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6.絶対……ですよ?
しおりを挟むそして次の日…
「旦那様、セアラ様。ルーツベット侯爵様がいらっしゃいました」
「やはり来たな…。通せ」
父が言った通りルーツベット侯爵がこの屋敷にやってきた。
やはり婚約破棄は無かった事にしたいのか、それともエルカルトから歪んだ報告を聞いていたのならば文句を言いに来たのかもしれない。
父と共に、侯爵とエルカルトを迎える。
…エルカルトの頬が赤く腫れている。きっと侯爵に殴られたのだろう…。
そして、謝って婚約破棄を無かった事にして貰わないと家を追い出すとでも言われてきたのだろう。不貞腐れた顔に全部書いてあるようだ。
「ルーツベット侯爵よ。本日はどうされたのですか?昨日に娘とエルカルト殿の婚約は解消されたと聞きましたが。あぁ、正式に書類等にサインしなければならないですよね?用意しておきました。さぁどうぞ、ペンをお取りください」
いつの間に用意していたのか婚約解消の書類まで出し、侯爵を急かすようにして言葉を並べる父。…かなり怒っている…。
「あ、あぁ。その話なんだか、やはり婚約破棄は無かった事にしたいのだ。なあに、若い2人なら喧嘩なんてよくある話だ。息子も反省したようで謝りたいと言ってな!ほれ、エル!」
侯爵がエルカルトの背中を叩き、エルカルトがよろける。
婚約破棄は無かった事に…。やはりそう来たか…。
「えっと…セアラよ。その…婚約破棄は…無かった事にしてやる!!」
目をそらしながらぶっきらぼうにエルカルトが言うと、隣りの父の拳からペンをへし折る音が聞こえた。
父から滲み出る怒りに気付いていないのは間違いなくエルカルトだけだ。
ルーツベット侯爵が思いきりエルカルトの足を踏みつけた。
「いでっっ」
「エルカルトッ!!いやぁ…あはは。すみません。ほら!謝りに来たんだろ!!」
侯爵に怒鳴られ不貞腐れた顔をするエルカルト。
彼は一体ここに何しにやってきたのか…。
「その…すまなかった軽々しく婚約破棄など言って…」
婚約破棄と言った事に対しての謝罪…?
「…と、まぁそういうわけでこれからも伯爵家侯爵家仲良くして行きましょう。な?伯爵殿、セアラ殿」
何とかこの場を収めようと必死な侯爵に、父が反論する。
「侯爵殿は、なぜ婚約解消の運びとなっているのかご存知ですか?」
「あぁ、エルカルトが他の女性を褒めてしまってセアラ嬢が嫉妬したのですよね?まぁ、若い人は色々ありますからね」
侯爵の隣でエルカルトが、うんうんと頷いている。
それを見て父が大きくため息をつき続ける。
「いえ、違います。聞く話によるとエルカルト殿には想いを寄せる女性がいるとか。」
「なっえっ!?お前っ」
「またその女性とセアラを比べては娘を貶めるような事ばかり口にすると」
「なっなんだと!?」
「更には、セアラの事を二人の仲を裂く悪魔だとも言われたと」
父が言葉を並べる度に侯爵がどんどん青褪めていく。
「エルカルト!お前そんな事をセアラ嬢に言ったのか!?想う相手とは何の事だ‼」
侯爵がエルカルトの胸ぐらを掴み大きく揺さぶる。
「ううっやめてくれっ!いっ言ってないっ!私は何も言ってないっ!全部セアラの被害妄想だっ‼」
…私の被害妄想…??そう来ましたか。
やはりしらばっくれてきた。このままでは埒が明かないだろう。
私は持っていた扇子で口元を隠して小さくため息を着く。
「お父様。もしかしたら私とエルカルト様の間で何か思い違いがあったのかもしれません。皆様の前では中々話し辛い事もあるかもしれませんので…。少し2人きりでお話してもよろしいでしょうか」
突然の提案に父は驚き、侯爵とエルカルトは喜びの笑みを浮かべる。
「あぁ、あぁ、そうしたら良い!2人でゆっくり仲直りしてきなさい」
侯爵は勝ちを確信したのかひどく上機嫌だ。
「セアラ…良いのか…?」
父は心配そうに私を見る。
「えぇ、お父様。くれぐれも、私達の様子は見に来たりしないでくださいね?絶対にですよ?良いですか?絶対ですよ?」
そう言って、庭にエルカルトと2人で向かったのだった。
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