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しおりを挟む伯爵家自慢の庭に出る。
とても過ごしやすい気温で風も心地良い天気だ。
このような日に庭に出ると最高の気分だろう。
隣りにこの男さえいなければ。
侍女からティーセットを受け取り、侍女を下がらせる。
エルカルトと向き合い、お茶を一口飲み心を落ち着かせてから火蓋を切る。
「エルカルト様。エルカルト様はシャティ様とご結婚されたいと仰ってましたよね?なぜ婚約破棄を無かった事にしたいのですか?」
「うっ…貴族には色々あるんだ!しかし…何だ!?私がわざわざ婚約破棄を無かった事にしてやると言っているのに、喜ぶ素振りも見せず…お前は反省していないのか!?」
やはりこの男は何1つ反省していない。まあ、分かっていたことだが。
「私が反省?なぜ反省しなければならないのでしょうか…」
本当に分からない…といった様子で聞き返すとエルカルトの顔が見る見るうちに赤くなっていく。
その時。後ろの柱の影に何者かの気配を確認して思わず笑みを浮かべそうになってしまう。勿論エルカルトは気付いていない。
「こっこの…」
「私よりシャティ様と一緒に過ごす方が心躍り、シャティ様の方が可憐で、シャティ様との仲を裂く私は悪魔のようなのでしょう??私、お二人を応援しますからどうぞ婚約破棄してくださいませ」
そう言ってお茶を一口いただく。
「煩いっ!そうだ!!お前はいつもすました顔をして私を立てる事もせず可愛げが無い!シャティとお前を比べるなんて100年早いわ!そうだな、しかしそんな悪魔のようなやつと結婚してやると言っているんだ!!大人しく感謝して私に従え‼私は侯爵家の息子だぞ!!伯爵家ごときが逆らうな!」
本音を頂きました~。ありがとうございます。思わず冷ややかな笑みがこぼれてしまう。
「お前…何笑っているんだ…?きみの悪いや…」
エルカルトがそう言いかけた時、私の背後に怒り心頭の父と、今にも倒れ込みそうな程青褪めた侯爵が現れたのを見たエルカルトは口をあんぐり開けてみるみる青褪めていく。
あら…お父様ったらいけませんね。絶対に来てはいけないとあんなにも念を押しておいたのに…。
父がゆらりゆらりとエルカルトに近付く。
「よくも娘とこの伯爵家を愚弄してくれたな…」
「エルカルト…お前…なんて事を…」
「あ、いや、そのこれは違うんだいや、違うんです、その…」
「何も違わないだろう‼ここまで愚弄しておいて伯爵家に入れると思うなよ…侯爵よ‼婚約解消は免れる事ができない事はお分かりですね!?」
「あぁなんて事だ……伯爵…どうか息子を絶縁するので援助の件についてはどうにか穏便に……」
「ぜ、絶縁!?違う、違うんですこれは!その、ちょっと!ちょっと冗談を言い合っていただけで!!なぁ、セアラ…?」
父二人に迫られて、エルカルトが私の方をチラリと見やる。
この後に及んで助ける者がいるとでも思っているのだろうか…。
エルカルトに今までに無いとびきりの笑みを向ける。
「あぁセアラ…」
私の微笑みを見たエルカルトは、助かった…!と言わんばかりの安堵の表情を浮かべた。
だが。
「いえ?今までもっと酷い事を言われてきましたわ。さようなら、エルカルト様」
そう言うとエルカルトは絶望の表情を浮かべてその場に崩れ落ちたのだった。
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