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31.生誕祭3
しおりを挟む「シャティア…嘘だろ…?先程アリエラと話していたのが聞こえたが、ユーリスと婚約…?」
どこか目の虚なダンテが、気味の悪い笑いを浮かべながら佇んでいた。
「ダンテ…」
ユーリス様が小さくため息を吐く。
私もこの2人が幼馴染だったらと思うと、ため息を吐きたくなる…。
「ダンテ様、どのようなつもりかわかりませんが、私達はダンテ様有責で婚約を解消したのです。これ以上関わらないように私の父からレヨング伯爵に警告したと思うのですが」
「あ、あぁシャティア。そんな似合わないドレスを着て…。僕の贈ったスカイブルーのドレスはどうしたんだい??あ…分かったぞ、まだ拗ねているのか?アリエラの事なんて何も思っていない、シャティアだけ…」
…ダメだ。全く話が通じない…。
ユーリス様も皇太子様の生誕祭で騒ぎを大きくしたくなかったようだが、冷静な顔付きから隠しきれない激しい怒り。
ダンテが1歩2歩とこちらに近づいて来た時、人混みを掻き分けて、ダンテの父レヨング伯爵が顔面蒼白で現れた。その後ろには怒り心頭な私のお父様もいる。
「お、おいダンテ!!何をしているんだ!!シャティア嬢申し訳ない!!おい!ダンテこっちへ来い!」
レヨング伯爵がダンテの腕を掴んでその場を離れようとするが、私のお父様がそれを阻止するように立ちはだかる。
「これはどういう事ですかな…?シャティアに二度と関わるなと警告はしたはずですが…未練がましくドレスや手紙など贈って来たのは百歩譲って許したとしても、これは見過ごせん…!!」
「ド、ドレスや手紙…⁉︎おい、ダンテそんな事までしたのか!?」
「伯爵も知らないとは言わせませんぞ!次我が娘に関わればレヨング伯爵家は我が領地に入る事や取引等一切拒否させて貰うと警告したはずですが」
「??け、警告?なんだそれは…」
レヨング伯爵はこの状況を全く理解できていない様子だ。
ただ、伯爵の後ろでダンテの母である伯爵夫人が顔を真っ青にさせて震えている。
その時。
「先程からこの騒ぎは一体なんなんだ…?」
今日の主役であるこの国の皇太子様が現れた。
一斉に皆が首を垂れる。
皇太子様の生誕祭でここまで騒ぎを大きくしてしまった事は重大な失態だ。
「誰かと思えば、マテリア伯爵家のユーリスか。先日はご苦労だった。ちょうど今日、君を私の側近にしたいと伝えようと思っていたのだ。どうかこれからもこの国の為に共に尽力してほしい」
「はっ、有難きお言葉でございます」
皇太子様の言葉に、会場がどよめく。
皇太子様直々に、このような場でスカウトされるなんて前代未聞な事で、これ以上に無い名誉ある事だ。
きっと、この後ユーリス様は皇太子様とお近づきになりたい人々に囲まれる事だろう。
「ところで隣にいる令嬢は、君の婚約者かな?」
皇太子様と目が合い、急いでカーテシーを取る。
「はい」
「シャティア.ハードラーでございま……」
「はい!ホンットーニ伯爵家のアリエラでございます!!」
まさかの後ろにいたアリエラが私の言葉を遮って名乗り出す。
明らかに、皇太子様が眉根を寄せたがアリエラは気付かない。
先程よりも目を輝かせ興奮して矢継ぎ早に捲し立てる。
「ユーリスってやっぱり凄い…!格好良くて、強くて、皇太子様もお友達で…!!」
「無礼だぞ!!」
すかさずユーリス様が止めるも虚しく、皇太子様が手で合図をする。
とすぐに兵がやってきてアリエラを囲む。
「連れていけ」
先程まで私達に話しかけてくださった優しい雰囲気から一転、氷のような冷たい声色で兵達に指示をする。
「えっえっな、なんで!?私が連れていかれるの!?ユーリス!助けて!」
「なぜ??王族である私に嘘をつく事が大罪であると知らないのか?親の顔が見てみたいものだ」
ちょうど、お手洗いから帰ってきたであろうすっきりした表情をしたアリエラの父が、アリエラが捕われている事に気付き慌てこちらにやってきたが時既に遅し。
アリエラと共に会場の外へ連れ出されて行ったのだった。
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