婚約者に初恋の従姉妹といつも比べられて来ましたが、そんなに彼女が良いならどうぞ彼女とお幸せに。

天歌

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17.思いがけない提案

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ニコラス様は改めて父にも婚約の申し入れをしてくださった。
その後デイアリー公爵からも正式に婚約の申し入れがあり、ニコラス様と私の婚約は正式に取り決められた。


父はエルカルトの件をかなり負い目に感じていたのか、私達の婚約が決まった日の夜は珍しく一人で果実酒を開けて、遅くまで母の肖像画に語りかけていた。
私はそんな父の姿を扉の隙間から見つけてしまい、そっと見ないふりをしたのだった。


婚約が決まってから数日後。

ニコラス様と伯爵家でお茶をしていると父が視察から帰ってきて共にお茶を頂く事にした。

「そういえば2週間後に母が茶会を開くようで、ぜひセアラ嬢もどうかと言っているのですがどうでしょうか?」

公爵夫人には先日お会いしたが、とても高貴でいらっしゃるのにどこか物腰柔らかく素敵な方だった。勿論参加したい…と思ったが…。

「2週間後…ですか…」
2週間後は従兄とシャティ様の結婚式の予定だ。

「何か先約がありますか?」

「2週間後に従兄の結婚式があり参列予定なのです」

「従兄殿の。それはそちらを優先して頂かなければいけませんね。お相手はどこの方なのですか?」

「申し訳ございません…。相手はベルモンド子爵令嬢でして実は…」

わざわざ話す事では無いかもしれないが、結婚式へ行くと元婚約者の元家族と会うことになるかもしれない。
シャティ様の事を黙っておく理由も無いので、エルカルトと私の婚約解消の理由、そしてその婚約解消の1つの原因となった元婚約者の想い人と自分の従兄が偶然にも結婚する事等を説明した。

「なるほど…!それは物凄い偶然ですね…!」

「私達も従兄の結婚相手を聞いて驚きました。勿論、その結婚式に元婚約者のエルカルト様は参列されないはずですが…」

今や平民である彼がこの結婚を知る由もない上に、知った所で参列できるはずがない。

「そうですか…。その結婚式ですが、私も参列する事は可能でしょうか?」

「えっ?」
従兄のハインツとシャティ様の結婚式にニコラス様も参加…?確かに、正式に婚約をしたので参列は可能ではあるだろうけれど…どうしたら…。助けを求めるように父をちらりと見やる。

「ニコラス様が宜しければ勿論可能でございますが…」

「それならば共に参列させてください。セアラ嬢の婚約解消についていらぬ噂話をしている者もいるそうです。私と参加する事で、侯爵家の非で婚約解消をした事や、改めて私と婚約した事を周囲に知らしめる事もできますし…」

確かに急成長している我が伯爵家を面白く思わない家が、ルーツベット侯爵家と婚約解消した事を変な勘ぐりをしてこちら側に非があるなどと噂をしている者もいるとは聞いていた。
しかし、私がこの国屈指のデイアリー公爵家のニコラス様と婚約したとなると、必然的にエルカルトとの婚約解消はルーツベット侯爵側に非があった事と周囲に知らしめる事になるだろう。こちらに原因があり婚約破棄されたのであれば、名家の公爵家と婚約などできるはずが無いからだ。

そこまで伯爵家や私の事を考えてくださっている事がとても嬉しい。

「良いの…ですか??」

「勿論です。それに私は騎士です。護衛には自信があります。万が一の場合でも必ずセアラ嬢を守ってみせます」

「ニコラス様…ありがとうございます」

幸せな結婚式に万が一という事態は無いだろうが…その気持ちがとても嬉しく、また思いがけず共に出かける事ができる事に心躍るのだった。




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