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11.シャティからだぁぁあ!(エルカルト視点)
しおりを挟む∴エルカルト視点
「何度言ったら分かるんだ!床を拭いた雑巾で窓を拭いたら汚れるに決まっているではないか!」
なんと侯爵家の息子である私が本当に朝の5時に叩き起こされ、使用人と同じように働かされている。
「何だと!?お前は偉そうに!!誰に向かってそんな口を聞いているんだ!クビにするぞ!!」
こいつの名前はなんだ?偉そうに!サルみたい顔だからサル野郎でいいか。
使用人が私にそんな口を聞いて良いはずが無いだろう!
「はは、何を言っているんだ?エルカルト坊っちゃん…お前はもう侯爵家の息子では無いだろう。元々継承権を持たない父と平民の女の間に産まれたお前はただの平民だ。ほら、分かったならさっさと働けっ!―おっと、失礼」
そう言ってサル野郎は水の入ったバケツを蹴ってひっくり返し去っていく。
なっっ!!何って嫌なやつなんだ…!こんな事を正気の人間ができるのか!?
しかしここで暴れたら本当に辺境に送られてしまう…。我慢だ我慢だ…3日後、許して貰えた際にアイツはクビにしてやるからな…!
その後も、庭の水やりをしていたら2階から汚いバケツの水をワザとかけられたり、すれ違いざまに足をかけられたり、掃除した所にツバを吐かれたりした。
あ・い・つ・らーーー!!!こんな子供じみた嫌がらせをして恥ずかしくないのか!!人間のクズばっかりだ!!!全員、全員クビにしてやるからな……!!!
そうして三日目。
やっと…やっと…こんな地獄のような日々から開放される…!!長い長い3日間だった。
あくびをしながら玄関を掃いていると、手紙が届く。
「こちらお手紙です!あの…執事様は…」
なんだこの新参者は。
この屋敷の息子すら認識できていないのか!
「誰に向かってそんな口を利いているのだ!私は侯爵家次男、エルカルトであるぞ!」
「えっ…?し、失礼致しましたっ!!」
私が名乗るとその者は一瞬訝しげな表情をしたものの急いで手紙を手渡してきた。
ふんっ!分かれば良い。
それにしても…誰からだ…??
!!??
ベルモンド子爵家から……というと!!!
なっっっっっ!!シャティだっっ!シャティからだぁぁぁぁぁあ!!!
シャティからの久しぶりの手紙だっ!
私の事を心配して手紙をくれたのかっ!?あぁやっぱり天使のような女性だ…。
しめたっ!かなり雑に封蝋が押してあるぞ…糊付けも甘いし…封蝋が割れないように間から中身を伺う…見えにくいが…何とか見えたっ!
はやる気持ちを抑えながら中身を除くと…そこには信じられない事が書いてあった。
「けっ……けっこん……?シャティが……けっこん……??」
結婚式のお知らせ…?
聞いていないぞ…?シャティ……?私のお嫁さんになりたいと微笑んでいたのに…なぜ……??
!!!
そうか!!分かったぞ。これはシャティから助けを乞う手紙だ…!!封を開けないときちんと見えないがそうに違いない!
家のため、金のために無理やり嫁がされそうになっているのだな。
くそっ!!なんて可愛そうなシャティ…。待っていろ!私がシャティを救い出してみせる!!
「何をしている!!!」
まずいっ。また偉そうなサル野郎がきたっ!急いで手紙を整える。
「手紙…?まさか勝手に開けたりしていないだろうな!!」
「あぁ、勿論開けていない」
「ふんっ!」
そう言って私の手からサル野郎が手紙を奪い取る。
危なかった……また兄にいらぬ事を告げ口されたらたまったもんじゃない。
「アレックス様がお呼びだ。すぐに執務室へ向かうように」
よし…!やっと3日間が終わる…!反省したフリをして適当に切り抜けるぞ!
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