼と謝罪へ来てくださり、初めてお話したシャティ様と酷い目に会った者同士?意気投合。
すっかり仲良くなった私達は後日お茶のお約束もしたのだった。
ニコラス様も私の幼い頃の話をハインツにこっそり聞いていたりして、仲良くなっているようだった…。
何を言っていたのか気になる…。
色々とあった一日だが、新郎新婦は幸せそうだったし、私もニコラス様との距離が近付いたような気のする幸せな一日となったのだった。
次回、最終話です。
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