婚約者に初恋の従姉妹といつも比べられて来ましたが、そんなに彼女が良いならどうぞ彼女とお幸せに。

天歌

文字の大きさ
上 下
21 / 24

21.…気持ち悪い

しおりを挟む

「神に誓って言っておりません。幼い頃の話とは言え伯爵令嬢として幼少の頃から教育を受けており、そのような軽はずみな事を口にするはずがありません」

「いや!確かに言ったぞ!侯爵家の料理人が作ったクッキーを食べて、"こんな美味しいクッキー食べた事がありません!毎日でも食べたいです!"と。私の目をウットリとみつめながらシャティは言ったんだ……」


……はい?
えーっと…。
"こんな美味しいクッキーを食べた事がありません、毎日でも食べたいです!"という5歳の女の子の言葉をどうして"貴方のお嫁さんになりたい"と受け取る事ができるのだろうか…。誰か説明して欲しい…
そう思い周りの人をちらりと見るが、皆同じ事を思っているようでポカンとして固まっている。
それはシャティ様も例外では無いようだ。

「…は?それのどこが結婚の約束になるのでしょうか…?」

「ふふ、毎日侯爵家のクッキーが食べたいのだろう?私に嫁いで毎日侯爵家でこのクッキーを私と共に食べたいというシャティからのプロポーズだろう?私は感動して即座にこう返したさ。"勿論!喜んで!"と…!あぁ、無邪気に笑うシャティ…本当に本当に可愛かった…!それなのに今のシャティはこんなにもブクブク太って…。しかしまぁ痩せれば良いさ、中身は純粋無垢なシャティのままさ」

その日の事を自分に酔いしれながら話すエルカルト。
きっと、その時の記憶の中のシャティ様は5歳の少女の姿で…。
いや、怖い。怖すぎる…。
近くにいた小さな娘と参列しているどこの家かの夫人も、傍にいた娘をギュッと抱き締める。

「…もち……い…」

シャティ様が怯えた様子で何かを呟いた。

「ん!?なんだ、シャティ。やっと思い出してくれたのか!?」

エルカルトは鼻を膨らませ、シャティ様に一歩近付く。
その瞬間。

「…気持ち悪い…!」

ゴミを見るような目でエルカルトを見て、シャティ様が言った。

「へっ…!?きっきっき…」

「気持ち悪いと言っているのです!誰だって花を頂けば喜びますし、目の前で怪我をした人がいれば心配します。クッキーが美味しければ美味しいと言います!それを勝手に変な解釈をして勘違いをして沢山の方に迷惑をかけて…こんなにも気持ち悪い人を私は見た事がありません!もう良いです。同じ空間にいるだけで吐き気がしますわ!この者を自警団に突き出してください」

「シャッシャティ!?嘘だろ!?見た目だけでなく中身まで醜くなってしまったのか!?シャティが私にこの結婚式に来て欲しいと手紙を送ってきたのではないのか…!?気持ち悪いってこの、私が!?嘘だっうぐっっ」

「侯爵家にこの結婚式の知らせを送ったのは私だ。一応親族だからな。しかしお前は親族でも貴族でも無いっ…!私の娘の大切な日をよくも台無しにしてくれたな…!ここで切り捨ててやりたいが祝の席だ…極刑を怯えながら待つが良い!」

「ひぃ!叔父上!く、くるひぃ…」

怒り心頭なシャティ様の父、ベルモンド子爵がエルカルトの胸ぐらを掴み言い放つ。

「そ、そんな…本当に…?シャティは私の事を愛してない…?」

「私が愛しているのは今も昔もハインツ様だけです」
「シャティ…」

2人がお互いを見つめ合う。その姿を見てエルカルトは現実が見えて来たようだ。エルカルトの目にいっぱいの涙が溜まる。

「う、嘘だ嘘だ嘘だっ!!それならば私はこれからどうなってしまうのだ…!どうしようどうしようどうしよ………」

取り乱すエルカルトと目が合ってしまった。
その瞬間エルカルトは何かを思い付いたようにハッとし、虚ろな目でニヤリと笑った。



あ…。嫌な予感がする…。





しおりを挟む
感想 146

あなたにおすすめの小説

ここはあなたの家ではありません

風見ゆうみ
恋愛
「明日からミノスラード伯爵邸に住んでくれ」 婚約者にそう言われ、ミノスラード伯爵邸に行ってみたはいいものの、婚約者のケサス様は弟のランドリュー様に家督を譲渡し、子爵家の令嬢と駆け落ちしていた。 わたくしを家に呼んだのは、捨てられた令嬢として惨めな思いをさせるためだった。 実家から追い出されていたわたくしは、ランドリュー様の婚約者としてミノスラード伯爵邸で暮らし始める。 そんなある日、駆け落ちした令嬢と破局したケサス様から家に戻りたいと連絡があり―― そんな人を家に入れてあげる必要はないわよね? ※誤字脱字など見直しているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

捨てた私をもう一度拾うおつもりですか?

