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18.前座
しおりを挟む「ねぇマリア、このドレス少し派手すぎないかしら?前髪は上げたほうが良かったかしら…。私、何だか太ってしまっていない…?ニコラス様から頂いた美味しいお菓子を食べすぎたかしら…」
あっという間に時間は経ち、いよいよ今日は従兄とシャティ様の結婚式。
鏡を見ながら侍女のマリアに何度も確認して貰う。
「ふふ、セアラ様。なんだかセアラ様の結婚式のようですね。大丈夫ですよ。ドレスもお似合いですし、とってもお綺麗ですわ」
「う…」
今日の主役は結婚する2人だと言う事は分かってはいるけれど、ニコラス様の隣を歩いても恥ずかしくないくらいにはなりたい…。
「さ、ニコラス様がいらっしゃったようです。いきましょう」
わざわざ伯爵家にまで迎えに来てくださったのだ。
「セアラ嬢、とても綺麗ですね」
そう言って微笑むニコラス様の手を取り馬車に乗り込むと、後ろから父の視線を感じた。
「セアラ…いつも父の後を着いて回っていたのに…くぅ…」
お父様…心の中で呟いているつもりかもしれませんが…聞こえています…。
父には同じ馬車で行こうと提案した。
しかし、"2人の邪魔するわけにはいかん!"と断ったのは父であるのに…。
ここは聞こえないふりをするしか無い…。
「??セアラ嬢?どうかしましたか?」
「いえ、何でもありませんわ」
ニコラス様に心配され笑顔で答える。
ニコラス様と見る車窓からの景色はいつもより一層色鮮やかに見える。
この領地の良い所、更に改善できる所など到着まで話が尽きる事は無かった。
むしろこの話題ならば父も一緒に盛り上がる事が出来ただろう…
式を挙げる教会に着いた。
男爵家と子爵家の結婚式だが、参列者はそれなりに多いようだ。
馬車から降りると、私に一斉に視線が集まる。
きっと婚約解消の件だろう。
父は従兄ハインツの父、ジュードレン男爵に挨拶され話しているようだ。
「見て、スティーカー伯爵令嬢よ。婚約解消したって聞きましたけど、親戚の結婚式に参列するなんてどんな気持ちでしょうね?」
「私だったら惨めで結婚式なんて出られませんわ」
クスクスと陰口が聞こえてきた。
あの令嬢は…確かモブ伯爵令嬢…。昨年あたりに陛下に私と比べられて"同じ伯爵令嬢なのに教養が乏しい"などと言われそれから何かと目の敵にされていた。
ここは祝の場。余計な騒ぎは起こしたく無い。そう思い聞こえていないふりをしようとしたが…。
「奇遇ですね、モブ伯爵令嬢。お久しぶりです」
ニコラス様が笑顔でモブ伯爵令嬢に話しかけた。
お二人は知り合いだったのかしら…?
「ニッニコラス様ぁ?珍しいですわねっ!なぜここにっ?」
モブ伯爵令嬢は急に声色を変え、嬉しそうにニコラス様に近付いてくる。
するとニコラス様はモブ伯爵令嬢に見せつけるように私の背に手を回した。
「我が婚約者の従兄殿の結婚式でね…。愛する婚約者を傷付ける不躾な者がいるかもしれないと共に参列させて貰ったのですよ…」
そう言うニコラス様は笑っているが、その目は冷たく声も恐ろしい。
「ひっ…!ニコラス様の婚約者っ!?しっ失礼しましたっ」
さすがのモブ伯爵令嬢もニコラス様のただならぬ怒りに気が付いたようで後ずさりその場から姿を消した。
「デイアリー公爵家のニコラス様とセアラ嬢が婚約?やはり、セアラ嬢が婚約破棄されたなどという噂は嘘だったんだ」
「ニコラス様とセアラ嬢は本当に婚約されたのだな」
その様子を見た周りの者達も話し始める。
ニコラス様との婚約はまだ日が浅く知らない者が多かったようだ。
「ニコラス様、モブ伯爵令嬢とお知り合いだったのですね」
「あぁ、よく数名の令嬢が騎士団の訓練所に邪魔しに…いえ、見学しにきていてよく話しかけられていたので」
なるほど、モブ伯爵令嬢はニコラス様を狙っていたのだろう…。
遠くの方で落ち込んでいる様子のモブ伯爵令嬢が見える…。
「さあ、そろそろ新郎新婦が登場のようですよ」
いよいよ、結婚式が始まるようだ。
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