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29.生誕祭1
しおりを挟む「お嬢様…!!本当にお似合いです!!それはもうこの世の物とは思えないほど綺麗です~」
「ありがとう、ベルの腕が良いから…。でも大袈裟よ」
今日はいよいよ生誕祭。
ユーリス様に贈って頂いたドレスを着ると、ベルが涙を流しながら称賛してくれた。
「全然大袈裟なんて事ありませんっ!ユーリス様もお喜びになられる事間違いなしです!」
「そうだぞシャティア!やっぱり我が娘は天使…」
なぜかお父様も泣いている。
「あなた、そろそろ用意しないと」
お母様がお父様を呼びに来たが、お母様こそ若々しく、それでいて上品な美しさを兼ね備えていて、娘である私でもドキッとする。
「アナベル!なんと!我が妻も美しすぎて女神なのか…?天使と女神と…ここは天国か…?遂にお迎えが来たようだ….」
「あー、はいはい。貴方が用意をすっぽかしてシャティのドレス姿を見に行って帰って来ないから迎えに来たのですよ」
そう言ってお母様がお父様を引きずるようにして部屋から出て行く。
「シャティ、我が娘ながらとっても綺麗だわ。また後で会場で会いましょうね」
去り際にお母様が笑顔で言う。
お父様は熊ほど大きく筋肉隆々なのだが、お母様に引きずられる姿は可愛いテディベアだ。
その後、少し落ち着く為にお茶を飲んでいると扉がノックされる。
私は、このほんの少しだけ癖のあるノックをよく知っている。
ユーリス様だ。
「どうぞ」
声をかけると、私のドレスと同じクリーム色を基調に緑と金色の糸をあしらった正装服を着ているユーリス様が顔を覗かせる。
いつもは下ろしているサラサラの髪の毛も、今日は前髪を少しあげていて控えめに言っても格好良すぎる……!!!!
「…っ!!シャティア…本当に綺麗です…!よく似合っています」
「ユーリス様も…本当に素敵です….」
何だか2人で照れ臭くなってしまって2人で顔を見合わせ、ふふッと微笑み合うのだった。
ユーリス様が用意してくださった馬車で王宮へ向かう。
そしてユーリス様の手を取りパーティ会場のダンスホールへと向かう。
会場のダンスホールにはもう既に多くの人が集まっていて、ダンスホールに入ると同時に一斉に注目を集めた。
そして人々が「ほぅ…」と感嘆の声をあげる。
(ユーリス様が素敵すぎて皆、見惚れているのね…)
彼の隣に歩くのに恥じない淑女にならなければと前を向き、背筋を伸ばす。
「シャティアがあまりにも綺麗だから、皆見惚れているのですよ」
ユーリス様の顔が私に近付いたかと思うと、私に耳元で囁いた。
すると多くの令嬢が悲鳴をあげた。
(いや、皆様が見ているのは間違いなくユーリス様だと思います…)
そんな事を思っていたら…。
「あ~ん!ユーリス!やっと来た!遅すぎーー!!もう!私、待ちくたびれちゃったんだからー!!」
背後から聞き覚えのある声がした。
忘れはしない。学園で何度も何度も何度も聴いたこの耳障りな…失敬。甲高い声。
この声は…。
静かに後ろを振り返るとそこには、お世辞にも似合っているとは言い難い、緑色でピチピチなドレスを着たアリエラがいた。
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