ミィタソ
恋愛
「みんな聞いてくれ! 今日をもって、エルザ・ローグアシュタルとの婚約を破棄する! そして、その妹——アイリス・ローグアシュタルと正式に婚約することを決めた! 今日という祝いの日に、みんなに伝えることができ、嬉しく思う……」 ローグアシュタル公爵家の長女――エルザは、マクーン・ザルカンド王子の誕生日記念パーティーで婚約破棄を言い渡される。 それどころか、王子の横には舌を出して笑うエルザの妹――アイリスの姿が。 傷心を癒すため、父親の勧めで隣国へ行くのだが……

私を売女と呼んだあなたの元に戻るはずありませんよね?

ミィタソ
恋愛
アインナーズ伯爵家のレイナは、幼い頃からリリアナ・バイスター伯爵令嬢に陰湿ないじめを受けていた。 レイナには、親同士が決めた婚約者――アインス・ガルタード侯爵家がいる。 アインスは、その艶やかな黒髪と怪しい色気を放つ紫色の瞳から、令嬢の間では惑わしのアインス様と呼ばれるほど人気があった。 ある日、パーティに参加したレイナが一人になると、子爵家や男爵家の令嬢を引き連れたリリアナが現れ、レイナを貶めるような酷い言葉をいくつも投げかける。 そして、事故に見せかけるようにドレスの裾を踏みつけられたレイナは、転んでしまう。 上まで避けたスカートからは、美しい肌が見える。 「売女め、婚約は破棄させてもらう!」

妹ばかり見ている婚約者はもういりません

水谷繭
恋愛
子爵令嬢のジュスティーナは、裕福な伯爵家の令息ルドヴィクの婚約者。しかし、ルドヴィクはいつもジュスティーナではなく、彼女の妹のフェリーチェに会いに来る。 自分に対する態度とは全く違う優しい態度でフェリーチェに接するルドヴィクを見て傷つくジュスティーナだが、自分は妹のように愛らしくないし、魔法の能力も中途半端だからと諦めていた。 そんなある日、ルドヴィクが妹に婚約者の証の契約石に見立てた石を渡し、「君の方が婚約者だったらよかったのに」と言っているのを聞いてしまう。 さらに婚約解消が出来ないのは自分が嫌がっているせいだという嘘まで吐かれ、我慢の限界が来たジュスティーナは、ルドヴィクとの婚約を破棄することを決意するが……。 ◆エールありがとうございます! ◇表紙画像はGirly Drop様からお借りしました💐 ◆なろうにも載せ始めました ◇いいね押してくれた方ありがとうございます!

双子の妹を選んだ婚約者様、貴方に選ばれなかった事に感謝の言葉を送ります

すもも
恋愛
学園の卒業パーティ 人々の中心にいる婚約者ユーリは私を見つけて微笑んだ。 傍らに、私とよく似た顔、背丈、スタイルをした双子の妹エリスを抱き寄せながら。 「セレナ、お前の婚約者と言う立場は今、この瞬間、終わりを迎える」 私セレナが、ユーリの婚約者として過ごした7年間が否定された瞬間だった。

人の顔色ばかり気にしていた私はもういません

風見ゆうみ
恋愛
伯爵家の次女であるリネ・ティファスには眉目秀麗な婚約者がいる。 私の婚約者である侯爵令息のデイリ・シンス様は、未亡人になって実家に帰ってきた私の姉をいつだって優先する。 彼の姉でなく、私の姉なのにだ。 両親も姉を溺愛して、姉を優先させる。 そんなある日、デイリ様は彼の友人が主催する個人的なパーティーで私に婚約破棄を申し出てきた。 寄り添うデイリ様とお姉様。 幸せそうな二人を見た私は、涙をこらえて笑顔で婚約破棄を受け入れた。 その日から、学園では馬鹿にされ悪口を言われるようになる。 そんな私を助けてくれたのは、ティファス家やシンス家の商売上の得意先でもあるニーソン公爵家の嫡男、エディ様だった。 ※マイナス思考のヒロインが周りの優しさに触れて少しずつ強くなっていくお話です。 ※相変わらず設定ゆるゆるのご都合主義です。 ※誤字脱字、気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません!

【完結】他人に優しい婚約者ですが、私だけ例外のようです

白草まる
恋愛
婚約者を放置してでも他人に優しく振る舞うダニーロ。 それを不満に思いつつも簡単には婚約関係を解消できず諦めかけていたマルレーネ。 二人が参加したパーティーで見知らぬ令嬢がマルレーネへと声をかけてきた。 「単刀直入に言います。ダニーロ様と別れてください」

妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした

水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」 子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。 彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。 彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。 こんなこと、許されることではない。 そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。 完全に、シルビアの味方なのだ。 しかも……。 「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」 私はお父様から追放を宣言された。 必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。 「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」 お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。 その目は、娘を見る目ではなかった。 「惨めね、お姉さま……」 シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。 そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。 途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。 一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。

処理中です...