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12.必ず救い出してみせる!(エルカルト視点)
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やっとこの地獄から開放される!
そのような気持ちでスキップしたい欲動を抑えながら執務室へ向かう。
執務室を開けるとそこには偉そうに机に向かい仕事をしているフリの兄がいた。
私が部屋へ入ると、手を止めてこちらを睨みつけながら話し始めた。
「エルカルトよ。この3日間使用人として働いてどうだったか」
「あぁ、ここの使用人は最悪だ!性根が腐っている!!どいつもこいつも子供じみた嫌がらせをしてくる小さい人間ばかりだ!こんな使用人を雇っていると侯爵家が馬鹿にされてしまうだろう」
ふふふ、言ってやったぜ!これでサル野郎を含めた嫌がらせをしてきたアイツらは全員クビだ!!ざまぁみろ!
「性根が腐っている…か。それくらいはお前でも分かったか」
あ、兄上…。もしかして私を使用人として働かせた理由は、使用人の内部を探らせる為だったのか…!?これから兄弟力を合わせ侯爵家を改革していく為の初仕事だったのか…!?
「兄上…っ!」
一歩兄に歩み寄ろうとすると、側に仕えていた警備兵が私の前に立ちはだかる。
な、なんだ?
「その通りだ。立場が弱い者に向かい度重なる嫌がらせを続けるなど性根が腐っており器の小さな人間であって、この屋敷に置くなど恥でしか無い」
うんうん、兄上もたまには良い事を言うじゃないか。
「最後にお前にその事を理解させる為に使用人として働かせたのだ。お前の引き取り先の都合もあったがな」
ん?
「お前は長年使用人たちに嫌がらせを繰り返し虐めていたな。彼等に、今までお前にされた仕打ちのほんの一部を同じように仕返して貰ったのだ。お前の言う通り、そのような人間をこの屋敷に置く事はできないのでさっさと出て行くが良い。表に荷車がある。荷車を用意してやったのは義理の兄としての最後の情けだ」
虐め…?
そ、そういえば確かに…。
水の入ったバケツを蹴飛ばした事もあったし、2階から汚いバケツの水をワザとかけたり、すれ違いざまに足をかけたり、掃除した所にツバを吐いたりした事…その他こんな事あんな事…あったかもしれない…。
いや…でもあれは使用人達が図に乗ってはいけないと思って…。
別に父も咎めなかったし…。
思い出しながら血の気が引いていく。
ま…まずいぞ…。それじゃあ私は本当に…辺境に…?
「あ、兄上…」
「さらばだ、きちんと借金は返済しろよ。そして侯爵家の名を二度と語るな」
そのまま執務室を追い出され、屋敷も追い出される。
そこには痩せこけたロバニ匹と荷車と父がいた。
こ、こんなので辺境まで辿り着けるのか…?
嫌だ…嫌だ嫌だ!
それにシャティ…!
私がいなくなったのならば誰がシャティを救い出すのだ!?
い、いや…確か結婚式は4ヶ月後と書いてあった…!
必ず!必ずシャティを救い出してみせるからな……!!!
そう決意して、仕方なくロバが引く荷車に父と二人乗り込み辺境へと出発するのだった。
はあ…。どうしてこんな事になってしまったのだ…。
小さくなりつつなる侯爵家を見つめながら静かにため息をつくのだった。
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