婚約者に初恋の従姉妹といつも比べられて来ましたが、そんなに彼女が良いならどうぞ彼女とお幸せに。

天歌

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19.シャッシャティーーー!!

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「いよいよ始まりますね…楽しみです。私、失礼ながらシャティ様の事をあまり存じていないのです。元婚約者は、それはそれはシャティ様の事を褒め称えていました。私とは比べ物にならないと」

っと…。私は、婚約者であるニコラス様に元婚約者の話をするなんて…。

始まる前のこの時間が1番もどかしいながらも楽しみであり結婚式の醍醐味のような気がする。
ハインツを純粋にお祝いする気持ちと、エルカルト元婚約者があれだけ褒め称えていた女性を見てみたい気持ちという少しの邪な気持ちが交差しあい、より一層期待が膨れ上がる。
シャティ様はどれだけ洗練された美しい方なのだろう。

「セアラ嬢とシャティ様を比較して比べ物にならない…?女性にそんなにも失礼な事を言う男がいるのですね…。シャティ様は、騎士団の同僚の妹君で何度かお会いしましたが…私にとったらセアラ嬢が1番です。勿論、女性を比べる事は低俗な男がする事だと思いますがね」

そう言って顔を覗き込むように私に笑いかけるニコラス様…。
間違いなく、貴方が優勝です…。思わず赤面してしまい視線をそらしてしまう。

と、その時。
大きな拍手が響き渡り、教会の扉が開け放たれ新郎新婦が入場した。

「2人共…綺麗…」

思わず感嘆によりため息をついてしまう。
男性に綺麗という言葉は間違えているかもしれないが、一人の貴族として男としての決意が表情に現れている。その真っ直ぐ前を見据える彼はとても凛々しい。

シャティ様は、想像していた女性とは違い、ふくよかで笑顔の素敵な柔らかい雰囲気の優しそうな女性だった。ハインツを見るその目は政略結婚とはいえ、彼をとても愛しているようだ。

想い合うであろう2人はとても美しく、胸が打たれるものがあった。

「素敵な2人ですね」
「はい…とても…」

幸せのおすそ分けを貰い、心が暖かくなる。

二人が神父様の前に立ち、参列者の方を向く。

「ここに新たな夫婦が誕生した事を宣言致します」

神父様がそう高らかに宣言され、皆が拍手で2人の門出を祝おうとしたその時。


「まっ!!待て!!その結婚はっ無効だっ!入れろ!私を誰と思っているんだっ!なっなぜ入れないのだ!」

やけに入口付近が騒がしい。
この声は……。
激しく嫌な予感がする。

「なんの騒ぎだ」
騒ぎに気が付いたハインツが衛兵に尋ねる。

「はっ。その…何でもシャティ様の夫となる男と名乗る者が暴れていまして…今すぐに追い返します!」
衛兵が頭を下げその男のもとへ向かおうとした。
しかし、その背中に意外な人物が声をかけた。

「待ってください」

「…シャティ!?」

何とシャティ様だ。


「私には全く身に覚えがありませんが、そのように言われている事は不愉快極まりません。また、ここにいる皆様方は大切な方ばかりです。そんな皆様方に心配をかけたり誤解をして頂きたくありません。ですので、この場ではっきりとさせたいと思います。その者を中に通してください」

シャティ様…!?
話し方はとても冷静だが、その顔や声には怒色が伺える。
シャティ様の言葉で、衛兵がおずおずとその者を連れて入る。

「シャッシャッシャッティーーー!!!」

拘束されつつ叫びながら入ってきた薄汚い男はやはり…。


エルカルトだった。



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